4-24 強制イベント

 ブルシュパーティになにが起こったのか、一目瞭然であった。

 なぜ逃げなかったのか、彼らの目的は討伐ではなくルートマップのはずだ。それなら、ヌシを確認した時点で引き返すのが最善だろう。

 だが、転がっている壊れた武器を見るに、彼らはここで戦ったようだ。そして、衣服の切れ端、荷物が散乱している惨状から、その末路は誰が見ても明らかである。


「引き返すぞ。物音を立てず、一人ずつ後ろに下がり、通路まで戻れ」


 誰かが口を開くより早く、ゼフは極めて小声で、かつ、余計なことは言わずに指示を出した。今はブルシュパーティがどうしてそうなったかを考えるより、まずは安全確保が先である。

 しかし、セインたちが後ずさった途端、宝石のような岩がゆっくり、けれど的確に行く手を阻むように動いた。

 互い違いにある岩によって入り組んだ場所。

 ここへ来る際は、目隠しになってちょうどいいからと、その陰に隠れながら広場まで進んできた。


「……ちっ! やられた、罠だ」


 そう、すでに彼らのテリトリーに侵入していたのだ。岩陰に隠れているつもりが、その入り組んだ道のり自体が、おびき寄せる罠だったのだ。

 考えてみれば、ここへの入り口とて、ヌシの身体の一部だとツクが断定していたのだから。


『すまぬ、わしのミスだ。すぐに調査するべきだったのじゃ』


 ツクの言葉に、セインは首を振った。全員が、ヌシへの到達目前で、通常とは違うテンションだったに違いない。そして、ブルシュパーティに起こったことも、これで納得がいった。

 戦いたくて戦ったのではない、強制的にそういう状況になってしまったのだ。


「周りにたむろしてるザコの数もやばいが、ヌシはもっとやばいな」


 ゼフがどこか投げやりに話す。おそらくヌシにはこちらのことはバレているが、いまのところいきなり襲ってきたりはしないようだ。逃げられないと踏んで、こちらの様子を窺っているのだろう。

 雑魚は単純に気が付いてないだけのようだが、戦うとなると全部相手にしなければならない。


『セイン様……』


 ゆらの声に、セインが頷く。


「ゼフさん、雑魚を無力化したらヌシをなんとかできます?」

「なんだと? どうする気だ」


 ヌシがいる限りここからは逃げられない。なら、もう戦うしか手がない。あのブルシュも、そう判断したから戦ったのだろう。

 いつまでもぐずぐず嘆いていても仕方がないのだから。

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