第16話 対抗戦
イブはやっと全快した。と言っても余命はあと半分程度、今までと同じ生き方をすれば数ヶ月であの世行きたろう。悔い……などは微塵もない。
久しぶりに授業を受ける。1時限目は英雄史、これは受けたくないので2時限目から行くことに。イブは少しだけ緊張していた。
教室の扉を開ける…………
「あ! イブちゃーん! お帰りっ!」
そこに広がる光景は……「女子高」のそれであった。そうである、イブはそれを実現するために命を20%も費やしたのだ。僥倖僥倖!
もちろんイブは大歓迎をされた。特に普通の少女になった6人は感極まっている子もいた。
「みんなー! せっかく命を頂いたんだから、みんなでで人生楽しもう」
「はいみなさん、席について」
マーリ教官が教室へやってきた。さすが教官、騒いでいた空気が一変する。
「そろそろ対抗戦の準備をしないとならない。昨年はこのクラスから7名が選抜されて戦った訳だが……今年の代表は5名、もちろんこのクラスから選抜される」
(対抗戦? 戦闘かぁ、また余命が縮みそうだ)
「質問です! それなんですか?」
「イブは初めてだもんな。ここ、サンドラにはもう一つ、男子校がある。2校の交流を図るため、毎年競技会が行われるんだ。で、その代表をこのクラスて受け持っている」
「何故ですか?」
「考えてもみろ、相手は男性だ。競技会の最中襲われたりしたら危険だろう! だからこのクラスの〜腕力で男に勝る者や対象にならない者を選抜してるんだ。でも今回は困ったな…………」
「私、やりまーす! 襲われたらチョン切りますから! 25本ほどチョン切り経験者ですし…………」
辺りは静まり返っている。やはりこの手の下ネタは女子には受けないのかと思ったが……静寂のあとに ドッカンドッカン受けている。
「イブ、切った残骸どうしたの(笑)」
「え? 道端に落ちてたと思いますよ。よく見なかったけど。犬にでも食われてるかと……」
ここのクラスメートは下品な話も好きなようだ。
「じゃあ、私もやります! 私のチョン切りたいっ」
美少女に生まれ変わったミコトが手を挙げた。魔力持ちのクマコ、格闘が得意なリッカ。恐らくサンドラ島で最強の強さと思われるシルビアも選出された。
「ではこの5名でいいかな。ミコト、お前大丈夫か? 前回はケロイド娘だから何事も無かったが、今は美少女だろ……私は心配だ」
「はい! 護身術は他のメンバーに教わりま〜す」
マーリ教官の言う通りだが……
(仕方ない、お守りを何個か作っておこう)
△△△△△△△△△△△△△△
「報告は以上です、ダフネ様」
マーリは競技会について決まったことをダフネ様に報告した。昨年までは競技会参加の適任者がいたが。
「よし、いいだろう。ところで、イブも参加と言うことだが、戦闘力の方はどうなのだ。治癒系の魔法に関しては相当の手練れなのは分かったが……ある程度身を守れなければトラブルに巻き込まれる。奴は……美人だしな」
「今回は選抜されたメンバーで短期の合宿を行うようにします。競技の内容は明日までには通知されるはずです」
対抗戦は毎年行われている。種目は心技体を競い合う3つのジャンルがあり、それぞれのジャンルに7つの競技がある。各ジャンル最低1競技、今年は合計5競技で争うことになる。
対抗戦の競技種目を決めるのは女子校と男子校が順番で行っているが、今年は男子校の担当。男子校の担当の時は必ず女子校の生徒が辱めを受けたり、半殺しにされたり、何かしら事件が起こる。一昨年度は競技場でルルとメルが半裸にされて辱めを受けた。
「対抗戦の在り方自体を変えたいものだな。いつもイイようにこちらが被害を被る」
「ダフネ様、今回も生徒の安全が大切です。特に選抜されている5名は容姿的に…………」
「分かっている!」
この王国は男社会なのである。この対抗戦もどちらかというと男子校の生徒達の息抜きみたいなもの、たまに女子が勝つとこちらも盛り上がるが、全敗することも多い。最近はシルビアが必ず1勝を挙げるのが女子校の救いになっていた。
「そうだ、別件だが、イブを呼んできてくれないか」
「今ですか?」
「今日は遅いから明日の放課後でいいだろう。学校長として再生魔法の件、労ってヤラねばならん」
「承知しました」
「お前も美形だ。男子校の教官連中には気をつけろよ(笑) 私も気をつけるから」
ダフネ様に近寄る教官など居るのであろうか……マーリよりも可愛らしい容姿をしているが。邪(よこしま)な気持ちで近づいてきても、間違いなく半殺し、いやチョン切られる。
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