洋館とトランプ遊戯(4)[ドローの悲劇]
次は渡辺先輩とらしい。持ちコインは共に十三、さすがと言ったところか。山極先輩が負けている。
「次はお前か」
「はい、自分です」
「今度こそ勝つ」
「何気に負けず嫌いなんですね」
「遊戯は好きだからな」
「成程」
「だがなぁ、、、如何にも今日はカードの引きが悪い」
「自分も中々に引き良くないですよ」
「一抜けでか」
「抜ける直前までずっとジョーカー持ってました」
「それ初めからジョーカー持ってたってことだよな」
「そゆことです」
「俺はジョーカーを見ずに終わった謎だったな」
「それまた不思議なババ抜きで」
「本当にな」
「では、始めましょうか」
「そうしよう」
こうして始まったのだが三回戦まで互いにワンペアかノーペアしか出ずコインの動きも殆どなかった。自分が十四、渡辺先輩が十二だ。
「、、、、引きが悪すぎる」
「お互いにですね」
「今日はカードに嫌われたか」
「ポーカーに嫌われたのかもしれません」
「絶望的だな、、、」
「僕に言わないでくれません」
「俺にも言うな」
「次行きましょう」
「そうしよう」
悲しきかな、四回目はドローだった。
「、、、、、」
「一体どんな遊戯此れは、、、」
「いや、、流石に此れは、、、、」
「「、、、、、」」
沈黙が広がる。互いに気不味い。
「カード、混ぜないか」
「そうしましょう、、、」
カードを混ぜる。
「ポーカーとはこんな遊戯だったか、、、?」
「自分も少し疑っています」
「「、、、、、はぁ」」
「思うよな、、、」
「思います、、、」
二人してチベット砂ギツネの様な顔をしている。
なんて滑稽なのだろう。
「最後、やりますか」
「そうするほか、、、無いだろう」
「ですねぇ」
勿論ドローだった。
「、、、可笑しいだろう、阿呆なのかこのトランプ」
「僕たちの運なんですかね」
「そうなのかもしれん」
周りはまだ終わってない。白熱している。
「俺たちだけか、、、」
「そうっぽいですね」
「チップなしでやらないか」
「良いですね」
暇つぶしポーカーである。
「これでもドローだったら俺は泣くぞ」
「泣かないでください渡辺先輩」
「健一でいいよ。堅苦しいし。皆俺を買い被りすぎだ」
「そんなことはないと思いますけど。では、健一先輩と」
「嗚呼、そうしてくれ。唯のおっさんなんだがなぁ」
「まだ三十代前半ですよね」
「三十路超えてるんだぞ」
「俺らももう二十五ですけど」
「十分若いだろ」
「十も変わらないんですけど」
「五歳も離れるともう話について行けねぇんだよ」
「健一先輩お酒入ってませんよね」
「プライベートぐらいキャラ崩壊を許してくれ」
「嗚呼、、成程」
「おじさん疲れるんだよ、、鉄面は」
「自分で言っていいんですかそれ」
「いいんだよ」
「いいんでしたっけ」
「なんだ、酒いける口か」
「いけますね」
「後で俺の部屋来るか」
「良いんですか、お邪魔して」
「嗚呼、ひとり酒も悪くないが誰かと呑むのも良いからな」
「では、あとで時間決めましょうか」
「おう。んじゃま、ポーカーと行くか」
「はい」
結局、待っている間に碌な役は出ず、ドローが殆どだった。
「ドローに呪われているのかトランプにきらわれているのか、、、」
「どっちもですかね、、、、」
そうして二試合目も終わった。
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