かかと落とし令嬢はチートな踵で無双する~空前絶後のゴミスキルと追放されたけど、即死を楽しんでるだけで感謝されます。私の美しいフォームに魅せられ、国中の超絶優秀な人材が集まり実家は崩壊しました~
第7話:◆キスククア新聞 Vol.1 ~お嬢様冒険者、鮮烈なデビューを飾る~◆
第7話:◆キスククア新聞 Vol.1 ~お嬢様冒険者、鮮烈なデビューを飾る~◆
本日、我らが冒険者ギルド、“クルモノ・コバマズ”に新たな女性冒険者が誕生した。
その名もキスククア・カカシトトー(16)。
闇をも飲み込むような漆黒の瞳に、艶やかな長い黒髪。
とても冒険者とは思えない麗しい出で立ちだ。
それもそのはず、彼女は言わずと知れたカカシトトー伯爵家のご令嬢なのだ。
なぜ、そんな由緒正しいお嬢様が冒険者ギルドなどにいるのか。
なんと、後述する素晴らしいスキルを理解されず、不当に追放されてしまったそうだ。
彼女を追放したことで、今頃カカシトトー家は甚大な損害を被っているだろう。
彼女が得たスキル、それは…………<かかと落とし>。
その名の通り、凄まじい威力を誇る足技だ。
実は、筆者は以前の取材中、彼女にこの技で命を救われた。
相手がどんなに凶暴なモンスターでも恐れない精神力、弱者を決して見捨てようとしない慈愛、もはや芸術品とも言えるほどの美しいフォーム……。
その瞬間から、筆者はキスククア嬢の虜になってしまったのだ。
そして、彼女は寝ている時でさえ訓練を怠らない。
あえて寝心地の良いベッドを捨て、硬い床で寝るのだ。
もはや、歴戦の猛者のような精神力だ。
「早く冒険者ランクを上げたいのよね」
これは彼女の口からこぼれ出た志の高いセリフだ。
特に、魔王討伐への並々ならぬ気概を感じる。
彼女が選んだクエストは、森の泉に出たトロールの討伐。
駆け出しの冒険者が挑むようなクエストではない。
しかし、そこは規格外のキスククア嬢。
先述した取材中、彼女はすでにラージオークを単独で撃破していたのだ。
そして、ついに遭遇したトロール。
向かい合う両者。
わずかな瞬きも許されぬ緊迫感。
“冒険は常に死と隣り合わせ”……まさしく、生死のやり取りがそこにはあった。
迫りくるトロールにも全く動じないキスククア嬢。
紙一重で棍棒の攻撃を華麗に躱す。
たったそれだけの動作で、彼女が積んできた鍛錬の重みを感じる。
キスククア嬢が天高くかかとを上げた。
「死にさらせええええ! このクソ野郎がああああ!」
古のドラゴンさえ縮み上がるような怒号。
神の鉄槌の如く振り下ろされるかかと。
切り裂かれるトロール。
降り注ぐ血の雨。
恍惚とした表情で佇むキスククア嬢。
まさしく――魔神のごとき存在がそこにはあった。
今後も、本紙はキスククア嬢の独占密着取材をしていく予定である。
続報を待て。
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