ー 無間 無価値 思考 ー


誰かが

泣いている

扉の向こうで

何故泣いているのだろうか

如何して君は泣いているのか

如何したら泣き止むのだろうか

扉を開けたら泣き止むのだろうか


否、泣き止むことはない

己がそれを一番知っている

未来永劫泣き止むことはない

泣きやめないのだ、この子供は


この小さな子供の涙は止まることを知らない

ずっとずっと只己が悪いのだと泣き叫ぶのだから


―現在―


「はぁ、、」

溜息が溢れる。

果たして小説とはこのようなもので良いのだっただろうか。

己には矢張り文才なんて言うものは無いのではないだろか。

そんなくだらないことを考えながら。一人の人生を己が書いたところで誰も読まないだろうに。よっぽど彼女のほうがロマンチストで文才があったように思える。お嬢様だから当たり前かもしれない。

朝おいてあった飲み物はすっかりぬるくなってしまった。

嗚呼、そうだ。今日はなんだかカウンセリングの日だった気がする。せめて顔ぐらい洗おう。

佐山から届いた荷物には本が入っていた。自分がずっと読みたがっていたものだ。ありがたい。

だが彼奴に読みたがっていたこの本の話なんてしていただろうか。

全く記憶にない。酒でも呑んだときに話したのだろうか。あり得はする。大いにあり得てしまう。余計なことを喋っていないのを祈るばかりだ。

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