シュレーディンガーのパンツ……シュレパン
暗黒星雲
第1話 バニーガールのパンツ
カチカチ……。
マウスをクリックする音が生徒会室に響いている。
デスクトップパソコンのモニターを睨む少女。二重だが鋭い目元、そしてポニーテールが特徴的な彼女の名は
「問題の衣装はこれか……。なるほど」
モニタ画面に映し出されているのは、現在開催中である学園祭の映像だった。教室を改装しての喫茶店なのだが、ウェイトレスをしている女子生徒の衣装が問題視され、早速クレームが入ったのだ。彼女は生徒会長として、その実態調査を始めたところだ。
「あらあら。これは露出度の高い衣装ですね」
「そうだな。女子高生がこんなバニーガールの衣装で接客するなど言語道断らしい」
「でも、これはこれで可愛らしいわ。ちょっとセクシーなところもいいんじゃないかしら。もちろん、本人が納得していればって事になるけど」
「そうだな」
生徒会長の柊彩花に話しかけているのは生徒会書記の
「クレームでも入ったの?」
「開店早々にな。保護者からのクレームだが事前に情報が漏れていたようだ。健全であるべき学園祭に、バニーガールは不健全そのものだと」
「不健全ねえ。強要されたのならともかく、自主的にやっている事をとやかく言うものじゃないと思うわ」
「そうなんだが、下着姿で接客するなど破廉恥だと言われている」
「あ。バニーガールの衣装って下着なの? 下着付けてなくてもアレは下着じゃないと思うけど。和装で下着を付けない事もあるらしいから、同じことじゃないかしら」
「ここを見ろ」
彩花がモニターを指さす。
「あらら。可愛いおしり。これは誰かな?」
「二年の
「確かに。羨ましい位にスッキリとしたおしり……」
「まあ……尻の形はどうでもいいんだ。ここを見ろ。スクール水着などと違い、尻の部分が布に覆われていない」
「確かに。これはTバックって言うのかしら」
「そう。黒ストに覆われているがパンツをはかずに尻丸出しだと激オコ状態なんだ。で、こっちの胸を見ろよ」
「うわあ。この娘、おっきいわね」
「こいつは二年の
「むむむ。中々やるわね」
「椿もうかうかしてられないな」
「大丈夫。まだ3センチのアドバンテージがあるわ」
「余裕か? まあこの背中をみろ」
「あらら。背の部分も丸出しになってますね」
「これも、ブラもつけていないノーブラ状態だと激オコ」
「なるほど。でも下着は付けていなくても、見えないからいいんじゃないの?」
「違うぞ。下着を付けないのなら、それが下着だという理屈なんだ」
「あ、そうか」
「つまり、バニーの衣装=下着姿なのでけしからんのだと」
「それはちょっと強引ね。校則ではどうなの?」
「特に記載はない。ただし、公序良俗に反するモノであれば引っ掛かる可能性はある」
「水着の場合はどうなの?」
「過去、水泳部が水着カフェを実施した記録がある」
「ええ? それ、大丈夫だったの?」
「大盛況だったらしいぞ。ただし、水着で接客したのは男子のみで、女子は調理や裏方だったらしい」
「それは……そそるわね」
「だろ?」
「でも、下着がどうとか問題にならなかったの」
「問題は無かった。競泳用水着は下にインナーを付けるからな。お〇んちんをギュッと固定するアレを」
「ああ。それがインナーで水着はアウター?」
「そういう理屈だ」
「妙な理屈ね。競泳用水着の男子が良くて、水着よりは露出してない女子のバニーがダメなんて」
「その通り。ちょっとセクシーなだけで性的だと排除しようとする魂胆が見え見えだ」
「でもね。これ、下着を付けていたらセーフなんじゃないの? 過去の水泳部の前例があるから」
「それもそうだな。しかし、この映像では確認できなかった。静止したり拡大したりしてみたが、下着がはみ出ていたりラインが透けてない」
「なるほど。生徒会が確認するまでパンツをはいているのかいないのか、わからないのね」
「ああ、これはまるで量子力学における確率論のようだな」
「彩花は何を言い出すの? まさか、彼女達がパンツをはいていないとでも?」
「飽くまでも確率論だ。素粒子の世界、ミクロの世界では全ての存在が確立で表現されるんだ」
「その話は聞いたことがあるけど」
「シュレーディンガーの猫」
「ああ、それ、化学の三谷先生が話してたわね。二分の一の確率で猫が死ぬ箱の中がある。その中に猫を入れた場合、次に観測者が確認するまでは生きている猫と死んでいる猫が同時に存在する……だったかな」
「この場合はパンツが存在するか否かだから、シュレーディンガーのパンツだな」
「もう、何を言ってるのよ。それはそうと、この件はどうするの? どうやって確認するの?」
「本人に直接確認する。衣装を脱がして」
「もう、彩花って強引なんだから。でも、そろそろお昼時だから彼女達も手が離せないんじゃないの?」
「大丈夫だ。最強の助っ人を用意した」
その時、生徒会室のドアをコンコンとノックする音が響いた。
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