1207 保村くんは考える 03
三津さんへのプレゼントをマフラーにしようと決めた。妥当な線ではあるし、本人もほしいと言っていたなら、それが一番だ。榊山さんが提案したことに引っ掛かりを覚えるが、彼女が言うことは外れないのだ。
「今回のお礼はシュトレンで」
シュトーレンではなく、シュトレン。正しい発音を知っていることに驚いた。
「君、気付いてないの? シュトレンの担当になったって話をする時にちゃんとした発音してたんだよ」
もともと、私もシュトーレンだと思ってたけど。そう付け加える榊山さんをまじまじと見てしまう。
「榊山さんって、結構、見てますよね」
「占い師だからねぇ。ホムラーはちっとも信じてないようだけど」
髪を払い、それより、と占い師は口をとがらせる。
「シュトレン、食べたいな」
「了解です」
もとより、たそがれ荘の面々に味見をしてもらう予定だった。シュトレンの段取りを頭で計画しながら、両手に下げたビニール袋を持ち直す。
中身はクリスマスパーティーに使う電飾だ。店長おすすめの書き出しにつられて買った電飾の配置を頭の中で思い描いてみたが、ピンと来ない。
これは実際に置いてみて考えよう。
そんなことを考えていて、ふとくすぶっていた疑問を思い出した。
どうして、三津さんはクリスマスパーティーを始めようなんて言い始めたのだろう。去年まで、そんなこと一切言わなかったのに。
「ほらほら、足が止まってるよ。みっちゃん、首をながーくして待ってるんじゃない?」
「はいはい、行きますよ」
次の角を曲がれば、たそがれ荘だ。
榊山さんの頭を使わないような、使うような会話も、もう終わりにしよう。
俺の心を読み取ったのか、榊山さんは可笑しそうに問いかけてくる。
「ホムラーって、私のことを年上と思ってないよね?」
「年上扱いしてほしいんですか」
「全然」
榊山さんはけろりと言って、たそがれ荘に入っていった。
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