冬の終わり

こうしているうちに佐山が帰ってきた。

「お、おけり」

「ただま、ところで金平糖ってこれだよな?」

佐山の手には自分が望んだものがあった。そう、金平糖の瓶である。

「それだ、よくやった佐山。幾らだった」

「いや、金は良いんだが。なんで金平糖なのかなぁと。お前さん甘いのそんな食わないだろ?」

「時折食いたくなるんだよ。昔付き合ってた奴の好物でな。癖が移った」

「思ってたよりも理由が生々しかったわ」

「失礼だな、答えてやったというのに」

「付き合ってた奴ってことはそれ男だろ」

「目敏いな佐山」

「もう何年の付き合いだと思ってるんだ」

「それもそうか」

高校からの付き合いなのだからもう八年程度経つのか。何気に長いものだ。

「もうそんなに経つのか」

「そうだよ。昼炒飯でいいか」

「おー」

「キッチン借りるぞ」

「美味しく頼むわ」

「不味くしてやろうか」

「外に放り出してやろうか」

「冗談だ」

「宜しい」

そろそろ洗濯物を干そう。乾かなくなってしまう。


こんな平和な日々を過ごしていたら直ぐに春になった。

そう、平穏という文字が消えた春に。

平穏を壊した春に。

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