EP3 俺の選択は無視されるらしい
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ジャリンジャリンと。
鎖が擦れ合う音が男の頭を揺さぶり、ゆっくりと脳を目覚めさせる。
「ウググ……」
胸の鼓動が無理矢理に肺を刺激し、痛みと共に冷たい空気が喉を通る。
「何だ……これは」
両手両足は広げられ、鎖で繋がれた状態で横たわる。
「ABとそれからCとD。四種類あるだけどさ。どれが良い?」
いつの記憶だろうか。鮮やかな緑の長い髪が、新緑の森を想起させる。アイラインが特徴的な少女が首を傾げて男の答えを待つ。
「D——」
声を振り絞って答える。
手のひらに乗るサイズから、人が入れる程の大きさまで、大小様々な箱の中から男は一番小さい箱を選んだ。
——管理者、病棟の様な施設、突然の拉致。
これらのキーワードから推察出来る場所を男は知っていた。
【神の雫】
【魔石】
或いは——
【漆黒の鉱物】クロルチウム
【Xx】イクシウム
さらに呼称を縮めて
空の支配権を飛龍族に。
海中の支配権を水龍族に奪われ、人類の往来が困難となったこの世界では情報の伝達も制限されて“それ”の呼称は国や地域によって異なっていた。
人類は異種族との争いの副産物としてその歴史を大きく前進させる鉱物を手に入れる。
鉱物の加工は困難を極め、限られた者だけが神にも等しいと呼ばれる技巧で、様々な恩恵を人類に与えた。
「Dかぁー。D選んじゃうかぁー。だったらBにするね」
半開きの口は可愛らしく微笑む。
可愛いという感想は或いはその選択に意義を申し立てたい心情の当事者のものだ。
「あはは」
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