第30話
「ご苦労様」
他にも、この子のためのグッズたちも車から運んでもらった。あのブリーダー、余計なおもちゃもくれるんだから。飽きたら捨てよ。
「足助先生、本当に今日から飼う犬なんですか?」
「そうだよ?」
犬部屋で、零くんは静かに俺らが戯れるのを見ている。
「懐いてますね」
「人懐こいんだよ。お金あげるからちょっと待ってて。この子と遊んでて」
「あ、はい」
零くんは、犬と遊ぶのは久しぶりなのか、少し緊張していた。今の妻は動物好きじゃないのかも。元カノの犬とは遊んでたのにね。
「はい、これ」
「ありがとうございます」
零くんはちゃっかりお金をもらった。遠慮なくという顔をしていて、ちょっとおかしくなった。帰りの足がないとのことで、車に乗せて家まで送ることにした。
「足助先生の車に乗ることができるなんて…」
「細川くんのに乗ってたじゃん。高級なやつ」
「居心地悪かったです」
「そう?慣れだよそんなの」
「足助先生、今回はお声かけ頂きありがとうございます」
「零くんはあんまりお金ないんだね。細川くんから聞いた」
「…そ、そうですか」
「自分の売り方について、もっと考えなよ」
「…はい」
零くんの家はというと…ボロくない、いい感じのアパートだった。ボロい家から引越してるじゃん。
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