第41話 大事の後
イブは早速医務室へ向かった。医務室の前には屈強な門番がいた。無視をして医務室に入ろうとしたが……
「キサマ、何者だ。ここを入れる訳にはいかん!」
イブは2人の門番を睨んだ。2人はもう動けない、こうして医務室に入った。
医務室には医師らしき女性が2人マッカの治療をしている。もちろん2人医師は必死に止血をしようとしている。
「やはり血が止まりません……魔法ではこの傷塞がらない……」
それはそうだ。あれは魔剣でもある。切られたらもう修復不可能、普通の魔法治療で手がくっつくこともない、そのまま死ぬだけである。
「あー、キレイに切れちゃってるね。こりゃ痛みが引くまで1年はかかるな(笑) とりあえず命は助けるから……はーい、邪魔、どいてくれる?」
イブはそう言いながら切れている上腕に手をかざす。そうするとすぐに血が止まった。医師は驚いている。
「どうやって……」
「あの剣は英雄の剣だからな。私ではないと癒せないのだよ ハ ハ ハ 早くその他の処置をしたまえ」
変な言葉を残したが、イブはそそくさと医務室を後にした。そして闘技場には必ず礼拝堂がある。礼拝堂は医務室の近くにあると相場は決まっているのですぐ見つかった……礼拝堂に入る。
礼拝堂にはイブが思った通りユリアーナがいた。祈りに集中をしている……が、イブは声をかけた。
「ユリアーナ、だったよね。お会いするのは2回目かな。私はイブ、カナタは……私の弟子、みたいなものかな」
「カナタさん、お父様のこと殺さなかった。私の御守り少しは役立ったのかな……2人とも無事だったし(笑)」
ユリアーナは涙を流し、そして打ち震えながら笑っている。相当怖かったのだろう。
「ユリアーナよく聞いて。あなたのお父様はあの剣で切られた時点では助からない致命傷だった。もちろんカナタが殺そうとした訳では無い、彼女はあの剣で切られた傷口が簡単には塞がらないことを知らなかったから」
「え……ではお父様は……」
ユリアーナから血の気が引く。
「いや、さっき私が助けておいた。まあ、1年間くらいは傷口の痛みは消えないかな(笑)。ユリアーナ、人を助けたければ祈っているだけでは駄目だ。今回はたまたま私が絡んでいたから良かったが……」
「でも……私にはこれくらいしか……」
「出来る事を考えろ。せっかく一途な心を持っているんだ。祈り続ける時間を使って何かを成せ!」
イブはそう伝えると、以前預かった御守りをユリアーナに渡した。
「ユリアーナ、これはカナタには渡してない。それは、彼女に祈りは必要なかったから。彼女は自身の意志で決闘までたどり着き、そして殺さない、という判断をした。全て彼女が成したこと。一度カナタと話してみるといい」
イブはそう言うとユリアーナに宿の場所を書いた紙を渡し礼拝堂を後にした。あとはユリアーナ次第である。
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カナタは宿でイブ様を待っていた。アルカとシルビアには祝勝会を提案されたが明日にしてもらった。それに今日は色々思うことがある。早くイブ様と話をしたい。
「カナタごめんね、遅くなって」
「おかえりなさい、イブ様」
「カナタの意志を尊重しないとならないからマッカの奴を助けてきたよ(笑)」
「え? 腕一本で許したのに……そんな致命傷にはならないでしょう」
カナタは驚いた。マッカは牙狼流の騎士と聞いていたが、まるで剣がスローモーションであった。そのスローモーションな剣を受けながら……勝つという意味を探していた。そして決断した〜腕一本、それを代償とし、この恨みの連鎖をたちきろうと……。
「カナタ、よく聞いてほしい。ライトサーベルは言わば魔剣なの。断面が修復することはない、だからもし治療するとなると断面を切断することになる。だが、そんな事は限られた人しか知らない」
「では……少しでも斬って放っておけば、失血死してしまうってことですか?」
「まあそうだな。カナタが手加減を覚えれば別だが。まだまだ修行が必要かな(笑)」
忘れていた……イブ様は勇者カイル様、規格外で伝説の勇者なのだ。
「私、分かってませんでした。仇討ちがどんなに無意味なものか……。そして連鎖していく。どこかで断ち切らないとならないって瞑想したときに悟りました」
「どう? 達成感はある?」
「いえ、虚しいだけです。私、これからどうしていけばいいのか……」
「ではカナタ。あなたに私から使命を与える。勇者パーティの剣士としてシルビアとアルカを支えてほしい。そしてこの世界の守護者となれ」
カナタはその提案に驚くと同時に感動し涙をこぼした。仇討ちは終わった……それは3人との別れをも意味している。それを切り出す前の提案、全ての想いが堰を切ったように流れ涙が止まらない。
「今日は早く休みなさい。明日は4人でささやかな祝勝会をしよう。そして、次の修行の打ち合わせだな(笑)」
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