第40話 決闘
決闘の日が来た。イブは3人を集めた。
「ではこれから闘技場へ向かいます。その前にこれを」
イブはカナタに円柱の筒を渡した。同じような筒をイブも持っている。
「これは……剣です、名前は……」
(名前、本当はライトセーバーとかビームサーベルにしたいが……それは異世界とは言え著作権が気になる…………)
「えーと、ライトサーベルという剣です。カナタ、見ててね」
イブはスイッチを押す。「ブォン」という音と共にサーベルに早変わり。ちなみに刃は赤である。そしてミスリル鉱石を切ってみせた。
「イブ、それミスリル鉱石……」
「ではアルカ、同じように切ってみて」
アルカがスイッチを入れた。だが、刃の色は青である。そしてイブと同じように切ってみた……全く切れない、ではなくただの青い光に過ぎない。
「まあそーだよな(笑) ではカナタ、スイッチ入れてみて」
カナタがスイッチを入れると緑色の刃が出てきた。そしてミスリルを試し切り……さすがに真っ二つにはならないが、ミスリルに傷がついた。
「そういう事です。これは剣の鍛錬をしないと使えません。そして、鍛錬をすればするほど強くなります。邪悪な気持ちがあると赤い刃、綺麗な心だと緑や青の刃が出てくると言われてます(笑)」
アルカが頷いている。
「これはカナタに、そしてもう一本はシルビアに。ライトサーベルは刃こぼれもなく一生使える。だから大切して♡」
「イブ様、ありがとうございます」
これで全てが整った。そして4人で闘技場に向かった。
△△△△△△△△△△△△△△△
闘技場、円形のフィールドがあり、そのフィールドを囲むように段々の観客がある。その日牙狼流師範の決闘があることを聞きつけた野次馬が結構観に来ている。それはカナタにとって想定外のことであった。
「カナタ、大丈夫よ。落ち着いて!」
「うん、アルカ。ありがとう(笑)」
笑ってみたがおそらく引きつっている。決闘は正午に行われる。カナタは心を鎮めて瞑想に入った。これはイブ様の言いつけである。イブ様とシルビアは観客席、そしてカナタの見届人のアルカは隣で同じく瞑想している。
「おい、そろそろ時間だ」
「はい」
カナタはアルカとフィールドに向かった。
天気は薄曇り。カナタはとうとう父の仇と相対する事ができた。このために生きてきた、と言っても良い。カナタは相手を見た、そう、あの顔、忘れもしない……心から憎悪が込み上げてきた。
長々と決闘理由が述べられている。だが、カナタには何も聞こえない、ただ殺してやりたい、その一点。
「カナタ……瞑想」
それは雑踏の中から聞こえるイブ様の声。カナタは落ち着きを取り戻した。ハッとした、怒りで見えていなかったが、マッカの隣りには見届人である少女〜恐らく自分より若い〜に気が付いた。足を震わせ今にも泣き出しそうである。
(これが決闘というもの……)
カナタは理解をした。恨みの連鎖……イブ様が仇討ちに手を貸さない理由。イブ様が瞑想することを特訓の1つに加えた理由〜そして、もし自分がこの決闘で殺されたら、シルビアやカナタにとってマッカが仇敵となること〜だから負けられない。
そして決闘の開始が告げられた…………
野次馬が大いに盛り上がっている。この中には血を見たいものも、牙狼流の剣技を見たいものもいるだろう。何かを期待している、そう、マッカという騎士に……。
カナタは間合いを取りライトサーベルを起動した。緑色の刃が現れたとき、場内がどっと湧いた。マッカもこれには驚いたようだ。だが、マッカは間合いを詰めてくる。凄い殺気を放っている……そう、マッカはカナタを全力で殺そうとしているのだ。
そしてマッカは踏み込んできた…………
(あれ…………?)
△△△△△△△△△△△△△△△
試合が始まって静寂の後、マッカの攻撃が始まっていた。だが、カナタはその全てを受け止めている。マッカ凄まじい剣技に辺りは静まり返り、シルビアは固唾をのんで見守っている。
「イブ……」
イブは涼しい顔をしている。どちらかというと退屈してるみたいだ。
「カナタ、驚いているだろうな(笑) 今、色々考えてるんだろ……さて、どの程度の判決を下すことやら……」
防戦一方であったカナタは一度後ろに飛び、間合いを取る。そしてカナタから突進をした。マッカの剣に攻撃を加える……マッカが構えていた剣は粉々になってしまった。そして片腕を1本切り落とした……場内は静寂、マッカは気絶して倒れている、そしてカナタは構えていたサーベルを収め一礼をした。
場内がどっと湧いた。カナタへの歓声である。カナタに駆け寄り抱きしめるアルカ。マッカは気絶したまま救護班に運ばれている。
「カナタの意志を尊重してやるか。みんなで先に宿に戻ってくれ。野暮用済ませてくる」
そう言うとイブはその場を去ってしまった。
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