第2話 助っ人と服装検査

「ヤッホー。着替えて来たよ」

「何でウチがこないな服着なあかんのや」

「おおおお……俺まで何でこんな格好をするんんですか?」


 生徒会室に入ってきたのは三人。三人ともいわゆるメイド服を着ている。そのうち二人はミニスカートのフレンチタイプ。長身の一人だけレトロタイプのロングスカートだ。


 ミニスカートの女子生徒は竹内玲香たけうちれいか。彩花と椿の親友である。


「へへへ。ボク、メイドさんになったのは初めてだよ」


 クルリと一回りする際にスカートが舞い、下着が見えそうになる。その様を苦々しく見つめるのは小柄な香川津美海かがわづみみだ。


「なあ、会長さん。ウチが何でこないな格好せんといかんのや」


 見た目はツインテールの美少女美海だが実は男の娘である。彼女は不満の塊となっていた。


「玲香姉さんも美海さんも、凄く似合ってます。可愛いです。でも、何で俺にこんな服を着せるんですか?」


 不満げな長身の人物は男子だった。彼は竹内緋色たけうちひいろ。玲香の弟なので、彩花と椿からは弟君おとうとくんと呼ばれ可愛がられている。


「弟君に合うサイズがそのメイド服しかなかったのだ。レトロタイプなので長袖ロングスカート。肌の露出が極めて少ない。色気のないチョイスになった事は非常に残念である。すまない」

「そんな事は良いんです。何故、女装なんですか? 喫茶の給仕なら普通のタキシードで良かったのではないですか?」

「却下だ。黒執事カフェは別にある」


 彩花の言葉にがっくりと肩を落とす緋色だった。


「さて、君たち三人には特別な司令がある。それは二年A組のバニーカフェにおいて問題が発生した。その問題を解決するため現地へと急行せよ」


 生徒会長の彩花が檄を飛ばすのだが、三人とも要領を得ない表情のままだ。


「詳しい事情を説明している時間はない。とにかくバニーカフェでウェイトレスをやれ。椿は例の三人組を生徒会室まで連行しろ」

「ラジャー」

「わかりました!」

「めんどい……」

「マジですか」


 勢いよく返事をしたのは椿と玲香。二人は颯爽とドアを開けて廊下と飛び出した。美海と緋色は乗り気ではないようで、彩花に睨まれながら渋々と生徒会室から出て行った。


 程なく、椿が三人の女子生徒を連れ戻ってきた。


 三人とも、黒いバニーガールの衣装に身を包んでいる。

 比較的長身で引き締まった体形の綾川知子あやかわともこ。肩まである黒髪ストレートのセミロングヘアが清楚な印象を与えている。赤いセルフレームの眼鏡が野暮ったい印象を与えるが、中身は可愛い系で意外とグラマーな有原波里ありはらはり。ぽっちゃり爆乳系の黒田星子くろだせいこは何が起きたのか理解できていないようで、呆けた顔できょろきょろしている。


「三人ともご苦労。忙しい所申し訳ないが、今から服装検査を行う」

「服装検査ですか? 私たちが何をしたって言うんですか?」


 彩花の言葉に食って掛かかるのは知子だ。


「君たちの服装が淫らだと保護者からクレームが入った。生徒会として事実を確認し、問題に対処しなければいけない」

「クレームですか? そんな雰囲気はなかったけど」

「みんな褒めてくれてたよ」

「淫らってエッチな事よね。で、誰がエッチなの?」


 知子と羽里はクレームに対し疑念を持っているが、星子だけが鈍感で事態を把握できていない。彩花がその星子をビシッと指さした。


「うむ。では一番えっちな君からだ」

「え? 私ですか?」

「そうだ。黒田星子。君からだ」

「ええ? 何をするの?」

「服装検査。今から引っぺがす

「えええ?」


 星子がそろりそろりと後ずさりする。椿はドアに鍵をかけ、彩花と知子と羽里の三人が星子を取り囲んだ。

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