第33話 特訓と怪鳥
「という訳でカナタも修行することになりました! みなさんよろー」
「イブ様、そんな事しなくても私が決闘してもいいのでは? カナタの敵(かたき)なら私にとっても敵だし」
「シルビア、それでは駄目なんだ。恨みって自分で晴らしたいものだし。それに、シルビアにとってもいい稽古になると思う」
アルカは黙ってイブとシルビアの話を聞いていた。同じようにカナタから相談を受けたことがあるが、アルカはキッパリ断った。過去に拘るのは馬鹿げている、そう告げた。
「イブ様の仰せのままに……」
「アルカもそれでいいかな?」
「私は決闘には反対ですけど……カナタが望むなら協力はしてもいい。でもカナタ、絶対に負けないくらいにならないと私はいつまでも決闘に反対します いい?」
「分かりました。みなさん、感謝します」
こうしてカナタの特訓が始まった。当面カナタはシルビアと体幹の特訓である。午前中は特訓、午後は移動、このスケジュールを2週間繰り返すことに。2週間後には乗り物が手に入るらしい。
「イブ、なんで私達も2人で特訓するの?」
「いいじゃん、シルビアとカナタも特訓してて暇なんだし(笑)」
カナタの体幹の特訓をしている間、アルカはイブと共に魔法の特訓をしている。特訓と言うより、座禅と言ったほうが分かりやすい。大きな魔法を生み出すには1番オーソドックスな訓練である。
「イブ、カナタをどういう戦士に育てるの? 魔法は使えないし、小さいから剣や槍で戦うのも向いてない」
「ん? そんなの決まってるじゃん。剣士よ剣士! 相手が剣士なんだからさ(笑)」
「そんな理由で? あんなに華奢なのに?」
カナタは呆れた。イブの指導なら可能だろうが非力で小さなカナタに果たして合っているのであろうか。
「まあ、私にも考えがあるから(笑) 任せなさい!」
不安しか覚えない……。
△△△△△△△△△△△△△△△
イブは4週間同じ毎日を繰り返した。特訓に重きを置いたため、2週間の道程に倍の時間がかかってしまった。だが、その分カナタの特訓は進んだ〜今はシルビアと組み手をやっている。そして夜は……カナタに1時間程度の座禅も科した。
そして……
「やっと着いたねー」
「イブ様、ここは何処ですか? 谷間の洞窟、強い魔物とかいるのですか?」
シルビアがワクワクしている。最近はカナタの特訓を手伝う事で体幹や組み手の身のこなしに理解が進んだからであろう、試したくて仕方がないようだ。
「残念ー、シルビアちゃん。ここには強力な動物はいても強敵はいません! まあ時期飛来してくるから攻撃とかしないでね」
少しすると何か巨大なものが飛んでくる……ドラゴンなのか。その飛来物にイブは飛び上がりながら手を振った。そして……その生物が着地した。大きな鳥? だ。
「みな喜べ! これは我が友、ギガントコンドルのミーミーちゃん!」
イブは得意気にみんなに紹介をした。
「あの伝説の鳥? 乗れたりするのですか?」
「もちろん乗れる。背中はフワフワの羽毛なので気持ちいいよ。この子は私がまだ若いときに私が拾って孵化させたの だから娘みたいなもん」
アルカもシルビアも呆れ顔。それもそう、ギガントコンドルは今や伝説の怪鳥、個体数が少なく人には発見されにくい。飼い慣らされたギガントコンドルはこの世に1羽だけだろう。
「ではみなさん乗り給え! 一度共和国の玄関口、キャナルの街へ行こう」
ここで一度食料等の補給をしなければ。物資が揃ったらまたミーミーちゃんに乗って、魔境までひとっ飛び!
そこで気が済むまで特訓だ。
「では! いざ キャナルへ」
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アルカは伝説のギガントコンドルの背中に乗って移動している。イブは肩、いや、翼の根元に座って歌を歌っている。呑気なものである。コンドルの背中の羽毛はまるで布団のよう、座るとちょうど頭くらいしか出ないほどで羽に埋もれてる感じ、なので思いっきりどこかに掴まってなくても落ちるようなことはない。
一緒に乗っているカナタもシルビアも空からの景色に見とれている。何処までも続いている森や山、遠くの太陽。風が凄いのは難点であるが素敵な体験なのは間違いない。
「風凄いねっ!」
「アルカ、口の中に風入って…………(笑)」
「一緒よ、カナタ…………(笑)」
風のせいで話すと変顔になる。笑いの中、眼の前の山間から街が見えた。やっとベッドで眠れそうだ……。
アルカ達はキャナルから離れた道なき森林の中でミーミーちゃんから降りた。伝説の怪鳥を人前に晒すことは出来ない、だが、ここからキャナルまでは道なき道を進むのでかなり骨が折れそうである。
「はーい、みなさん。ここからは徒歩徒歩! 張り切っていこー」
イブは相変わらずのテンション。アルカ以下のメンバーも街が近い事もあって表情は柔らかい。
(もう一息!)
アルカは辺境の街キャナルへと歩き出した。
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