第55話 第六の騎士の門(3)

 女子学生のスカートをめくってビン子のハリセンで済めば安いものだ。

 だって、ここは第六の門前広場。

 当然、門の側には街の警護を担う守備兵たちがつめる宿舎があった。

 そんな宿舎から女子学生の悲鳴を聞きつけた守備兵たちが、まるでアリの巣でもつついたかのように次から次へと飛び出してくるではないか。


 飛び出してきた守備兵たちの形相は、鬼のよう。

 その剣幕の凄いことといったらこの上ない!


 仕方ない、真昼間の門前広場で女子学生たちの絶叫にも近い悲鳴がいきなりおこったのだ。

 しかも、この事件の黒幕は、街の治安を守る自分たちがいると知ったうえで、女子学生に手を出したのである。

 例えていうなら、それはまるで北海童貞、いや道警の前で、堂々と女子学生のスカートをめくるようなものだ。

 おだづなよ!

 これはまさに自分たち守備兵に対する挑戦である!

 ふざけやがって! この野郎!

 ならば受けてやろう! その挑戦とやらを!

 さっさと捕まえて、牢屋にぶち込んでやるわ!

 そして、そのケツを同じ目にあわせてやる!

 うん? なんかハッテンしてませんか?

 だがすでに鼻息が荒い守備兵たちは、ウッホ! ウッホ! と血眼で獲物を探していた。


 タカトは、その守備兵たちの剣幕に恐怖した。

 このままでは神秘の丘陵地帯にたどりつくどころか、うっくつした牢獄にたどりついて、あられもない痴態をさらしてしまうことになりかねない。

 童貞喪失どころか、オケツのバージン喪失の危機である。


 ――マズイ! 逃げよっと

 タカトはスカートまくりま扇をベルトに差し込むと、荷馬車に戻り何事もなかったかのように手綱を引いた。

 すでに第六の門前広場にいるタカトたちにとって、目的地である第六の宿舎は目の前なのだ。

 だが、そんな宿舎にたどりつくまでには、何人かの守備兵たちの目を掻い潜らないといけないのである。

 ――あそこまで行けば何とかなる!

 いや、何とかならんだろ……


 ということで!

 ミッション:守備兵たちに見つからずに目的地である宿舎にたどりつけ!

 クリアー報酬:S級アイテム


 隊長らしき太っちょの男がタカトたちの荷馬車に近づくと声をかけた。

 この男、名前をギリー=ザブットキャップ。第六宿舎の守備隊長だ。

 「おい! タカト! お前、女子学生のスカートをめくった不審者を見なかったか?」

 定期的に宿舎に荷物を配達するタカトは、守備兵たちと顔なじみなのである。

 そのため、なにかにつけて気軽に名前で呼ばれるのだ。

「さぁ……別に……」

 そう答えるタカトの目が泳いでいた。

 これは、どう見ても怪しい。

 ――コイツ……なにか隠しているな!

 守備隊長ギリーの勘がすぐさま何かを察した。

「オイ! お前、何か隠しているだろ!」

 どきっ!

 瞬間、固まるタカトの身体。

「一体何をおっしゃっているのでしょうか……」

 ゆっくりと腰をずらすタカトのベルトから一枚のウチワが落ちた。

 しかも、それは先ほど女子学生のスカートをめくった「スカートまくりま扇」。

 やばい! 物的証拠を落してしまった! タカト君、ピーンチ!


「これは何だ……」

 その団扇を手に取るギリー隊長。

「まさか、お前……」

「違います! 違います! これは違います!」

 何が違うのかよく分からないが、タカトはとっさにブンブンと首を振って拒絶した。


 だが、不審がっていたギリー隊長の目が、途端に憐れみの色にかわったのだ。

「お前……いくらアイナチャンが好きだからって、アイコラまでしてオカズにしてたのかよ……」

「えっ?」

 どうやら、それが融合加工されたウチワとは気づかなかったようである。

 たしかに、アイドルのパンチらが印刷されたウチワの使い方なんて、限られている。

 パンチら写真を張り付けたウチワの裏面に北海道産エゾアワビなどの写真でも張り付けといて、竹の柄を両手で挟んでぐりぐりと回すと、あら不思議!

 なんとパンチら写真が、ノーパン写真に!

 なるわけないだろうが!

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