EP9 勘違いで危機的状況らしい

ガロンが振り下ろした拳をクロワは鎖で受け止めた。


「喧嘩ではありません! 起こされただけです!」


「なんだと!?」


ガロンの拳が鎖を捉えた衝撃で、空気が激しく震えている。


クロワの左右居た者は風圧で吹き飛び壁に衝突して転ナノンの側に転がった。


騒ぎを駆け付けて他の部屋からも様子を覗きに来るが、他班に関しては責任者であってもCランク程度。

Cランクと言ってはみても、一人で数人のDランク管理者を相手にしても、無傷で制圧できるのだが。

その程度の強さと実績では荒ぶるガロンに声を掛ける事さえ出来ず。


この場を収められる者など居ない。


誰もがそう思った所にコツコツとヒールが床を鳴らす心地良い音が響いた。


「私の奴隷に何してるのよ?」


「メィロン!」


「私の事はメロンちゃんって呼んで。それで? これはどういう事なの?」


「いや、すまん。俺の勘違いだ」


——ブンッッ!!


少女は緑色の髪を束ねるとガロンに向けて鎚を振り抜いた。


メィロンが繰り出す鎚の一撃はガロンの真横を通り過ぎている。


「勘違いで私の奴隷に何してるの?」


「いや、それはだな、メィロン……」


「メロンちゃんって呼んでって言ってるでしょ?」


——ブブブンッッッ!


その声は重圧を帯びて周囲の者を威圧した。

直後にガロンの前後左右を鎚の軌跡が風となって通り過ぎる。

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