1205 保村くんは考える 01

 十二月となれば、帰り道はイルミネーションだらけだ。駅前はもちろん、カフェや居酒屋、犬の小屋にまで電飾がついている。


「おやおや? ホムラーだ! こんな所で会うなんて奇遇だねぇ」


 俺をホムラーなんて呼ぶのは一人しかいない。やっぱり榊山さかきやまさんだ。凛としたクールな姿からはかけ離れた話し方もいつの間にか慣れてしまった。

 たそがれ荘ではハイテンションで電波なことを言っているが、ミステリアスなシャーマンとして世の中では通っている。自らをしろにして行う占いや祈祷は女性誌でも取り上げられるほどの人気らしい。


「クリスマスパーティーの買い出しです」

「おつかれちゃんだねー」


 ケタケタと笑う榊山さんは荷物を手伝う素振りも見せずに俺の横に来た。手伝われても、心配でならないので妥当な行動だと思う。

 彼女に占い以外の物をさせたら壊滅的にタダでは済まないからだ。

 現場を見たことはないが、共用のキッチンの鍋やフライパン全てが炭になり、調理器具は折れたり歪んだり、全て使い物にならなくなったらしい。そんな思い出話をする三津さんの遠い目は忘れられない。

 榊山さんも自覚があるようで、皿の片付けさえしない。正確には管理人に固く禁止されている。


「ねぇねぇねぇ? 何かプレゼントするの?」


 我が家への道のりを進みながら、子供のような声が飛んできた。



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