第153話 三度目の勇者召喚
2023/03/16 ご指摘いただいた誤字を修正しました。ありがとうございました
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ショーズィさんの案内で、私たちは召喚の間へとやってきた。
ショーズィさんが乱暴に扉を蹴破ると、そこには巨大な魔法陣が描かれた大きなホールだった。
その魔法陣の中央には意味が分からないほど長い髪の女性が二人おり、祈りを捧げているようだ。
そしてその魔法陣の前では一人の老人が何かの呪文を唱えた。すると魔法陣に老人の胸元からほんのわずかに奇跡の力が注がれたように見える。
「教皇! お前!」
それをショーズィさんがそう叫ぶと、魔法陣の外にいる老人に向かって突撃した。
どうやらあの老人が教皇、つまりこの騒動の首謀者らしい。
ショーズィさんは教皇の顔面を思い切り殴った。教皇はそのまま吹っ飛ばされ、十メートルほど先の壁に叩きつけられる。
ぐったりした教皇はそのまま力なく床に横たわった。顔はこちらを向いているものの、その鼻はあらぬ方向に曲がっており、顔面も大きな青あざができている。さらに壁に激突したときだと思われるが、全身から大量の血を流している。
……あれはおそらく致命傷だろう。
「こいつのせいで……」
ショーズィさんは悔しそうにそう呟いたが、その表情は複雑だった。ショーズィさんのされたことを考えればその気持ちはよく分かる。
するとエルドレッド様が教皇に近づき、剣でその胸を一突きにした。
「これで最重要ターゲットは始末しました。あとはこの大聖堂を奪い、教会の幹部をできる限り排除します」
エルドレッド様はそう言うと、魔法陣の中心で今もなお祈りを捧げている二人の女性に視線を向けた。
彼女たちは何事もなかったかのように祈りを捧げ続けている。
「え? 何? あれ……?」
なにやらほんのわずかに込められた奇跡の力が魔法陣をぐるぐると巡り、どんどんとその力を強めているように見える。
「あれ? どうなってるんですか? これ、なんだかどんどん強くなってません?」
「どういうことですか?」
「ほら、あそこでぐるぐると回ってて……。これってなんなんですか?」
「あれは俺が召喚するときに使ったやつだと思いますけど……」
「これが、ショーズィさんを無理やり連れてきた……」
「あかん! はよ止めな! これは生贄のやつやで!」
「え!? 止めるってどうやって?」
「なんかが巡っとるんがアタシにも分かるようになってきた。はよその巡りを止めんと!」
「どうやってですか? 魔道具ならニコラさんやエルドレッド様のほうが……」
「これは魔法やない。アタシらが中々感知できんのなら奇跡なんとちゃうんか? ほならホリーちゃんならなんとかできるんとちゃうんか?」
「え? あ、えっと……」
そんなこと一度もやったことないのでやり方なんてさっぱり分からない。
奇跡を使うときに感覚的にやっている感じで、この魔法陣の中を巡っている奇跡の力を抜き取ればいいのだろうか?
私が躊躇していると魔法陣が眩い光を放ち、それと同時に中央で祈っている二人の女性を包み込むように奇跡の力が女性を覆っていく。
「あっ!」
焦った私はすぐさま魔法陣の端に手をかざし、そこから力を抜き取るようにしてみた。
するとあっけなく巡っている奇跡の力は抜けていき、その力は私の中に蓄積されていく。
このままでは私がどうにかなってしまいそうなので、その奇跡の力を使って聖域の奇跡を展開してみる。
最も消費の激しいこの奇跡ならば、この余った力を使うにはちょうどいいはずだ。
そうしているうちに奇跡の力が抜けて強い光は収まり、やがて魔法陣を巡る力はやがて消滅した。
「おお! やっぱりホリーちゃんはさすがやな。ええもん見せてもろたで」
「あ、はい」
「いやあ、奇跡はもしかすると特定の質の魔力でしか発動できんっちゅう話なんかもしれんな。よそから持ってきた魔力をつこうて発動なんて、魔法じゃ絶対無理な話や。暴発する」
「はぁ」
そう言いながらニコラさんは目を輝かせながら魔法陣を観察している。すると、入口からものすごい数の聖騎士がわらわらとやってきた。
「教皇猊下! 大変でございます。賊が大聖堂に! ぬ! 賊めが!」
「聖女様!」
「教皇猊下! 貴様ら! よくも猊下を!」
入ってきた聖騎士たちはすぐさま私たちに襲い掛かってきた。
すぐにエルドレッド様とショーズィさん、それにマクシミリアンさんが彼らを止めようと前に出る。
「この裏切者が!」
「裏切る? 最初から騙しておいて、何が裏切っただ! 最初から俺を裏切っていたのはお前たちだろうが!」
ショーズィさんが怒りを爆発させ、魔法を発動した。オレンジ色の球が聖騎士たちを襲い、その足元で爆発する。
その爆発を受けた聖騎士たちは吹き飛ばされ、廊下の壁にぶつかると力なく倒れた。
「なるほど。聖騎士自慢の魔法を無効化する盾もああすればいいのですね」
そう言ってエルドレッド様も前に出ると、ショーズィさんと同じようにオレンジ色の球を向かってくる聖騎士たちの足元で爆発させた。
爆発に吹き飛ばされた聖騎士たちは壁に叩きつけられて動かなくなる。
「ぐあっ!」
「魔族め!」
侵入して来ようとする聖騎士はすべて二人が何とかしてくれている。
であれば、私は私のできることをやるだけだ。
「ニール兄さん、まずあの生贄にされていた人たちを助けようよ」
「ああ、そうだな」
私たちは魔法陣の中央へと向かうのだった。
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