第5話

 そんなこんなでコンビニで買ったお酒を飲み、何か色々話をしたりして、さぁさすがにそろそろ寝ないと明日起きれないぞ、ってことになってですね。


 それじゃ私は毛布でもお借りして床に寝ますね、って言ったんですけど、「いやいや、痛いだろ。ベッドで寝ろよ」ってなるわけですよ。おお、レディに優しい。彼はオラついた小池徹平似の俺様ですけど、基本的に優しいのです。口は悪いけど、優しくて頼れる上司なのです。


 てことは小池リーダーが床で寝るのかな? と思いましたが、そんなことはありませんでした。


 というか、よくよく考えたらベッドめちゃくちゃデカいんですよ。

 これもね、ほんと恥ずかしい話なんですけど、私、いいホテルってベッドもデカいもんだと思ってたんですよ。とんでもない田舎娘ですよ。出張で泊まるような安いビジネスホテルのベッドは小さいけど、いいホテルってベッドも大きいんだ! って。まぁそこもビジネスホテルではあるんですけど、ちょっとお高めのホテルだったんですよ。プランの関係かな? よくわかりませんが。


「俺も寝る。お前も寝ろ」


 さんざんね、言ってるんですよ、秋田で彼氏が出来たって。とても仲良くやってますって。さんざんのろけて来てるんですよ。そういうのもあって、安心しまくってたのもあるのかもしれません。私は彼氏持ちなんだから、好き好んで相手のいる女に手を出すような酔狂な男もいないだろう的な。


 さすがにどうなんだろう、それはちょっとおかしいのでは、という気持ちで「いやでもそれはちょっと」と言いました。


 すると小池リーダーは言うわけです。


「何もしないって」


 そうか、何もしないのか!

 しないなら、大丈夫だな!


 私はあんまり人を疑いません。

 いや、余程嫌いな人とか、信用ならない人は疑いますけど。

 だって小池リーダーは私の元上司で、仕事の面ではめちゃくちゃお世話になって、頼りになる人なのです。かつてねずみ講にハマった彼氏と別れる際にも背中を押してもらったり、ヤバい時は俺が助けに行くからなんて言って車内で待機してくれた人なのです。


 その人が、何もしない、と言っているわけですから。


 とはいえ、あの浴衣みたいなやつには着替えず、服のままベッドに入りました。さすがに向かい合って寝るわけにいきませんので、ぎりぎり端っこの方で、背中を向けて寝ました。


 と。


「何でこっち向かないの」


 背後でそんな声が聞こえます。

 かなり近いところまで小池リーダーは来ていました。デカいベッドといっても、所詮はベッドです。数メートルもあるわけがありません。ごろん、と寝返りを打てばあっというまに距離を詰められます。


 ここでやっとどこかで聞いた、


「何もしないって言ったのに、何かされた」


 みたいな先人達の話を思い出しました。

 私に限って、小池リーダーに限ってそれはないと思っておりましたが、全然そんなことはなかった模様。


 えっ、もしかして何かされるのか、私!? 私が!?

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