第37話 首都ミスルへ
「では共和国の首都ミスルへ向けて出発!」
イブはそう号令をかけるとアルカに転移魔法を命じる。ここで少し無駄な時間を過ごしてしまったので、ミーミーちゃんに乗ってミスルの近くまで行くことになった。一度に4人揃っての転移魔法はアルカにとっても訓練になる。
「行きますよー」
無事に転移魔法て移動したあとはミーミーちゃんに乗ってミスル郊外までひとっ飛び。トキウル南西の奥深い森の中に降り立った。
「イブ様、またですか?」
「もち、道なき道を進む。これが最大の特訓になる! 人が普通に来れない場所にしないとミーミーちゃん、捕まっちゃうし(笑) ここならね」
「では行きましょう!」
思ったより険しい森林であった。多くの魔獣や魔物、危険な動物や昆虫も多い。人食い植物なども居たが、特訓の成果なのか、イブ以外の3人で道を切り開いていく。
「イブ様、この分だと3日で着きますね」
「そうだね。ってことはカナタの特訓もあと3日で終わりかぁ。しかし強くなったよね(笑) ちゃんと毎日の瞑想はしてる?」
「はい、最近はアルカと一緒が多いので瞑想ばかりですよ(笑) あと3日で……師範級の剣豪に勝てるものなのでしょうか?」
「カナタ次第だよ(笑)」
カナタはまだ分かっていない。だが、油断は大敵なので、それでいいのかもと思った。剣豪などと言っても動きがスローモーションに見えれば負けるはずはない。
「あのー、アルカから聞きましたけど、私の剣をイブ様が用意してくれるとか……」
「あー、それは、アルカ次第だよ(笑)」
長い時間を共有している事で3人のコミュニケーションが取れている。勇者パーティー、3人目はカナタでイケそうである。あと1人……勇者パーティーとは4人と相場が決まっている。
なるべく森を傷つけないように進む。アルカが何かの魔法で一気に道を作ることは可能だが、イブはそれを禁じた。森を切り開くのは骨が折れる〜3人の特訓という意味でもあるが、最大の理由は魔法の痕跡を残したくなかった。毎日のイブと瞑想をしているアルカの魔法はかなり上達しているはず、特殊な痕跡が残る可能性がある。
森を切り開く事2日目、見事に人が整備した道についた。あとはミスル目指して平坦な道を歩くだけだ。
△△△△△△△△△△△△△△△
「報告します。キャナルのタイルが何者かにやられました。罪を暴かれ、評議会に報告されたそうです」
「タイルがしくじったのか……まあアイツの役割は人に恨みを買う仕事だからな。で、奴はどこに?」
「今こちらに護送中だそうです。どうしますか?」
「処理しろ。盗賊の仕業にみせかけて……」
マッカは大きくため息をついた。タイルとはキャナルで資金集めのために送り込んだトコヤミの金庫番。この共和国を裏で牛耳るトコヤミの中では中堅幹部という位置付けになる。
「分かりました。1個小隊を送ってもいいでしょうか? キャナルからの報告によると10名程の護衛がついているそうで」
「そうか……なら魔物使いの小隊を送れ。盗賊でなく、魔物の襲撃で全滅したことにしろ」
「仰せのままに……」
「ケムルよ、いるか?」
「はい、お館様。ここにおります」
マッカの背後に小柄な男が現れた。黒装束に黒い髪、鋭い目つきをしている。頬には大きな刀傷、歴戦のツワモノと人目でわかる。
「先程の話、聞いておったか? すぐに詳細を調べよ。不審者が関与していた場合は全員抹殺しろ。あー、それと、タイルを追い詰めた奴はどんなことをしても突き止めろ」
「承知!」
ケムルは背後から消え去った。その後もマッカは報告書の続きを読んでいる。人攫いの組織を開放したのは数名のオンナとある、反乱でも起きたのだろう。気になる点が一つあった〜角のあるオンナが関与している、魔族だろう。共和国内の魔族の大半はトコヤミの協力者であるから、共和国の者ではないと言うことになる。
「ご主人様、ユリアーナ様がお見えになりました」
執事からユリアーナが来たことを告げられる。
「そうか……」
「お父様、これからモナミのおウチでお茶会なの。どう? 素敵なドレスでしょ(笑)」
ユリアーナは薄い水色のドレスを着ている。金色の長い髪。まだ13歳、あどけなさがあるが、笑った顔は女神のようである。マッカも思わず破顔してしまう。
「よく似合ってるよユリアーナ。マルーセルのところに行くのか、ではこれを持っていきなさい」
マッカはユリアーナに小さな小箱を渡した。マルーセルは同じ共和国議員でその娘のモナミとユリアーナは仲が良い。この共和国の上流階級はみな姓を持っている、元は別々の国の領主だったからだ。マッカ・フォン・ビーレフェルトがマッカの正式な姓名である。
「ありがとう、お父様! これとっても綺麗ね(笑)」
「これは箱細工と言うんだ。モナミも喜ぶだろう」
ユリアーナの笑顔はマッカにとっての宝物である。
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