第33話 時間稼ぎ《かせぎ》の会話と光の洪水《こうずい》


「実は初めてじゃないんです。似たような人に会うの」ぼくは真面目なふりをして英雄狩りと話を始める。

 チラリと穴の方を見ると、オオムラサキの羽を持ったフェアリーを先頭にフェアリーたちがぞろぞろとしゃべらず羽は広げているが羽ばたかずにスーと20メートル先の結界の内側に行き、結界に電撃を放ち始めた。今の時点で、100匹以上のフェアリーを中心とした妖精たちが視界の中にいる。

「なんだ?時間稼ぎは無駄だと言ったはずだが? まあいい、話に付き合ってやる。それより、視線誘導はもうきかないぞ?」英雄狩りが微妙びみょうにぼくの事をうたがわしそうにしながら言った言葉に、ぼくたちは(((((え?)))))と言う顔をしてしまうが何事もなかったように。

「学校を卒業した後3年ぐらい正社員をした後最低限の生活費と本代を稼ぐアルバイト生活を15年ぐらい続けたんですけど、いいかげんに心の傷をいやすだけの社会にまったく貢献しない生活を止めようと小説を書く事にしたんです。エンターテインメント的に劣るおとる文学のような小説ではなく、ぼくの前世の国で実写よりずっと高度なエンターテインメントであるアニメになりやすいライトノベルと言う分類の小説をね。でも新聞奨学生として働きながらかよった小説の学校で最初に書いた短編小説は、文学みたいな小説だったんです。それから1年新聞奨学生として働きながら小説の学校に通ったんですけどうまくなるのは、短編やショートショートと言う短編より短い小説ばかり、それも文学みたいなのか四コマ漫画みたいなのしか書けなかったんです。小説の学校は2年あったんですけど2年目は就職の準備みたいな授業も入ってくるし技術的には1年目と大して変わらなかったので辞めて、自分の目標にしているライトノベルの長編の絶対新人賞で入選するような小説の設計図プロットを作る時間を取る事にしたんです。でも階段をとばすような方法はうまくいかず、そのうち下の階の人の物音がうるさいような気がしてきたんです。おそらくそんなに長い期間ではなかったのではないかと思いますが大家さんを巻き込んで文句を言いに行ってもいつも出てこなかったので、ある日騒音がして下の階の呼び鈴を押しても誰も出てこなかったのでベランダの窓ガラスを割って部屋の中を見てみたんですけど誰もいなかったんです。どうやらぼくの頭が作り出した騒音の文句を言いに誰も帰ってきていない部屋に文句を言いに行っていたようで、すぐに警察に自首したんですけど呼び出された父親がお金を払って示談にしたようでぼくは精神病院にしばらく入院していました。退院した後もしばらくは就職の事も小説のプロットの事も考えず、小説の学校に行く前の自殺騒ぎとの合わせ技で出た障害者手帳の2級と生活保護で暮らしていたんですけど、この生活保護と言うのがくせ者なんです。生活保護は住める家賃やちんが決まっているので同じアパートには同じような生活保護の障害者がいるようで、聞こえもしない足音を根拠に下の階から『ガンガン(中略)ガンガン』下の階の天井てんじょうを昼夜24時間関係なくたたきまくるおじいさんが引っ越してきたんです。はじめのうちは苦情の来ていた部屋の引き戸を開けっぱなしにしたり夜中に起きていないようにするためにテレビの録画の機械を買ったりしていたんですけど、大家さんや役所への苦情や下の階から『ガンガン(中略)ガンガン』下の階の天井てんじょうを昼夜24時間関係なくたたきまくるのが、ぼくの寝ている時や歩いていない時にやってるんです。それを管理会社に言ったんですけどどうやら下の階のおじいさんは精神病院に行っていない自覚のない精神病らしく、管理会社はそのおじいさんのやっている事よりもぼくが精神病だから悪いみたいな態度で、ぼくは下の階からの『ガンガン(中略)ガンガン』下の階の天井てんじょうを昼夜24時間関係なくたたきまくる音をノートに記録につけ警察に来てもらいそれでも1年間下の階からの嫌がらせの『ガンガン(中略)ガンガン』はおさまらなかったんです。まあおさまった後も納得していないようであやまってくるどころか外で会うとにらんでくるし時々関係ないタイミングで『ガンガン(中略)ガンガン』やってくるんですけど、ぼくの部屋にいる時1年間で4回ぐらいのペースまでおさまっていました。深夜1時間おきに『ガンガン(中略)ガンガン』夜中中やられていた時に比べたら、ましですね。でも自分がやったような事でまあ僕は人のいない時だけだったみたいですけど、やられてみると話の通じない人間に対する恐怖をたっぷり味わいました。生活保護では簡単に引っ越しできないんです」ぼくは英雄狩りの方を見ながらその後ろの妖精たちをチラリと確認するが、内側で結界に攻撃している妖精たちは1000匹を超えていた。

「なるほど、私もフードファイターや英雄狩りの使命がなければそうなっていたかもしれないな……。所で、もう小説は書いていないのか?」英雄狩りがぼくに感情移入しているのか、優しい声で言ってくる。

「いいえ。障害者手帳が3級になったころ、病院のOT《オーティ》活動に参加するかB型の作業所に行くかどちらかに行けと役所に言われて、B型の作業所に通っていたんですけど世界的に新型コロナウイルスが流行して在宅勤務で自分にプラスになる事をしろと言われたときに小説をまた書き始めました。書き始めるとスラスラおもしろいのが書けるんです、まあ小説の設計図プロットは書けるようになっていなかったんですけど。それでもほぼ確実に小説の新人賞取れるんじゃないかと思えるものが書けて送って見たんですけど、『キャラクターが縦横無尽に動き回る様子が楽しいファンタジー作品』と言う評価はもらえたんですけど一次選考にも引っかからなかったんです。どうやら描写が少なすぎてイメージがしにくいのと構成、小説としての組立が悪いらしくて、取りあえずわかる描写を追加して他の所にも送ったんですけど、最初に送った所よりも評価が悪かったんです。それで2回、合計で3回締め切りに間に合わせようと送って、もうダメかも?と思って締め切りは完成した時に締め切りの所に送ろうと決めて、描写を追加して最後の方に敵を追加したんです……。あれ? 小説の内容が思い出せない! 記憶がかいざんされてる!」とぼくが、驚愕きょうがくを英雄狩りと共有しようとすると。

「またそれか! お前が創造神の分身である可能性は、99パーセントない! この愚か者め!」と英雄狩りがしゃべっている内に、内側で結界破りをしていた妖精たちと結界の外にいた妖精たち合計3500匹以上が競い合うように中には電撃を放ちながら英雄狩りから半径5メートルの半球状に陣取り、それぞれが仲間たちを巻き込みながらブットイ電撃をあらためて放ち始めた。

 ぼくとフィリオーネとリリオーネとフロレーテとソフィアお母様は、急いでその攻撃の3メートル外に避難する。

 テレビを見る時はテレビから離れてみてね?と、言いたくなるような光景だった。

 真空で物音が聞こえない中、妖精たちの放つブットイ電撃がすべてくっつき半径5メートルの光の球のようになっている。


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