第28話 顔合わせ
「アルカ、この前作った薬はもう売れちゃったんだけど、素材ってあったっけ?」
「取りに行かないとないかも……」
アルカはカナタと仕事の打合せをしている。イブの残した財産はあるが、生活費くらいは自分達で何とかしたい、そう思い始めたのが薬草販売である。
薬草の素材集めはアルカとカナタの仕事、素材を精製するのは単純作業だが根気がいる、これはミルが担当し、出来上がった商品の販売をマルンにお願いをしている。
「アルカは休んでていいわ。私が素材取ってくるから。最近アルカ、顔色悪いし」
「うん。ありがとう」
イブが書き置きをしてくれた日から張り切り過ぎてオーバーワーク気味、疲れが溜まっている。いつからイブ、いやカイル爺に依存していたのであろうか、今は会いたくてたまらない。
アルカがアジトに張った結界が反応した。このアジトには迷いの結界が張られていて、人が辿り着けないようになっている。それを突破してきた……人数は2人、アルカは飛び起きて警戒をした。
「マルン、カナタ、ミル、全員いる」
「なに?」「はーい」
3人を1箇所に集結させた。これなら攻撃されても3人を守ることが出来る〜玄関に人影が近づく、
「おーい、アルカ いるか〜」
イブの声……アルカは飛び上がって玄関へ向かった。
「イブ…………」
「アルカ、すまんな、遅くなった……」
「お帰りなさい……」
抱きつこうと思ったが、イブの後ろに角の生えた少女がいる。アルカは自重した。
「あ、この子はシルビア。魔族との混血だから角があるの、学校で知り合って弟子にしてきた」
「はじめまして。シルビアです。アルカ様ですね、よろしくお願いします」
シルビアは丁寧に挨拶をしてきた。だがシルビアは気付いた〜溢れる闘気と魔力、この子は強い……イブが弟子にするだけのことはありそうだ。
「こんにちは、アルカです。奥にも仲間がいますので紹介します。こちらへ」
イブの弟子……果たして仲良くなれるのだろうか。アルカは不安になった。
△△△△△△△△△△△△△△
イブはシルビアとアルカの面通しをして安心した。アルカなら、会った瞬間攻撃を仕掛けてきても不思議ではない。その他の3人はシルビアに対しての敵対心もなくスムーズに挨拶を終えた。
「ではみんな! 積もる話もあるけど、まずは今夜、凱旋パーティをしよう! さあさあみんなで買い出し!」
イブの一声でパーティが開催されることに。イブはシルビアとアルカを連れて市場へ買い出し、残る3人はアジトにある食材を使っての料理と諸々の準備をすることに。
「アルカ、少し背が伸びたか?」
「それはないよ、イブが縮んたんじゃない? そもそも爺さんだしさ(笑) ねえ、シルビア、イブに変なことされなかった? 胸揉まれたり、着替え覗かれたり」
「いや、あったかも知れませんが……私にとっては、女性という認識なので〜気にしたことありません」
「爺さんの時は私の着替えニヤニヤ見てたり、抱きつこうとしたり、元気になる度困ったものだったのよ」
「まあいいではないか。羨ましかっただけだよ、その巨乳が(笑) もちろん今も、別の意味で……」
会話はしているがシルビアが遠慮気味である。この2人、仲良くなるまで少し時間がかかるかも知れない。だが、それは時と冒険が解決してくれるだろう〜これから長くパートナーとなるわけなので。
「では、再会と新しい出逢いを祝して、カンパイ」
「乾杯」「カンパイ」「かんぱい!」
パーティが始まった。マルンやカナタ、メルはシルビアと普通にコミュニケーションを取っている。聞けばスラムにも角のを持った人が一定数居るらしい。4人の楽しそうな会話を眺めている…………
「イブ」
「アルカ……ありがとうな。ここで待っててくれて」
「一応侍女ですからね(笑)」
「アルカといると、リリアを思い出すよ。セフィロスの自慢の娘だったからな(笑)」
「母さん?」
アルカの母はリリアといった。盟友セフィロスの娘で思い出してみれば、今のアルカにそっくり。かなりの高齢になってからアルカを産んだが、予後が悪くカイルは助けることが出来なかった。
「セフィロスの娘は巨乳〜ってよく誂(からか)ったものだ」
「昔から変わらないのね(笑) ね、イブ。母さんの話、聞きたいな」
「辛くはならないか?」
「うん、平気。だってやっとイブが戻ってきたんだもん(笑)」
アルカはセフィロスから託された、大切な家族であることを今更ながらに思い出した。恐らく……家族のように対等な会話が出来るのは、今後もアルカのみであろう。
「よし、分かった。美女リリアと究極腰抜けダメ男のアルカの父さんの話をするとしよう!」
アルカの目はキラキラ輝いていた。人というのは成長するものだ……。
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