1204 三津さんは企む 04

綾鳥あやとりさんも参加するやろ?」

「あー、やっぱり?」


 気だるげに箸でつまんだ蕪を眺めながら返された声は覇気がない。彼女が一番の曲者や。

 掟は守っているが、たそがれ荘に馴染もうとせん。

 過干渉は絶対にせん。むしろ、最低限の関わりしか持たん。

 毎朝、必ず朝食は食堂でとるが、半分以上を残して席を立つ。もちろん、会話は月に片手で数えられる程や。

 自室にこもりがちで、私生活はほとんどうかがえない。歓迎会などの集まりも気のない返事ばかりで会話は弾まんかった。壁の花ならいい方で、気付いたら部屋からおらんくなる。

 前世の因縁にも興味を示さんように見えた。そもそも、因縁を持つほど関係を築く性格に思えん。

 隠世かくりよの婚活場としての機能を持つたそがれ荘になぜ来たのか、頭をひねるばかりや。

 前世の恋人でも探してるんやろか。つまらなそうな横顔にその予想はないなと却下した。


「二十五日、予定空けといてな」

「わかりました」


 答えた口に蕪が消えていく。

 咀嚼され飲み込まれる様を見ても、奥歯に何かがはさまった心地がいつまでも残った。

 私は私自身に、パーティーは絶対したいんや、と言い聞かせて、味噌汁の最後の一口を飲み込んだ。



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