第35話
資料をもらえないまま帰宅することに。守に電話すると、すぐ行くと。…だめだった、資料。
「資料は…まだ準備できないみたい」
車を運転する守に言う。サングラスをしてる。ファッションは、いつもこだわっている。私があげた安物のネクタイは、ちょっとだけ仕事につけていってたけど、結局自分で買ってた。
「そうだろうね。長山さんから面接しようかな」
「え、そうなの?伝えておく?」
「いい。こういうのは抜き打ちに限る」
「監査なの?」
「面接だよ?」
守、なにを探りたいんだろ。不満を聞き出すとは聞いたけどさ。
家に着くと、小柄な男がせっせとキッチンで食器棚に皿などを並べる作業をしてる。
「…あ、柊くん」
「…以原先生」
学生の頃のイメージと何ら変わらない。守と友達とは聞いてたけど、たしか青森にいたよね?わざわざここまで?
「おい柊、さっさと終わらせてよ」
「待て待て、あと少しだ」
守は結構がさつに接してるようだ。しばらく太郎と守と遊んだあと部屋に戻ると、柊くんは段ボールをつぶし終わりまとめていた。だから、お茶を入れることにした。私がお茶を入れてるとき、守と柊くんは普通に話してる。
「犬をなんでここには入れないんだ?」
「ここは来客もあるからね」
「ふーん?それにしても、以原先生は昔と全然変わらないな。お前の全然タイプじゃないだろ」
「柊うるさい」
「柊くん、私を褒めてくれてありがとうございます」
お茶を出すと嫌がられた。
「いつも嫌味ばかり言ってましたよね」
「それは柊くんですよ?アドバイスしても、なんの得が?なんて言ってスルーですからね」
「柊は、学生のときと変わらないよね。顔も身長も」
「そもそも守と友達だなんて聞いたことなかったよね」
「それは〜青森が一緒になったから、しょーがなくね?」
「おい足助。なんだその言い方は!」
お茶を入れ終わり、守の隣に座ると手を握られた。
「柊…ところで、
「は?まりこに会いに来てはいる」
「それで、俺が結婚したこと話したんだ…」
「そうなのか?」
「なんか…いきなり現れて、結婚してなんて言って…」
守が、ちょっと震えてるから握り返す。
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