第131話 金貨をどう使うかは俺の自由だ!(24)

 タカトはビン子が取り下げた金貨2枚を受け取ると力なくうなだれた。

 ――あぁ……豚さん貯金箱から一枚余分に銅貨をゲットできるはずだったのに……

 残念そうにカウンターを右手に見るとトボトボと出口に向かって歩き始めた。

 ――いや、今、銅貨をくすねることなんかを気にしている俺は、どうかしている。

 そう、家に帰るまでが遠足だ!

 それまでの間に……何としてでもビン子の口をふさいでおかないと……

 家に帰った瞬間、ビン子がイイ子ぶって権蔵に門外出たことをチクリかねないのだ。

 うーん、何かいい方法はないだろうか。

 しかも、銅貨4枚40円で収まる方法が……

 あっ! ビックリマンチ●コなどどうだろう!

 あれは確か銅貨3枚30円!

 その昔、中のシ■ルだけを取ってチ●コを捨てるという行為が社会問題に……

 もしかして、それってチ●コキラ―?

 それでか!

 人目に付きにくい18禁コーナの片隅に確かあったような気がする。

 えっ? 何? 今は80円になっているの⁉ マジでビックリ! ビックリ! ビックリ!マン■■コ!

 あぁ……ビックリマンチ●コもついに大人のチ●コになったというわけか……

 なんか切ない……


 しかしまぁここ最近、いろんなモノの値段が上がってまいりました。

 ほんとにビックリ! ビックリ! ビックリ万太郎!

 これから貧乏人はどうやって生活したらいいんですかね……

 もしかして、山に入って野ブタのケツでも掘れとでも言うのでしょうか?

 まぁ確かに、オットセイよりかはマシなのか……

 馬鹿いいなさい!

 野ブタを甘く見たらイカンぜよ!

 そう、はるかにオットセイの方がましなのだ!

 お尻コチョコチョのテクニシャンでなんといったってワンコイン! 問題の年齢だって野ブタとさほど変わらない……そして、何よりもちゃんと生きて帰還できるのである。(セレスティーノ談:一人ソロモンよ! 私は帰ってきた!)

 それに対して、普通のイノシシですら油断すれば、あの頑丈な牙で太ももをザクリとやられてプロの猟師でさえ出血多量で死んでしまうのだ。

 特にあの青いリボンの野ブタは超危険である。

 掘るどころか逆にあそこを掘られて出血多量で死にかねない。

 素人のタカトなど瞬殺ですよ! 瞬殺!

 はい! 三途の川の渡し場はこちらですよぉ~♪


 今やタカトはカウンターという渡し場に別れを告げ、外の世界へとつながるドアへと近づいていた。

 だが、物思いにふけるタカトは上の空。

 ――仕方ない……なら、ここは銅貨2枚で買えるチロルチ●コで妥協するか……

 って、妥協するのは君ではなくて、ビン子ちゃんだからね!

 しかし、この時のタカトは、またもや知らなかったのだ……

 値上げの影響でチロルチ●コもまた20円(税抜き)から23円(税抜き)に値上げされるていたことを……

 

 だが、幸運にもこの世界のチロルチ●コの値段は銅貨2枚のまま変わらなかったようである。

 というのも、この世界の最低通貨単位は銅貨10円。1円単位の通貨は存在しないのだ。

 なぜかって?

 えっ? そんなことも分からない?

 いろいろヒントを出してきたんだけどな……


 もしかして……

 それは……

 それは……


 たんに作者が面倒くさかった……だけだとか?


 ピンポ~ん! ピンポ~ん!

 そんなタカトの目の前のドアが、けたたましいチャイムの音を響かせた。

 そして、勢いよく開くドアの隙間から小さき何かが飛び込んできたのである。

 その勢いはまるで初売りセールの広告が貼られたデパートの前に列をなしていたオバチャンのよう。

 そう、ドアが開いた瞬間、ヨーイどんっ!と言わんばかりにイノシシの如く店内へとなだれ込んできたのである!

 どんっ!

 当然、その勢いはタカトにぶつかった。

 

「いててて……」

 尻もちをつくタカト。その反動で手に持っていたはずの金貨2枚が床に転がった。

 この光景、入り口付近で行き先と思惑とが交差したことによって互いに激しくぶつかって転倒しているオバチャンたちそのもの。

「アンタ! そこどきなさいよ!」

 まぁ、初売りセールのあるあるですよね。


 ピンポ~ん! ピンポ~ん!

 転がるタカトの前のドアが再び開いた。

 そこから遅れて入ってきた別の小さき影が床の上でくるくる回る金貨を慌てて両手で拾い上げる。

「ごめんなさい……これ、落ちてましたよ……」

 ――なんていい子なんだろう……きっといいご両親に育てられたに違いない。

 タカトは金貨を受け取りながら、そんな幼女の顔を見上げてニコりと微笑んだ。

「ありがとうね!」


「なに蘭菊あやまってんや! だいたいコイツがボーッと歩いとんのが悪いんとちゃうの!」

 ――なんて嫌な子なんだろう……きっとろくでもない両親に育てられたに違いない。

 ケツをこすりながら立ち上がるタカトは、ぶつかってきた当の本人である蘭華を睨み付け見下ろした。

「あほかボケ!」


 どうやらタカトは病院に行く支度が終わって女店主であるケイシ―に「いってきます」の挨拶をするために勢いよく戻ってきた蘭華と正面衝突したようであった。

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