たそがれ荘はとしのせにつき、 #アドベントカレンダー2022

かこ

1201 三津さんは企む 01

 気が付けば年が明けていた、とまではボケてはないけれど。今日から師走。あっという間に時間が過ぎていくのは、火を見るよりも明らかや。


「おはようございます」

「おはよう、保村ほむらさん」


 背中越しに聞こえた聞き取りづらい声に、きちんと返した。出席確認みたいなもんやから、ちゃあんと名前を呼ぶことをルールにしとる。まぁ、誰にも言ったことはないんやけど。


「手伝いましょうか?」


 ぼそぼそと申し出る慎ましさに笑みがこぼれてもうた。この日課は、シェアハウス たそがれ荘ここにいる五年の間、全く変わっとらん。頼りない少年やったのに、電球換えも難なくこなす青年に成長した。確実に月日は流れとる。

 管理人という立場やけど、姉のような気持ちにもなるというもんや。


「あと、味噌汁だけやからええよ。座っとき」


 断りをいれてる内に続々と住人達が食堂に下りてきた。妖付きに、呪い持ち、神様のお手付きなどなど。訳あり、こぶつきの人ならざる困ったさんばっかりや。

 それぞれの名前を呼んで挨拶を交わす。住人が全員、席についた。今日も元気そうで何より。

 蕪ととろろの味噌汁を並べて、各々のペースで箸を進める。


「みっちゃあん、今年の年末はどうなるのぉ?」


 年の瀬のお決まりの言葉に、待ってましたとばかりに、したり顔で応じる。


「今年はな、クリスマスパーティーをしようと思うんよ」


 一同の目が私に集まった。


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