第7話 スタッフ急募

「ねぇ、お兄さん。私達と少しだけデートしてくれない? 有料だけど♡」


「あ、ごめんなさい、お嬢さん……」


「そんな、恥ずかしがらずにしなくていいのよ♡」


「ごめんなさ〜い」


(パパ活はうまく行かない。また逃げられてしまった。こんなに可愛い顔なのに……胸のせいかなぁ)


 イブは理解に苦しんでいた。なぜ上手くいかない……


「イブ、これ無理だよ。何人断られたらやめるの?」


「まだ39人目だからまだまだやるわ! ビジネスモデルとしては一般的な新規開拓営業とかを参考にすると、100人声かけて、商談になるのが5%、そして受注は1〜2%」


「イブ、何言ってんの?」


 転生前にマーケティングや営業ノウハウの本を読んだ事がある。それを思い出してみると、望む望まないを無視した無差別営業で受注出来るのは精々1%程度である。


「要約すると、100人に声かけるまで止めないってことかな」



 イブは考えた……。やはり単一商品では厳しいか、ここはアイテム数を増やさなければ……。


「アルカ、ちょっといい? 笑って〜ハイチーズ!」


「ちょっとなんですか! いきなり」


「よし、やはり私だけでは厳しいからデート相手を選べるようにしたのよ♡」


「…………」


 アルカはふくれて、無言の拒否をしている。しかし、知っている、イブに付き合う、と発言した手前 アルカは嫌だとは言えない事を。


「では、再度チャレンジ!」



△△△△△△△△△△△△△△△△



 程なくするとイブが戻ってきた。若い人間の男性、魔法は使えそうもない〜秒殺出来そうな「敵」である。


「アルカ〜! お客さん連れてきたよ〜! こちらデックさん、えーとね、今度王都の方でお見合いするらしいの! その予行練習したいんだって」


(一応まともな動機ね。戦って負けるような相手ではないし……)


「で、私、何をすればいいんですか?」


「ではアルカ、デックさん。これからご説明と注意事項をお話します!」


 イブは説明を始めた。時間は半日、男性が健全なデートコースを提案する。その際の費用は男性持ち。過度なボディタッチは厳禁、だが手を繋ぐことはOK。男性からの要望はなるべく叶える〜今回の要望は、デート後にデートの点数と改善点を伝えること。


 そして料金。初回指名料はサービスで半日、3万リル。2回目からは指名料2000リル。決して安い金額ではない。


「はい、そういうことで! ではお2人様〜いってらっしゃ~い(笑)」


 アルカは心の中で大きな溜め息をついた。



△△△△△△△△△△△△△△



 アルカとデックさんは景色の良いアルルの丘に向かった。その後、近くのカフェで軽食を取り、市場で買い物、夜はイブも参加してデートのフィードバックをすることになっている。


 アルカに渡したお守りには覗き見効果もあるので、定期的にイブは状況確認することができる。


(まあ何かあったらお守りで守られるから……恥ずかしい場面覗いたら申し訳無いし……)


 イブは次の作戦に入った。顧客探しではない……もちろん、メンバー勧誘である。まずはお金に困ってそうな少女が沢山いると思われるスラムへと向かった。ここは何百年経っても変わらない、混沌が支配している。




「おい、姉ちゃん 見ない顔だね、余所者かい? こんな所に1人で来て危ないよ 帰んな」


 小さな女の子が近づいてきてイブに声をかけてきた。


「忠告ありがとう。でもね、娘よ、目上の人に対しての話し方じゃないなぁ」


「は? ワタシはもう15だ! ペチャパイのクセに威張るな、オンナ!」


 イブは見た目、アルカと同じなので自身の設定として16歳ってことにしてある。今目の前にいる少女とは同世代……でも見た目はロリっ子である。銀髪ショートヘアで幼児体型、恐らく獣人の血も混ざっているのだろう。


「お前、まあまあ可愛いな。マニアにはたまらないかも知れん(笑)」


「もしやお前、人さらい…………」 


 少女の目に恐怖が見える。


「なわけ無いだろう。可愛い子をスカウトしに来たんだ。どうだ、金欲しくないか? 名前は?」


 とても警戒されている、が、お金というワードはこの地域では効果がバツグンだ。


「カナタだ。お前も名乗れ」


「イブっていう。レンカノ事務所をやってる。1人じゃ、心配だろ。カナタの友達とか連れて来ても構わない。話を聞いてくれないか……」


 カナタは少し迷っている。だが、スラムではやはり金がモノをいう。近づくふりをしてさり気なく懐を見せた、大金を持っていることをカナタに気付かせるために。


「わかった。何人か連れてきていいなら話くらいは聞いてやる……その代わり……」


「わかったよ。話を聞いてくれたら1人5000リル渡そう。その代わりカワイイ子を連れてきてくれ(笑)」


 カナタは、了承してからの行動が早かった。すぐに少女を連れてきた。ピンクの髪がなびくムチムチボディ、少し大人びた少女、名前をマルンといった。もう一人は黒髪ロング、スレンダーでキリッとした目鼻立ち、凛々しい感じの美人タイプ、名前をミルと言った。


 イブは3人の少女に仕事の説明をした。少女を言いくるめる事など造作もない事である。ミル以外、カナタとマルンは衣食住を提供することを約束して、契約することになった。



「ではみんな、これからよろしくね!」

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