第4話 故郷の街、サンドへ
夜が明けた。アルカは目を覚ます。隣にはカイル爺? がいる。見た目はアルカと同年代に見えるが……結構可愛い。カイル爺をふと思い出す……少し吐き気がした。
「カイル爺 起きてください」
「ん? もう少し寝かせてくれんか。魔力を使いすぎたみたいだ、動けん」
カイル爺は動けないみたいだが、ここは何処だろう。何だか異臭がする……。
「カイル爺、何かここ、臭くないですか?」
「あー、ごめん。ここはトイレ小屋なんだ」
なんと! 勇者と大魔法使いの子孫がトイレ小屋で寝ている。そんな事、ミトル様が知ったら卒倒するだろう。
「トイレで寝るなんて嫌ですよ、とりあえず出ましょ」
アルカは乙女の姿になったカイル爺を引きずってトイレ小屋から出た。
「ごめんな。実はこの世界に召喚された当時、ここの食い物が合わなくてな。毎日腹を下してたんだよ。間に合わなくて何度もお漏らししちゃって……それで漏らさないようにトイレに転移の魔法陣を書いたんだ」
勇者のお漏らしの話など聞きたくない……しかし、
「そんなくだらない事に上級魔法を使ったのですか?」
「何を言う! 召喚前の世界では、人前でお漏らしした時点で社会的に抹殺されるんだ。お漏らしナメるな」
(異世界とは本当に恐ろしい所なのね……それにお漏らしナメるとか、この表現どうにかならないものか)
「カイル爺、その容姿変えられないのですか? 言動と全く合ってません、そんな可愛いのに下品すぎです!」
「出来ないことはないが、10日後じゃな。魔力が回復するまでは無理無理……それまでは言動を直すとしよう」
(あー、言動は絶対直らないってフラグだな)
「とりあえずカイル爺とは呼べないので名前を変えましょう。何と呼ばれたいですか?」
カイル爺は考えている……そして思いついたように
「サオリン、でどうかな?」
「何か意味があるのですか? 4文字なんて普通は付けませんよ」
「それは秘密よ♡」
元のカイル爺の顔が頭をよぎる……キモい。
△△△△△△△△△△△△△△△
私の名はサオリン。別に最強の女子霊長類の偉人からお借りした名前ではない。でも前世で大ファンなのは間違いない。そして私は相棒のアルカと王国の片田舎の町、サンドに暫し滞在することにした。
「相棒よ まずはゼニが必要だな」
「相棒はやめてください! そしてゼニも!」
「ごめんごめん。で、どうやって稼ぐ? 冒険者とかは嫌よ♡」
「と言うけど、魔物倒して魔石売るのが早くない?」
「いやいや、アルカ。魔王なき今、魔物は貴重な資源なのだ 乱獲はいかん。そうだ! 魔物の牧場作って養魔場を作ろう」
「土地はどうするのですか? それに……魔物の牧場経営なんて常人には出来ません。すぐにカイル爺だってバレますっ!」
「やーね、私は サ・オ・リ・ン よ♡」
アルカが吐きそうな顔をしている。ヤミつきになりそうだ。確かにアルカの言う通り、まず生活する上で必要なものは魔物を倒して魔石を売ることにした。
魔物の狩り場までは高速移動。ここは元魔王領、沢山の魔物がいるはずが……とても少ない。
「こんな狩れないんじゃ、住むところも確保できないね。どうする? サオリン」
「その響きいいねー! 火山のところに行ってみない? 素材とか落ちてるかも知れないし」
という話になりサオリンはアルカと共に火山に向かった。今度は高速移動はしない。換金できそうな素材を集めながら徒歩で移動する。
「アルカ、素材集めは任せたね。ってかこの辺、ドラゴンの鱗が沢山落ちてる。これ、素材なるでしょ」
「はい! 結構な高値で売れるはずです」
「ドラゴンとか居たりして……(笑)」
一瞬であった。空から巨体が攻撃をかけてきた。
「アルカ危ない!」
(ドラゴン? なぜ?)
サオリンは疑問に思いつつも……水の矢、の攻撃魔法を放つ。ここは火山、ドラゴンが生息してるならファイヤードラゴンと相場は決まっている。そして一撃で仕留めた。が、ドラゴンのブレスで2人の服が燃えてしまった。
「これ、気に入ったわ! まるでアダムとイブね、いや違う、イブとイブね(笑)」
「本当にこの格好で街に行くのですか? はずかしいです」
2人の服は燃えてしまった。アルカは森の蔦や草で即席の下着を作った。カイルはそれがとても気に入ったのだ。
「一時の恥よ、ファイヤードラゴンの魔石も手に入ったし、素材と合わせれば豪邸立つわよ(笑)。ドレスも買えるし!」
ファイヤードラゴンは真紅の魔石を残していった。恐らくファイヤードラゴンの上位種、ファフニールだろう。これでお金には困らない筈である。
「では街に戻ろう!」
転移の魔法でトイレ小屋に戻った。そこは街外れ、もう日が暮れているので人影はない。歩いて道具屋に向かう、道具屋は確か市場の東、だんだん人通りが多くなってきて……2人は注目の的となった。
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