第39話 決戦前夜
決闘についてはスムーズに受理された。マッカは騎士である、少女からの申し込みとはいえ受けないのは騎士道に外れる。殺さない程度に相手をして終わらせようと思っているに違いない。
「イブ、マッカ議員の事何か分かった?」
「特に悪い噂はないかな。ただ、あの一族は武闘派で、粗雑な面もあるって。カナタのお母さんの事とかも何気なく聞いてみたけど、マッカの屋敷に住む女性は娘だけみたい。娘を溺愛してて、その娘を斬り刻んだりして殺したほうがマッカを追い込めるけど……」
イブは悪者の顔をしながら話している。その顔は……満更でもなさそうである、怖い。
「それはやめましょう。寝覚めが悪くなります。あと……イブに報告があります。転移魔法なんですけど、王都の街外れまで往復ができました!」
それはいきなり達成された。カイル爺がイブに変身したあの場所である。今までは距離の概念があり心から無理だと思っていたが、あの時のイメージをすることで概念が払われた。
「でかした! では……早速これを取りに行ってをくれないか」
イブはナニやら地図のようなものと魔法陣が書かれた紙をアルカに渡した。
「これは王都の宝物庫の地図、そしてこれはそこに繋がる魔法陣。この地図に記された場所に取ってきてほしいものがある。あ、心配しないで、王城内だけどここには転移出来るように細工してあるから(笑)」
「私に泥棒しろと?」
「そう! でも元々私のものなのよ。だからこの書き置き残しておけば騒動は収まるから(笑)」
イブは1枚の紙を差し出した。そこには、フザけた人間のイラストと異世界の文字と思われる文字が書かれている。
「これ、カイル爺の印章なのですか? 見たことない」
「解るやつには解る! じゃ今夜にでもよろしくね♡」
イブから渡された地図を見た。○で囲まれている場所がある。そこには……
○虹色の石
○ミスリル鉱石の中サイズ
○短い木の棒
と書いてある。ミスリル以外は我楽多のようだ。まあイブに頼まれたなら意味があるものなのだろう。
アルカはその夜、しっかりとイブの使命を果たすのであった。
△△△△△△△△△△△△△△
「ミトル様! 宝物庫に賊が入りました!」
ミトルの自室に大慌てで財務長官が報告に来た。任命したばかりで……名前は忘れたが、太っているのでいつもデーブと呼んでいる。
「デーブよ、本当か! 内部の犯行は間違いない、が、待てよ……現場に案内せよ」
ミトルは宝物庫に急いだ。ミトルには心当たりがある。内部に入れる権限のある役人は全員が投獄されているらしい〜デーブのくせに仕事は出来そうだ。
「ミトル様……」
宝物庫の前は堅牢な魔法結界が張られている。物理的な鍵だけではない。宝物庫の中に入ると、数名の調査官がいた。
「で、無くなったものはなんだ」
「レインボーストーンとミスリル鉱石、魔木の3点です。それと、このような不可解な紙が貼られてました」
ミトルはその紙を見た。
(あー、やはり……)
「オタカラは頂戴した。カイル三世」と異世界の言葉で書いてある。
「デーブよ、捕えた役人は全員解放せよ。そして、このことは無かったことに!」
「よろしいのでしょうか……任官早々この様な失態、命に替えても犯人を吊るし上げ所存でございます、まさか……犯人の心当たりがお有りなのですか?」
「まあそんなところだ それにどれも大したお宝ではない…私達にとっては(笑)」
ミトルは笑いながらその場を後にした。あの様な我楽多を使えるのはカイル様しかいない。まだ転移魔法が使えるくらい体調が良いということ、ミトルにとってはそれが大事であった。
△△△△△△△△△△△△△△△△
いよいよ決闘を2日後に控えて、カナタとシルビア、アルカの3人は模擬戦をすべく都市外の平原に向かった。イブも準備は万全だ〜アルカが拝借してきた素材で加工した二振りの剣と杖はものの数時間で作り終えた。
(もう一度情報収集でも行くか……)
イブはマッカの屋敷の前まで行ってみることに。
マッカの屋敷はこじんまりしている。権勢を誇る議員のものとは思えない、が、門前に立つ門番は腕が立ちそうだ。さすが牙狼流の剣技を極めた者の屋敷、門番は門下生であろう。
イブは気になることがある。マッカの娘のことだ。カナタがマッカを殺してしまうとまた第二のカナタが誕生することになる〜なのでその娘をひと目見ておきたかった。少しすると門が開く、中から幼く美しい娘とその従者が出てきた。
「ユリアーナ様、お出かけですか?」
「はい、お父様のために御守りを頂きに教会まで」
「わかりました。お気をつけて……」
ユリアーナと呼ばれた少女、微かに魔力を感じる。イブはユリアーナを尾行した。ハイデル教会、唯一神ヤマトを祀る教会である。ユリアーナはそこに入っていった。
少ししてイブも後を追う。中では……ユリアーナが涙を流しながらお祈りを捧げていた。そして2つの御守りを下げている。イブは何気なく話しかけてみた。
「どうかなさったのですか?」
「私の父が決闘するのです。なので父の無事とお相手の方の無事をお祈りしている所です。相手はお若い女性と聞きました。この世の無常に……涙が止まりません」
「そうなのですね。あなたは優しい。だけど、それと決闘は無関係です。あなたはどんな結果も受け入れないとならい、それが騎士の娘として生まれてきた運命です」
「まさか、あなたが……」
「いえ、決闘をするのは私の知り合いです」
少女は少しホッとしたようであった。
「では……これをその方に。私はその方の無事も祈りたい。どうかよろしくお願いします」
イブは少女から御守りを受け取った。
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