4-13 捜索クエスト
「……サキ、もういいよ」
目の前で仁王立ちになっているサキの肩に手を置くと、確認するように一度振り向いて横に移動した。
彼らに敵意はない、少なくとも今は。コウキの熱が、彼らに向けられてないのが何よりの証である。
「……捜索チーム?」
セインは彼らの装備から、開拓依頼を受けたハンターか、同伴している討伐パーティかと考えていたので、つい聞き返してしまった。
彼らは、討伐から採集までなんでもやる銀ランクのハンターだった。いわゆる中堅の古株というやつだ。
稼ぎもそこそこいいので、装備はいい物を揃えているようだ。
捜索クエストは思った以上に危険が伴う。なぜなら依頼者のハンターが、帰還できない不測の事情がそこにはあるからだ。予想外の強敵がいたり、罠があったり、未開発のルートに入り込んだり。
それらを救出したり、亡きがらを回収したりするわけだから、確かに大変だろう。
「捜索クエストは、そのかわりコレがいいんだよ」
そう言って、指で輪を使ってコインの形を作った。
彼は、ゼフと名乗った。パーティのリーダーで中年に片足突っ込んだくらいの年齢だ。背も高く体格もいい、いかにも前衛といった風体だった。赤毛の短い髪、頬にある傷、太い眉が特徴的である。
他のメンバーは、弓使いと魔法使いだった。彼らも銀ランクとのことだ。
「あれ、でも依頼料ってそれほどじゃないと思ったけど」
万一の自分のために申し込む保険、いわゆる捜索クエストの説明は受けた。依頼書の難易度によって変化はするものの、この鉱山程度なら依頼料は大したことなかったように記憶している。
「その通り。だが、無事に帰ってきたらどうなると思う?」
「……あ、ああ、なるほどそうか」
クエストが発動されなくても、依頼料はかえってこない。そのお金はギルドにプールされる。
己に見合った、もしくは格下の依頼を受けるとき、ハンターのほとんどは捜索クエストを依頼しない。けれど高ランクになればなるほど、更なる上位を目指せば目指すほど、依頼料は跳ね上がり、そして需要もあるのだ。
基本的に捜索クエストを受けることができるのは、遭難者のクエストランクと同等か、推奨されるのは一つ以上上のランクのハンターである。
「二次遭難も稀にあるから、危険な仕事ではあるけどな」
それでも人助けの依頼であり、救助に成功すると貢献ポイントや、ペナルティーを解消する贖罪ポイントを稼ぐことができる。
それは確かにいい報酬ではあるが、ビギナーであるセインたちにはまだまだ無理そうである。
セインたちは彼らとともに地上に上がって来た。
「……うう、三日ぶりの地上だ。やっぱ外はいいな」
三十路のおっさんが、おっさんっぽい声で呻きながら身体を伸ばしている。それを横目で見つつ、セインは受付の青年に帰還の報告をした。
「ギルドに報告にいくのか?」
「ああ、一応……他にも気が付いて報告してる人がいるかもだけど、放っておくのも気持ち悪いし」
ゼフたちも受付で報告を済ませ、立ち去ろうとするセインに声を掛けた。
「そうか……じゃあな。こっちもいい返事待ってるぜ」
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