第132話 金貨をどう使うかは俺の自由だ!(25)

「だいたい体当たりしてきたのはお前のほうだろが!」

「何よ! 私が悪いって言うわけ!」

「ケンカはダメだよ……蘭華ちゃん……」

 この二人、顔はそっくりでも中身は別人!

 ――あれ……?

 キョトンと蘭華と蘭菊の顔を交互に見比べるタカトは何かに気づいたようである。

「何よ! じーっと私の顔を見て! 何かついとるわけ! キモっ!」

 どうやら謝る気など毛頭ない蘭華は、怪訝そうに腰に手をあて仁王立っていた。

 その圧倒的な威圧感! どうやらただ物ではなさそうである。

 この気!

 この気配!

 この感じ!

 もしかして!

 ……

 ……

 ――双子?

 って、気づいたのはそっちかぁ~い!

 まあ確かに幼女の顔など雰囲気は違えどもほとんど同じに見える。

 だから、保育園などで見る女児の顔など我が子以外はどれもこれも同じように見えてしまう父親は作者以外にも少なからずいるはずだ。

 まして、双子ともなると全く一緒。

 判別なんて不可能に近い! 

 ――こっちが蘭菊ちゃんで、コイツがメスガキか!

 意外や意外! タカト君には分かるんですか! この違い! って、この子はメスガキじゃなくて蘭華ちゃんですからね~!

 そう、こう見えてもタカト君、女性の守備範囲は幅広い!

 幼女から老婆までどんっと来いなのだ!

 まぁそれで実際に幼女がどんっと来てぶつかったわけなのだが……


 双子ということはやっぱり……蘭菊ちゃんとこのメスガキの両親も同じなわけか……って、それ当たり前。

 いやいや、世の中には生みの親と育ての親が別ってこともある訳で。

 というか……この子たち……

「さっきの話に出てきてた子たちだよな……」

 どうやら女店主の話を思い出したようで、タカトは背後に立つビン子にそれとなく確認を求めていた。


「そうじゃない」

 ビン子も口には出さなかったが、おそらくこの二人のことが気になっていたのであろう。

 その証拠にタカトの『さっきの話』という抽象的な言葉だけで、なんの話のことなのかを理解したようだった。

 って、ビン子ちゃん、女店主たちの話しをちゃんと聞いてたよ!

 てっきり、バキュームカップの音に気を取られて絶対に聞いてないと思っていたのに。

 何をおっしゃいます!

 あの試供したバキュームカップは毎秒1無量大数もの極微弱振動を発する優れもの!

 はた目には全く動いていないかのように見えるだけなんです!

 その商品名:風林火山!

 速きこと風の如く

 (タカト談:……って、それ動いてないって……)

 その静かなること林のごとし。

 (タカト談:……だから、それ絶対に動いてないって……)

 侵略すること火の如く!

 (タカト談:……噂ではこのツョッカーって会社、お金の請求だけは烈火のごとく熾烈らしいぞ……)

 動かざること山のごとし!

 (タカト談:……でもって、二つのオッパイは山のように不変だったそうでした……)

 って、当たり前や!

 だって、この融合加工道具、電池のように動力源となる血を注ぐ場所すらないのだ。

 どうやったら動くって言うんだよ! コレ!

 大丈夫です! ほら、動いた♥

 それは押さえているビン子ちゃんの手の振動です……


 そんなトンチンカンなビン子もまた二人を見て何かに気づいたようである。

「あれ、この子たちって朝、橋のたもとにいた子たちじゃない?」

 まぁおそらくあの時、二人の歌と踊りをしっかり見ていたビン子が言うのだから、たぶんその子たちで間違いないのだろう。


 だが、二人を見るタカトには何か違和感があったのだ。

 そう……無ければならないモノが無いような気がするのである。

 その違和感を確認するかのようにタカトは再び蘭華蘭菊の顔を覗き込んだ。

 しかし、朝の時点のタカトは二人が歌っていたアイナちゃんの曲には興味はあったが、当のガキンチョどもには全く興味が無かったのである。

 というのも、遠目に見ても幼女たちには全く無かったのだ。

 そう、荷馬車の御者台に座るビン子とドッコイどっこいなぐらいに胸が全く無かったのである。

 まぁ、幼女であるから当たり前なのであるが。

 だが、無いモノには興味がわかないのも、また当たり前なのである!

 いくら俺のストライクゾーンが広いとっても貧乳……いや、無乳には希望がない!

 希望って何やねん!

 だが、それがタカトという人種なのである!


 そのためタカトの朝の記憶がイマイチあいまいなのだ。

 ――う~ん……こんな感じのガキンチョだったっけ……?

 タカトは念入りに二人の幼女とビン子を見比べていた。

 ――なんか……ビン子の方が無ければならないモノが無いような気がするんだよな……

「ちょっとタカト! さっきから何見てんのよ!」

「無いと思ってたものが、あるんだヨ……」

 不思議そうに頭をかしげるタカトの様子にビン子の鋭い勘が働いた。

 ――コイツ……絶対に私の胸とこの子たちの胸を見比べていたに違いない!

 咄嗟に両腕で胸を隠し身をよじる。

 だが、そんなビン子も気づいたのだ……

 人間メジャーとして名高いビン子の眼光が、本能的に目の前の幼女たちのバストをコンマミリ単位で測定していたのである。

 まぁ確かに、その能力は巨乳にのみ発揮されるのであるが、ビン子の巨乳の定義が自分よりも胸の大きなものというのだから世のたいていの女性は測定可能となるわけだ。

 ――0.5mm、いや0.7mmだけよ! 大体、胸周りは私の方が勝ってるんだから!

 って、13歳のビン子と5,6歳の蘭華蘭菊を比べたら体の大きさが違うので当然胸周りは違ってくる。

 だが、それにもかかわらず高低差は蘭華蘭菊たちの方がちょっとだけ大きかったようである。

 ビン子……屈辱! ぴえん!

 敗北の涙を浮かべるビン子は自分のシャツの襟首を広げ中を見る。

 ――やっぱりお前たちには風林火山が必要よね……やっぱり欲しい! バキュームカップ!

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