部屋と紙(2)[ストロングかサワーか]
水が滴る、髪が濡れる、床を濡らす、床は先客が居たためにすでに濡れているというのは言ってはいけない。暖かい水が体温を変えていく。そもそも逆上せるなよと言われたが今日は湯船に浸かるつもりはない。
年末調整も終わり、冬も深まっている。早く出て着替えなければ風邪を引いてしまう。
ふと力が少し抜け壁に手を付く
早く、タオルで髪を拭こう。酔いが回っているのだろう。思考が遅れている。
タオルを手に取る
布が水を吸っていく
寒い
嗚呼、エアコンを入れていなかった。佐山に入れさせよう。
ズボンを履く
シャツを取る
タオルを首にかける
パソコンのキーボードを押す音がする。彼奴は自分よりも社畜なのではないかと時折思う。恐らく仕事が恋人のタイプだろう。
「お、でたか。おかえり。」
「佐山、寒い、エアコン」
「俺は下僕か」
「いいからつけろよ」
「お前は上着着て髪乾かせよ」
「ドライヤーどこにある」
「そこにあるよ」
「そうか」
佐山がエアコンをつける。リモコンはちゃんとあったらしい。
上着を着て乾かす。佐山はストロングを呑んでいるらしい。
「ストロングか」
「ストロングだ」
「ビール一つ取ってくれ」
「もう二本目かよ」
「俺の家だ」
「そういうことじゃねぇんだがなぁ」
「美味いだろ」
「まぁな、否定はしない。ほれよ」
佐山が僕に一つ投げる。
「ありがとさん」
「書類やるか」
「俺は企画書だ」
「イベントだっけか」
「お泊り会をご所望だそうだ」
「ぷち旅行か」
「ランキング上位者が殆どだな。今季成績良かった人だとさ」
「なるほどな。俺とお前は確定か」
「企画側だしな」
「幹事だもんなぁお前は」
「お前は一応副幹事だろ」
「まぁな」
「ほれ、基本企画だ」
「どれどれ」
少し郊外にあるとある建物だ。自分の親戚につてがあることを思い出し借りることにしている。相手にも了承は得ることができた。ある意味楽だった。有り難いものだ。距離もそこまでない上に移動費が余りかからない。近くには店もある程度あるような場所だ。
「よく見つけたな」
「ちょっとしたつてだ」
「流石王子人脈がある」
「よし、つまみは要らないんだな」
「いるからやめてくれ俺が悪かった」
「本日二度目だな」
「揶揄い甲斐がある」
「卵はいらんな」
「嘘だ、いる」
「じゃぁ取ってこい」
「ほいほい」
「皿は二段目の使え、深皿だ」
「なるほどな」
「煮卵にはサワーとストロングどっちだと思う佐山」
「ストロング」
即答したぞ此奴
「即答か」
「サワーよりストロングが好きなんだよ」
「酔っ払いめ」
「酔ってねぇって」
「本当かよ」
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