第3話

 そうそう、読んでくださった方はピンときたかもしれませんが、『そこそこカフェ』こと『カフェ『TWO BOTTOM』でそこそこのコーヒーを。』の第一豆の6~7杯目に出て来る『梅川リーダー』のモデルが彼です。


 当時私は大学時代から付き合っている彼氏がおりまして、学生時代はまだ良かったんですけど、卒業~社会人の頃にはちょっと彼のだらしなさとかそういうのがチラついてきていて、好きなんだけどもうちょっとしっかりしてほしいな、みたいな、そんな感じでした。どうしても周囲には営業でバリバリ稼いでいる先輩方がいるわけですから、何かそっちの方が(好きとかじゃなくて)恰好よく見えてしまうというか。

 彼は学生時代、勉強以外のことに打ち込み過ぎて卒業がギリギリになってしまい、新卒で就職出来なくて、そういう計画性のなさとかもちょっとどうなのかな、でも好きだしな、みたいなところへ、例のねずみ講事件ですよ。この辺はもう『そこそこカフェ』を読んで下されば。もう本当にあのまんまの話なので。


 それで、小池リーダーに助けを求めたわけです。

 そのくだりも小説のまんまです。こっそり電話をかけてワンギリし、向こうからかけてもらって席を外し、逃げる、っていう。


「お前それ、別れた方がいいぞ。別れ話するならついてってやろうか?」


 そんなこともね、言われたりして。

 実際、ついてもらったというか、もしもの時のために車の中で待機してもらいました。ほら、逆上して殴られたりとか、そういうの怖いじゃないですか。まぁ、そんなことはなかったですけど。


 なんていう経緯があったら、もしかしてそこからお付き合いとかするのかな? って思うじゃないですか。いや、私は思いました。けれども、そんなことはなく、それでも、ちょっと距離の近い上司と部下みたいな感じでした。というのも、その後すぐに異動の話が出てしまい、本社の方で研修に行かなくてはならなくなったからです。もし札幌に残っていたら、もしかしたら付き合っていたんじゃないかな、と思うような感じはありました。そう思っていたの私だけかもしれませんけど。


 そうこうしているうちに異動です。

 秋田県なんて、地図でしか見たことがありません。あきたこまちっていうお米を作っているところで、なまはげという鬼がいる、雪がめちゃくちゃ降る、それくらいのことしかわかりません。


 秋田に異動する前、札幌に戻って小池リーダーを含む数人でお別れ会みたいなのもありました。秋田に行っても実家は北海道にあるわけだし、帰省した時には連絡しろよ、なんて話もして、実際、夏に帰省した際には会いに行ったりもしました。その時は女の先輩の家にお泊まりさせてもらって、皆で朝まで飲んで、みたいな感じでした。北海道の夏はやっぱり涼しくて、夜は薄手のカーディガンが必要だったりして、「秋田は夜も暑いんですよ」なんて言ったら、小池リーダーは「考えられねぇ」なんて言って笑ってましたね。まだ営業でバリバリ稼いでいて、不規則な生活のせいかちょっとぽっちゃりしてきてましたけど、顔は相変わらずオラついた小池徹平でした。

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