第14話 再生魔法

 マーリ教官から許可が下りた。再生魔法、久しぶりに使うことになる。治癒魔法とは全く異なったもの、再生ではなく、限りなく天地創造に近い極大魔法の1つ。そんな魔法を使った少女がいるとミトルやプラックが知られれば、身バレは確実だろう。


 しかし……極大魔法を使った時のダメージが分からない。イブ自身の余命パラメータ、グミを飲んだ時点では100%であったが、魔法を使い戦闘を行い拷問までされた。現時点で残っているのは大体70%といったところ。果たして……


「おい、イブ。聞いているか!」


「あ、教官。申し訳けありません……」


 ちょうど魔法学の授業をしている。昨夜は殆ど寝ていない、美味しいキャンディーを生成するためにひらすら極小魔力をパンの欠片を注ぎこんだ。作り方は簡単、パンをちぎって丸める。それに微小の治癒魔法を注ぎ込むだけ。魔力は多く使わないが美味しくするには根気がいる。



「イブ、今日変じゃない?、具合悪いの?」


「ううん、大丈夫。色々あってね……あのさクマコ、今日の放課後6人で私の部屋に来てくれない? ちょっとお話かあるの♡」


「何か企んでるわね! いいわみんなに伝えておく」


「でね、昨日の宣言。昼休みに決行するわ!」


「…………大丈夫かなぁ…………」


 魔法学の授業は選択科目である。受けているのはクラスの数人、もちろんクマコは受けている。


「攻撃されても余裕よ……私こう見えて結構強いから!」



△△△△△△△△△△△△△△△△



「シルビアさん、こんにちは。これ、作ったんですけど食べませんか♡」


 いつかは来ると思っていたが……意外に早く声を掛けてきた。シルビアはイブから小さな包みを受け取った。


「…………」


「食べてみてください! 私の渾身の作なんですから」


 イブがクラスに来てからずっとイブの監視をしてきた。包みは小さなキャンディーであった。ここで毒物を盛るような行動パターンは……考えられない。無言で一粒食べてみた。


「! ! !」


 食べてみると……魔法で作られたキャンディー、それも治癒魔法が感じられる。食べることで小さな疾患などは治癒してしまうほど、完成度が高い。そして美味しい。


「ねね、いいでしょ! 私の自信作! シルビアって呼んでもいいかなぁ……(笑)」


「うん、構わない。クラスメートだし」


 呼び方の申し出は許可をした。それにしても美味しい、無言で食べ続けてしまう……。貢ぎ物を持ってくるとは、よく出来た人間である。


「シルビアは魔族なの? その角、カッコいいわね♡」


 イブはシルビアの角に手を伸ばす……それは魔族にとって主従関係を示すこと、もちろん触らられた方が格下となる〜シルビアはイブを睨んだ。ただ睨んだのではない、威嚇を付与した。


「あ、ごめんなさい♡ いきなり馴れ馴れしいわよね」


 イブはニコニコしながら謝っている……おかしい、威嚇が効かない。余程の力が無ければ失神するはずだが……。


「いや、いいよ」


「シルビア……あのさぁ、シルビアの怪我、酷いね。放課後、私の部屋に来てくれない? 話したい事があるの」


「分かった」


 威嚇が効かない程の相手。ここは素直に応じておこう。




 放課後、シルビアはイブが居るという独房に向かった。ノックをして入ってみると、クラスメートがたくさんいて足の踏み場もない。


「ありがとう、シルビア! 来てくれて。では早速皆さんに大切なお話をします!」


 シルビアは覚悟をした。何を要求されても従うしかない……恐らくイブはシルビアより遥かに強い。他のクラスメートも静かになった。


「えー、ここに居る皆さんは大きな怪我をしております。で、私はこれでも一級魔法がたくさん使えます。そこで……私がみんなの怪我を直しちゃいます!」


「え? この火傷の痕とか治るの?」


「はい! 火傷の痕もなくなるし、目も見えるようになります。呪い魔法も解けるし、耳も足も生やします!」


 様々な疑問や質問がイブに浴びせられている。誰もが大きな希望を持っている。そしてシルビアについての質問が飛ぶ…………


「ねね、イブ。でも何故シルビアがここに来てるの?」


「それはですねぇ、シルビアはかなりの怪我を負ってますから。右の角、義角っていうのかな?」


 予想はしていたがやはりイブは分かっていた。シルビアの右の角は折れてしまっている。いや、折られてしまったというのが本当のところである。


「シルビア、本当なの?」


「うん…………」


「ではみんなまとめて治してもいいかな? 来週、学校長の応接室で治療をしますが、反対の人いませんよね?」


「わ~い」「よろー」「…………」「お願いします……」


 当然、誰からも異議は出なかった。だが、シルビアは1つの疑問が残った。イブは再生魔法を使うのであろうが……この人数を果たして治すことが出来るのであろうか。シルビアは再生魔法を扱うことの難しさを知っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る