第4話

 それから数年が経ち。

 数年、なんて書きましたけど、まぁ普通に一年とかですね。


 良夫さんとお付き合いが始まって数ヶ月です。

 その頃の私達は、半同棲みたいな状態で、私のアパートに良夫さんが転がり込んでる(言い方よ)状態でした。


 そんな中。


 帰省です。

 その頃の私は、長期休みの度に割としょっちゅう帰ってたんですね。まぁ子どももいませんし、結婚してるわけでもないし、そりゃそうなんですけど。


 その時も、小池リーダーと、というか、かつての小池班で遊ぼう、という話になっておりました。もちろん良夫さんにもその旨伝えております。何せ疚しいことは一つもないのです。また今年も先輩(女性)の家にお泊まりして、皆でカラオケに行ったり、朝まで飲んだりしてワイワイするのです。


 そう思っていたのですが。


 いや、途中まではそうだったのです。

 けれども、その遊ぶ日が私が秋田に戻る前日で、午前中の飛行機に乗るなら千歳でホテルを取った方がいい、という話になったのです。それも一理あるな、と思いましたし、何せ小池リーダーは何かと頼りになる元上司なのです。その上司がそう言うのですから。


「俺、車出すから、空港まで送ってやるよ。部屋も取っておいてやる」


 ありがたいお話です。

 それじゃお言葉に甘えて。


 もう賢明な読者様は何となく想像がついているかと思います。


 はっきり言いましょう、私は基本的に無知です。異性からモテた経験もなく、そういう対象で見られたこともほぼありません。こっちがどんなに好意を抱いていても、女友達で終わるパターンなのです。当時24でしたけど、その頃にはもう完全に「私はそういうのとは無縁なんだ」と思い込んでいますから、その辺の危機感も0です。彼氏がいるのにね。


 なので、さんざん皆で遊び、そろそろ解散という段になって、


「じゃ、行くか」


 となぜかホテルにまで小池リーダーがついてきてやっと、何でこの人も一緒に来たんだろう、ってそこで初めて何かおかしいな、と思いました。


「小池リーダーも部屋取ってるんですか?」


 朝イチで送ってくれるという話だから、もしかしたら別に部屋を取っているのかも。


 そう思いました。

 

「いや? お前の部屋で俺も寝る」


 成る程。

 いや、成る程って思うところではないんですけど、営業時代はこういうのが結構あったのです。何人かで出張に行くと、いつも利用するホテルの廊下に地図をぶわーって広げて作業して、そんで疲れたら誰かの部屋に転がり込んで雑魚寝するみたいなのが、よくあったのです。


 そういうやつかな?


 そう思いました。

 大学時代も宅飲みなんかをすると、男女関係なくそんな感じになったもんな。まぁ朝まで飲んじゃったら車の運転も駄目だろって話なんですけど、その時の私はマジで寝て起きたらアルコールってキレイに分解されると思ってたんですよね。そういう点でも完全に馬鹿でした。

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