第29話 山茶花を迎え撃つ準備
「お、お世話ってあの方々毎日お喋りしているだけなんでしょう?掃除とか洗濯とか手伝えるのですか?」
緋劉!あんた真っ直ぐに聞き過ぎよ、もっと遠回しに聞かないと。
慶琉夏王は間髪を入れずに答えた。
「出来んだろうな。だから大量の使用人を連れて来るだろう。邪魔……いや、我々が宿屋を占拠していてはいかんな!よしっ今すぐ部屋を明け渡しておかねばな。
「いや?あのちょっ……ま、待って……」
私が慌てながら慶琉夏王に追い縋ろうとした肩を、がしりと岩乙女に掴まれた。
「私が宿屋に行かされない為にも、凛華ちゃんには反対は言わせないわよ?」
「しかし、異形よりも厄介な生き物が襲来しそうですね」
ぐはあぁ……伶 秦我中将の嫌味が強烈です。しかしまた食い扶持が増えるの?私一人でお料理出来るかな。
まあ、最近は緋劉もあの梗凪姉様までが、下ごしらえのお手伝いが出来るようになって、楽になったと言えば楽になったし大丈夫かな?しかし、ううっ二人を仕込んでおいて良かった。
「大丈夫さっチビ!俺も手伝うし~六人兄弟の長兄の力の見せ所だな!」
「うわ~洸兌様ぁぁ!頼りにしています!」
思わず洸兌様に抱き付いて懇願したら、すぐに緋劉に引き剥がされた。
美形はお触り厳禁で見て楽しむもの……ということでしょうか?
梗凪姉様はまだ顔色が悪い。私も山茶花の苛めの件は漢莉お姉様からしか聞いていないので、一応何も知らない
その後、慶琉夏王が素早くこちらに越して来た。そういえば慶琉夏王って皇子様なのに、執金吾のお兄様二人以外は御付きの方っていらっしゃらないのかな?と、疑問に思っていると洸兌様が疑問に答えてくれた。
「慶琉夏王はめちゃ強いんだぜ?禁軍で勝てる奴はいないんじゃないかな?正直、護衛はいらないんだけど、あの二人は散官と兼ねてるのよ」
成程、身の回りのお世話係も兼ねているのか。そうだ、洸兌様に聞いてみよう。
「あの……この屋敷に皇子がお二人も逗留されますので、家屋の周辺に防御結界を張らせて頂いても宜しいでしょうか?」
私がそう聞くと洸兌様がニヤッと笑ってから懐から術札を出して来た。
「チビの考えていることは分かってんぜ?あの
蛆虫……の呼び方は如何なものかと思うけれど、確かに山茶花の方々が宿屋からこちらに押しかけられて来ても困る。防御は完璧にしておきたい。
「まあ、いざとなりゃ漢さんが追っ払うだろ?紅と香油のくっさい匂いの山茶花連中もだが、漢さんは部隊長の
そういえば……個人的主観だけれど、洸兌様もあの山茶花のお姉様方に狙われてそうな美丈夫だけど、大丈夫なの?
と、思っていたけれどどうやら違ったみたい。洸兌様は美しい微笑みを浮かべて私の懸念を全否定された。
「俺?いや、全然相手にされてないよ?さっきも言ったけど俺は六人兄弟の、ど田舎の出身だもん。あいつらは首都の貴族の子息しか狙ってないのよ。金が無いのは興味ないんだろ?だから薄志と浅祁はやべぇよ?
洸兌様の言葉に執金吾のお兄様、薄志様と浅祁様が叫んだ。
「や、やめて下さいよっ!洸兌様!」
「僕、実際追いかけられたことあるんですからっ!」
いやぁこっわぁ、薄志様よく逃げ切れたね。思わず薄志様に術札を渡した。
「もしそれらに囲まれたらこの術式札を使って下さい。霊物理防御結界です。助けが来るまでこれで持ち堪えて下さい」
薄志様は泣いて喜んだ。おまけに浅祁様にも術札をくれ!と迫られた。勿論差し上げた。青少年の貞操は守って差し上げなければ、うん。
本日の夕食は禁軍の皆様歓迎の意味と、梗凪姉様を応援しましょう!の料理にしようと、緋劉と漢莉お姉様と三人で食材の買い出しに出かけて、いつもより豪勢なお料理にした。なんだか慶琉夏王が私の魚料理をすごくお気に召したようで「皇宮に帰ってからも時々作ってくれ!」と命じられてしまった。はい、お料理するのは好きなので喜んで賜りました。
さて、まだ例の島は結界が張られていない状態で丙琶の港から丸見えの状態だ。これは恐らく初めての異常事態なのだろう。港には一目、島の様子を見ようと野次馬が沢山集まって、警吏の方がその規制で緊張している。
山茶花も来るし野次馬も来るしで、丙琶の町は妙に活気付いている。
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