第42話 新しい仲間、新しい冒険

「では本日、我が勇者パーティの歓迎会兼カナタの祝勝会を開催します! ではカナタから一言!」


 開会宣言はイブが行っている。宿の1階、馴染みの食事処をイブはなんと貸し切りにしてしまった。さすが、考えるスケールが違う。


「皆さん、ありがとう。そしてこれからもよろしくお願いします」


 なんともカナタらしい挨拶である。飾らず素朴、そして何がいいって挨拶が短い!


「では皆さん、カンパーイ」


 昨日、覇気が感じられなかったカナタは元気いっぱいになっている。これからも共に勇者パーティとして行動を共にできる。それはアルカにとっても幸せなことであるのだろう。




 祝勝会は大いに盛り上がっている。全員が笑顔なんて久しぶり、今日だけは好きなものを好きなだけ食べて飲む〜ビーアというお酒も飲んでみた、美味しくはないが楽しくなってきている。


「あのー」


 貸し切りのお店のドアが開いた。見知った少女が入ってくる。


「あらいらっしゃい、ユリアーナ(笑)」


 イブは少女に声を掛ける。その瞬間アルカは思い出した。マッカの娘、見届人をしていた少女である。


「すみません……また出直します……」


「ダメダメ! 一緒に楽しもうよ。今日は禍根を断ち切った記念の日なんだから。ユリアーナはここに座って」


 イブは強引にユリアーナと呼ばれている少女をイブの隣の席に座らせた。そしてカナタも呼ぶ。


「カナタ、こちらはマッカの娘さんのユリアーナ、禍根を断ち切った訳だから、握手握手!」


 カナタは戸惑いながらもユリアーナと握手をしている。だが嫌がっている風にも見えない、カナタが色々受け入れたということか。



 少女が5人になった。最初は緊張していたユリアーナだが、カナタと親しげに話している。気が合うみたいで時々笑顔も見える。カナタも微笑む……似た者同士、そんな印象さえ感じた。


「やはりな……」


「イブ、何がですか?」


「あのユリアーナという少女、カナタと仲良くなるんじゃないかって思ったのよ(笑) たまたまあの子を教会で見つけてさ(笑)」


 イブはニコニコしている。恐らくこれも……イブが仕組んだ出逢いなのだろう。


「全くイブは凄い! 何でも思い通りですねっ!」


「バカモン、我の実年齢を考えてみよ! なーんてね(笑) まあそうだな、アルカもあと十年くらい修行すれば色々分かるようになるよ」


 本当にイブにはかなわない。アルカはイブがますます大好きになった。



△△△△△△△△△△△△△△△△△



 決闘から1週間が経とうとしている。マッカは自室のベッドに横たわっている、痛みは一向に消えず、苦しい。それは今までの自身の行いの償いだと思い、マッカは痛み止めも飲まずにいた。


「マッカ様、お客人をお連れしました」


「よ、どうだ? もう命の危険は無さそうだな」


 イブと名乗る少女がマッカに話しかけてきた。医師の話によると、イブという少女がマッカの傷をいやしたという。なるほど、会ってみると重厚感がある。


「イブ殿、この度はこの命、お助け頂きま誠にありがとうございます。あと数日でここを経つと聞きました。ひと言お礼を述べたくて……」


「いいってことよ、あのサーベルは私が作ったものだからね。その尻拭いだよ」


「あのイブ殿は……何者なのでしょうか」


 普通の少女であるはずがない。議員を眼前にして怯むこともなく堂々としている。


「では貴様には話そう。私はカイルという。もう死に損ないでね、王城にを抜け出して最後にひと花なんて思って変身魔法を使ったら戻れなくなって……ハ ハ ハ」


 やはり……そんな噂は聞いていたがまさか本当はだったとは。マッカは立ち上がり臣下の礼を取ろうとした。


「マッカよ、そのままで良い。その傷痛いだろ(笑)。それは痛み止めも効かない。今までの懺悔と思い我慢することだ」


「勇者カイル様に会えるなど、至福でございます。そしてお優しい言葉、噂に違(たが)えないお方と実感しました」


「私がカイルだという事は内密にな。まあそう長く秘密にしなくても良さそうだけどな(笑)」


 少し寂しげにカイル様は話している。


「実は……勇者様にお話しないとならないことが……ユリアーナのことですが……」


「分かっておる。貴様には分かるまいが、ユリアーナには微量ながら魔力ある。とても綺麗な緑のイメージだ。そしてカナタにも同じく綺麗な緑のイメージ……」


「お分かりでしたか……ふたりは姉妹だという事を」


「うむ。そこで相談だが、ユリアーナを私達の勇者パーティで預かりたいのだが。時期勇者候補であるシルビアはまだ未熟だ。そしてシルビアは魔族、周囲はなるべく清い魔力を持つ者を置きたい」


「ユリアーナを…勇者パーティにと」


 なんとも光栄なことである。ユリアーナは優しい、それ故この先が不安だ。マッカは恐らく組織から切り捨てられる、そうなると命の保証は……ない。ユリアーナをここに留めることは出来ないのだ。


「貴様も己だけなら剣技で自身を守れよう。だが、ユリアーナが居てはそれは無理じゃ。それも考えての提案だ。カナタとは姉妹だから、問題もなかろ」


「2人には姉妹という事実を伝えるのでしょうか、、、」


「それはせぬ。勇者パーティとして成長していけば自ずと気付くであろう。現にパーティの中でアルカという少女だけ気付きかけておる。勇者パーティには血の繋がりよりも心の繋がりが大切、それを育む必要もある」


「分かりました。勇者様 仰せのままに……」

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