第35話 世直し
「イブ様、報告は以上であります」
「ご苦労……しかしカナタはこういうの得意だな」
カナタはヒカリを連れて色々な噂を集めてきた。おおよそ、今回の首謀者であるタイルの屋敷や真囁かれる噂などの情報を整理してイブ様に伝えた。
「で、イブ、どうすんの?」
「そりゃその屋敷に特攻かけるよ(笑)。アルカも一緒に来る?」
カナタが聞いた噂によると今回の襲撃を機に私兵やら治安部隊やらを集めて徹底した防衛策を取っているようだ。いくらイブ様とアルカ、シルビアが特攻したとしても……返り討ちにあう。
「人間の警備なら私は行かなくても、3人で良くね? 今こそ特訓の成果を発揮するとき!」
「なにを言ってるんですかっ! イブが巻き込まれたんでしょ、一緒に行かないと駄目でしょ」
「分かった。引率はするけどみんなでやっつけてね。別に手加減しなくてもいいから(笑)」
イブ様は戦わないという……シルビアとアルカは強いが自身はまだ特訓を数ヶ月しか行っていない。カナタは焦った。
「イブ様、私も……ですか?」
「大丈夫よ、行けばわかる!」
大きな不安を胸にいだきながらカナタを含む4人はタイル議員の屋敷に来た。もちろん、門には屈強そうな門番が、6人もいる。
「なんかワクワクするね!」
「また他人事ですか? イブも真面目に!」
「はぁ~い。じゃあまず門番ね、カナタ…………GO!」
言われてびっくり……口火を切るのは自分? オドオドしてるとイブ様が微笑む。
「ピンチになったら蘇生するから安心して(笑)」
話からするとヤラれる前提である。だが、シルビアやアルカ以外と対戦するのは初めてのこと、イブ様を信じるしかない。
「カナタ、行きま〜す!」
カナタは門番の前に立った。
「悪名高きタイルよ、我ら聖剣の勇者が貴様を成敗する、観念してでてこいっ!」
イブ様に絶対に言えと言われた言葉を一字一句間違えずに宣言した。だが、門番は笑っている。イヤらしい目でこちらを見ている、そして近づいてきた。
「こいつか? 弱そうだな……早めにやっちまおう」
「殺すなよ(笑) 楽しみたいんだから」
門番が一斉に襲いかかってきた。カナタの2倍はあるかという巨体、カナタは身構えるが…………あれ? 遅い。スローモーションを見ているようだ。剣を振りかざすがどうって事はない。こんなの当たる訳がない……。
カナタはイブ様の教えの通り、敵の弱点になる場所を突いたり斬ったりした。スローモーションなので時間がかかったように思えるが、実際は一瞬のことなのだろう。
カナタは門番6人を軽々倒してしまった。
△△△△△△△△△△△△△△
(うんうん、特訓の成果はマズマズかな)
イブは満足気に頷いた。アルカとシルビアは……口をあんぐり開けてびっくりしている。僅か数ヶ月ではあるが、2人の猛者を相手に特訓したのだ、当然であろう。
「イブ様……カナタって速い……」
「シルビアのお陰かな(笑) 恐らくスローモーションに見えてるよ(笑) ね、だから3人で十分って言ったでしょ」
シルビアとアルカも自身の強さに気付いていない。特訓でどう成長してるのか、 こちらも楽しみである。
「よし、では3人で屋敷を制圧、開始!」
その後は迅速であった。屋敷にはざっと60名を超える警備兵が居たが、3人で難なく制圧した。イブは……倒された警備兵を1箇所に集める作業をこなしている。
「イブ様、タイル議員を連行しました」
「ご苦労!」
「キサマ、なんなんだ……」
「タイルよ、1つ聞こう、共和国では人攫いは合法なのか?」
「それは私だからいいのだ。私は共和国の評議員の1人、特権階級だからな 共和国軍が動く前に開放しろ」
「面白い……人攫い解放軍が来るのか。数千人なら全滅させてやろう(笑)」
「何を……ビッチが……」
「煩い!」
イブはカッとしてタイルを凍らせてしまった。極大魔法の氷結で。
「イブ、やり過ぎ(笑) 後で解凍してよね」
「こいつ、まだ生娘の私をビッチ呼ばわり、万死に値する! このまま氷ごと砕こう!」
その時であった。騒ぎを聞きつけたキャナルの正規部隊がなだれ込んできた。
「何事か! 私は共和国第3師団キャナル支部長、タワワという。これは…キサマらがやったのか!」
「おい師団長、コイツが人攫いをしてたから成敗したが何か文句あるか! 私は勇者カイルの隠し子、イブという」
人に話すときはこれが1番分かりやすい。師団長は一瞬たじろいだ。イブは構わず小さめの極大魔法、イカズチを放った。これが証拠になることだろう。
「みな、落ち着け。全員、臣下の礼を取れ!」
タワワは物分りがいいようだ。正規騎士団はイブの前に跪(ひざまず)いた。しかし、名前がタワワとは……もう一生忘れないだろう……。
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