第3話 紅葉とコスプレ少女
「ここには何もありませんね」
「そうだな」
オフィス跡とはいうものの、デスクや椅子などはとうに撤去してあり、事務機やロッカーなどは無く、資料らしきものも何もなかった。それでも何か証拠はないかと探してみたものの、赤い砂埃が舞うだけで何も見つけられなかった。
「次はそこの倉庫跡だ」
「はーい!」
まるでフィギュアスケートの選手のようにその場でクルクルと三回転も回るイケメン高校生である。彼は開きっぱなしのシャッターから、倉庫の中へと入っていく。私も後に続くのだが、倉庫の中には少しの瓦礫が小山となっているだけで全く人気がない。
「ここ、外れじゃないかな?」
能天気な紅葉は、その場で「壁」のパントマイムを始めた。これはまるで、その場に見えない壁があるかのような演技をする。いつも思うのだが、紅葉は大道芸人のように上手である。
「タレコミがあったんだ。面倒でも全て調査する必要がある」
情報が嘘だった場合、今日の捜査が無駄になり非常に虚しい。
怪盗レッドフォックス。
もちろん自称だ。
火星において
先日、その義賊たるレッドフォックスが大量の
私たちは倉庫や工場跡も調べてみたが、何も見つけることができなかった。もちろん
無駄足だったか。
「やはりガセネタだったか」
「ガセだけどガセじゃない、多分ね」
「紅葉、どういう意味だ?」
「あそこ」
紅葉が指さす方向に、陽炎のような揺らぎが見えた。それは次第に人の姿へと形を変え実体化した。
そいつは若い娘だった。淡いピンク色のショートヘアで、頭の上にはキツネ耳が揺れていたし、同じく淡いピンク色のフサフサの尾が尻から垂れ下がっていた。
コスプレ少女?
しかし、姿を隠していたのは軍事技術の光学迷彩か?
「やあビアンカ」
「はあーい、トリニティ」
「どうしたんだい? こんなところへ呼び出すなんて」
「貴方が変な女にぞっこんだって聞いてね。どんな変態か確認したかったのよ」
変な女? 変態? それは私の事か?
髪をピンク色に染め狐耳をおっ立てているコスプレ少女に言われたくない。
「なかなかの美女でしょ。将来有望な連邦警察捜査官、
こいつらは知り合いなのか? しかも、紅葉の事をトリニティと言っていた。もう訳が分からなかった。
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