第43話:◆キスククア新聞 Vol.8 超特大号 ~かかと落とし令嬢、人類の悲願を達成! 魔王を倒す~◆

 本日、キスククア嬢の大変に素晴らしい功績が報告された。

 このような報告ができるなど、弊紙にとっても最上の光栄である。

 どうか最後までお読みいただきたい。



 我々はついに魔王討伐の日を迎えていた。

 遠方にそびえるは魔王城。

 空は重苦しく、城を包んでいるのは禍々しいオーラだ。

 ここは魔王軍の支配地域なのだと、否が応でも認識させられた。



 筆者たち魔王討伐隊は、事前に得た情報から作戦をたてていた。

 ダーリー氏の防御魔法により、一丸となって魔王城を突き進むというものだ。

 無用な戦闘を避け、短期決戦で勝利するという作戦である。

 魔王は無限のエネルギーを確保しているため、元より長期戦では勝ち目がないからだ。

 一丸となって突き進む討伐隊。

 そのバリアは非常に強固であり、敵のどんな攻撃も通用しなかった。

 あっという間に、“魔王の間”へとたどり着く筆者たち。

 そして、扉を開けたその先にそれはいた。

 人類最大の敵……この世から平和の二文字を取り去った元凶……あらゆる手段で人類に恐怖を与えてきた存在……魔王だ。

 


 勇者のリフ氏の援護を受け、猛然と駆け寄るキスククア嬢。

 魔王が放つ無数の攻撃でさえ、彼女を捉えることはできない。

 キスククア嬢の強さの源は<かかと落とし>だけではないのだ。

 厳しい鍛錬を乗り越えて身につけた、類まれなる身体能力こそ彼女の真の強さなのだ。

 リフ氏の聖なる魔法により、魔王の動きが封じられる。

 すかさず、キスククア嬢は右脚を振り上げた。

 これまで数多の強敵を葬り去ってきたあのフォームだ。

 すでに、筆者は勝利を確信していた。


「今までどれほど苦しんだかわかっているのか、このクソ親父いいいい!!!」


 キスククア嬢のかかとが、魔王の脳天をかち割る。

 真っ二つに引き裂かれる胴体。

 その光景を見ているだけで、筆者は涙が出てきてしまった。

 とうとう、魔王を倒したのだ。

 駆け寄る討伐隊のメンバーたち。

 城内に轟く喜びの声。

 この歓声がキスククア嬢への感謝を表している。



 ありがとう、キスククア嬢。

 ありがとう、かかと落とし令嬢。

 おかげで我々の平和が取り戻された。

 筆者も涙ながらに文章を書くので精一杯だ。

 こんなに幸せなことはない。

 ありがとう、本当にありがとう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る