第132話 破壊
「だから言ったでしょ? 僕は呪われてなんていないってさ。僕は愛する人のために戦ってるんだ。クラウディアを守るためならなんだってする!」
私はその強い瞳に気圧されるように一歩下がった。
「それはこっちだって一緒だ。ここにいる人たちは愛する人を守るために戦っている!」
「そうじゃな。姫様をお守りするためであれば、ワシも命は惜しくない」
「……」
ミヤマーはそれを聞くとじっと私のほうを見てきた。
「な、なんですか?」
「うん。君さ、その魔族が大事なんだろ? なら、君が僕と一緒に来ればそいつは見逃してあげるよ」
「おい! 宮間! お前なんてことを!」
「滝川くんには聞いてないよ。聖女の子に聞いてるんだ。僕は君を連れてくるように言われてるからね。君が僕と一緒に来れば、僕はこの場を離れる。だからその魔族は今、死なずに済む。そうすれば、もしかしたら逃げ切れるかも知れないよ?」
「それは……」
「姫様、なりません! こやつは!」
マクシミリアンさんがミヤマーとの間に割って入ってきた。
「おじいさんも、どうしても邪魔するわけ?」
「ワシは姫様にお仕えする身。姫様をお守りするのは当然のことじゃ」
「そう。じゃあ仕方ないね」
ミヤマーの雰囲気がガラリと変わった。
ギイン!
突然金属音が鳴り響いた。気付けばミヤマーの剣をマクシミリアンさんが受け止めている。
「え?」
二人が何をしたのか全く見えなかった。
「へえ。魔力も低そうなのに」
「強さは魔力のみで決まるのではないのじゃよ」
マクシミリアンさんが反撃に転じた。あまりにも早すぎてすべての動きが分かるわけではないが、どうもマクシミリアンさんが押しているように見える。
「師匠!」
「今のうちに姫様とニール殿を!」
「はい! ホリーさん、失礼します」
「ひゃっ!?」
ショーズィさんは私を脇に抱え、さらに反対側の脇にニール兄さんを抱えて走りだした。
「おい! 逃げるな! うわっ!? この! 邪魔をするな」
ミヤマーの声が聞こえるが、私にそれを確認する術はない。
ショーズィさんはものすごいスピードで砦を駆け抜け、司令室のほうへとやってきた。
だがすでに司令室のある建物の前には白い鎧の一団が入り込んでおり、私たちの兵士と交戦していた。
「まずいな。聖騎士団か。ホリーさん、ちょっと隠れていてくれませんか?」
「は、はい」」
ショーズィさんは私を下ろすとニール兄さんを建物の陰に隠した。
「絶対に見つからないでください」
そう言い残し、ショーズィさんは聖騎士たちのほうへと向かっていった。
「やめろぉぉぉぉ!」
「なっ!?」
ショーズィさんは次々と聖騎士たちを倒していく。
「勇者様!?」
「裏切ったのですか?」
「裏切るも何も! 俺を呪いで操っていたのはお前たちじゃないか! よくも!」
「なっ! この裏切り者め!」
ショーズィさんが人族に裏切り者と罵られているが、気にしている様子はない。
あっという間に聖騎士たちを倒し、制圧してしまった。
「大丈夫ですか?」
「お前は、ホリー先生の下僕三人組の一人か!?」
「助かった。礼を言う」
「え? あ、はい。それよりホリーさんを」
「ホリー先生がどうした!」
「あそこに隠れてもらってます。早く!」
「ああ!」
ショーズィさんが魔族の兵士たちを連れて私たちのほうへと駆け寄ってくる。しかし私が建物の陰から顔を出して手を振ると、なんとショーズィさんとは反対側から聞きたくない声が聞こえてきた。
「見~つけた」
「ひっ!?」
私が振り向くと、なんとそこには血まみれになったミヤマーの姿があった。
「み、ミヤマー……マクシミリアンさんは!」
「さあね。さあ、来てもらうよ」
「いやです」
しかしミヤマーは私の言葉には耳も貸さず、一瞬で私の前に移動して私の左腕を掴んだ。
「痛っ! いやッ! 放して! いや!」
私が思わず叫ぶと、胸元のネックレスから金色の光があふれだす。
それはすぐさま聖域の奇跡となって発動し、私をすっぽりと包み込んだ。
「なっ!? なんだこれは!」
まるで弾かれるかのように私を掴んでいたミヤマーの手が離れ、ミヤマーは数歩後ずさる。
「ホリーさんから離れろ!」
そこへショーズィさんが飛び込んできたかと思うと、ミヤマーを思い切り蹴り飛ばした。
「ホリーさん、大丈夫ですか?」
「は、はい」
「早くこっちへ」
「はい。でもニール兄さんも」
「もちろんです」
ショーズィさんは私とニール兄さんを両脇に抱え、司令室のある建物に向かって駆けだした。
だが私たちの行く手にオレンジ色の球が撃ち込まれ、私たちのほうへと向かってきていた魔族の兵士たちが吹き飛ばされてしまう。
「ああっ!」
「はあはあ。なんなの? 今のは? 滝川くんも、あくまで邪魔をするって言うなら!」
ミヤマーは何メートルもある巨大なオレンジ色の球を作り出した。
「ホリーさん、俺の後ろに」
「はい」
ショーズィさんが飛んでくるであろうオレンジ色の球に備えるが、なんとミヤマーはそれを私たちのほうではなく横に放った。
「え?」
それはすぐに隣の建物に命中し、あたり一帯にすさまじい爆風が吹き荒れる。
「ははははは。邪魔するなら先にこの邪魔な砦を吹き飛ばしてやればいいんだ!」
ミヤマーはあちこちにオレンジ色の球を撃ち込み、ボーダーブルク南砦はあっという間に瓦礫の山と化していく。
そしてミヤマーが七発目のオレンジ色の球を私たちに向けて放った!
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