1202 三津さんは企む 02

「イブにするの? クリスマスにするの?」


 るんるんにっこにこで榊山さかきやまさんが歌うように聞いてきた。


「十二月二十五日、クリスマスにしようと思う」

「誰が準備するんですか?」


 予想通りの質問や。口の中のもんをきちんとお腹に納めてから答える。


「有志でするんよ。嫌な人はせんでええ」


 緊張がゆるんだ所で、でも、と続ける。


「参加は絶対やからな」


 あからさまに嫌な顔をする人が何人か。けっこう、けっこう。予想通りや。


「俺、バイトが入ってるんだけど」

「次の日、集中講義入ってる……」

「……面倒」


 けっこう、けっこう。予想通りや。

 味噌汁で唇を濡らした後、細い目で皆を見渡した。私に意識が向いたのを確認して、口を開く。


「冠婚葬祭の理由じゃない限り、参加は絶対。バイトの子はその前かその後に参加すればええし、次の日に用事があるなら早抜けしてもええ」


 はいはい。皆の顔に、する必要性があるのか、とはっきり書いてある。


「十二月二十五日は家族で過ごすもんや。私達は家族やろ? 年末年始は実家に帰る人もおるし、クリスマスパーティーやろうや」


 だてに長く管理人を努めてきたわけではない。一旦、区切って勿体ぶる。


「参加せんかったらせんかったで、ええんよ」


 目線をつい、と時雨沢しぐれさわさんに向け、意識してゆっくりと言う。


「パーティーのご馳走、おいしいと思うんやけどなぁ」

「うぅっ」


 はい、これで一人は手中に落ちた。

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