1203 三津さんは企む 03

 残りは後二人。他は私が強制参加と言えば形だけでも参加するやろ。

 真面目な絹田きぬたさんはクリスマスパーティーも集中講義も出てくれる、問題ない。

 面倒、言うた斑尾まだらおさんに目線を向ける。


「斑尾さん、たそがれ荘ここの掟、覚えとるよなぁ?」

「は?」

「お ぼ え と る よ なぁ?」


 たそがれ荘の管理人は私や。仕事とはいえ、素行の悪い者に灸をすえるのは骨が折れる。上に報告してもええけど、そうしたら、斑尾さんの住みかはすぐに取り上げられてしまう。私だって鬼ではない。

 犬歯がむき出された口から、唸るように四つの掟が漏れでる。


「……一、過干渉しない事」

「誰やったかなぁ、時雨沢さんにケチつけて、喧嘩吹っ掛けてたんは?」


 わざとらしいとぼけに舌打ちされた。そんなものに怯むわけもなく、目だけで次を促す。


「……一、朝食は食堂で食べる事」

「たまぁにな、とんだ寝坊助がおって困るんよ。何回、握り飯をこさえてやったかなぁ」

「……一、婚前交渉は敷地外で行う事」

「相手がおらんから、それだけは心配しとらんのよ」

「……一、前世の因縁は水に流す事」

「前ん時も、あんだけ世話したっていうのに、よっぽど私の世話になりたいんやろなぁ」


 前世の私は斑尾さんのお目付け役やった。骨の髄まで逆らえないように仕込んである。


「参加すればいいんだろう、参加すれば」


 当然、折れる方は決まっていた。

 苦い顔をする斑尾さんに追い打ちをかける。


「斑尾さん、暇やろ。パーティーの準備、手伝ってよ」

「有志っつったろ」

「ああ、そうやったなぁ」


 まぁ、従わすけど、と思いながら適当に返事をした。

 さて、問題はあと一人。



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