第32話 空間を切り離し外の英雄との縁《えん》を切る結界と、希望のフェアリー


〈もっと自分の感情をこめれるセリフの方がいいんじゃない? たとえば『フェアリーなめやがって!ぶっ殺してやる!』とか〉とぼくが声に出さずに提案すると。

「「フェアリーなめやがって!ぶっ殺してやる! フェアリーなめやがって!ぶっ殺してやる! フェアリーなめやがって!ぶっ殺してやる! フェアリーなめやがって!ぶっ殺してやる! フェアリーなめやがって!ぶっ殺してやる! (中略) フェアリーなめやがって!ぶっ殺してやる!」」とリリオーネとフロレーテが、なんとか感情を爆発させて収納魔法を開こうと色々な言い方でセリフを繰り返し続ける。

 それを聞いているソフィアお母様が、「フェアリーって思ってたより物騒ぶっそうな種族なのね……」と意外と呑気のんきにコメントする。

「いえあれは英雄狩りの支配している空間の中で収納魔法を開こうとすると、感情を爆発させて一時的にでも英雄狩りの意志力を超える必要があるっぽいんです。それにあのセリフは……」と、ぼくがフェアリーたちの名誉を守ろうと言葉を続けようとすると。

「わかってるわかってる! フェアリーの事を悪く言ってほしくないのよね! わかってるから!」とソフィアお母様が、ニコニコしながらぼくの言葉をさえぎってくる。

「まあ、それでいいです……」と話をしている内に、英雄狩りのまっているあたりを中心に英雄狩り一人分にしては多すぎる量のドングリが球状に盛り上がりその盛り上がったドングリが交差点や建物を円状の結界のすみに押し流して中心部からドングリを無くしていき、英雄狩りが姿を現す。

「お前たちの意志が固い事はよくわかった!」と言いながら英雄狩りは収納魔法から長さ1メートルほどのロングソードを取り出し、空中にいるぼくらを周りの空間ごと引き寄せリリオーネにつりさげられているぼくの右の手首から先だけを切り飛ばし。

「さあ! 続けていいぞ?」とだけ言ってぼくの観察をはじめた。

「あぁぁぁ……」と言って脂汗を流しながら右腕をおさえて痛みと血を止めようとするぼくに、フィリオーネがすぐ飛んできて軽症治療の魔法で血を止めてくれる。それと同時にリリオーネとフロレーテが、ぼくとソフィアお母様を地上に下ろす。

「大丈夫? アルヴィン?」フィリオーネがぼくの顔を見ながら心配そうに聞いてくる、英雄狩りに背中をさらした状態で。

「ごめん! なれてなくて。まだなくなったはずの右手首が痛いような気がするけど、すぐ慣れるから。ちょっと大げさに痛がってるだけだから! それより英雄狩りさん!誤解なんです! タイミング的に話し合ったうえで罠にはめるために視線誘導をした様に見えたと思いますけど、話し合いがこじれたからぼくを視線誘導に使われたんです! 本当はぼくが死ぬ事で話をまとめようとしてたんです!」ぼくは脂汗を流しながら血だらけの左手で右腕をおさえ、必死に英雄狩りにうったえかけるとソフィアお母様がすぐに「そんなのだめよ!」

 その言葉のすぐ後に英雄狩りが「誰が、いけにえを要求した! 英雄狩りとしてやっていける事の証明に、英雄の力で戦いその結果として英雄を一人か一匹、間引けまびけと言ったんだ! それにお前は自称創造神の分身だから死んでも大丈夫だと思っているようだが、いくら英雄が物語の主人公の能力と言われているからと言って自分自身が創造神だと言う因果律とはつながっていないぞ? あまりにも自分に都合よく因果律を引き寄せすぎて自分を特別だと勘違いするのは、英雄全体の特徴だぞ?」と心配するようにぼくに言ってくる。

「そうよ!それに生まれたばかりなのに他の家の子に転生なんてダメよ?」とソフィアお母様は違う方向の意見を、真面目に言ってくる。

「じゃあ転生先を選べるようならまたソフィアお母様とルークお父様の子供として生まれるように頼んでみますから、あんまり転生の時間がかからないようにお母様とお父様もがんばってくださいね?」とぼくもソフィアお母様の要望に真面目に返す。

「わかったわ! 責任重大ね!」とソフィアお母様、真面目な表情がりりしい。

「いや、だから、転生できる保証はないんだぞ? すぐに転生できるぐらいの重要人物だと思っているのは、お前の思い込みなんだぞ?」英雄狩りが、主張しゅちょうを変えようとしないぼくを困ったように見つめる。

〈そうよ! たかだか前前世フェアリーの神に、そんなにチャンスが与えられるとは思えないよ!〉とフィリオーネが内緒にする事を覚えていて意思疎通魔法で言ってくる。

〈それなんだけどフィリオーネが最初にぼくを見つけた時と今だと、どっちの魔力の方がフェアリーに近い?〉ぼくも意思疎通魔法でフィリオーネに聞く。

〈それは……〉フィリオーネが言いよどむ。

〈リリオーネは? ぼくの魔力どっちの方がフェアリーに近い?〉ぼくは、リリオーネに視線を向ける。

〈もちろん今だよ!〉リリオーネは何も考えずに答える。

〈ぼく思うんだけど、フィリオーネがぼくを見つけて観察をはじめた時にフェアリーの加護がぼくに着いたり意思疎通魔法で感情がつながったりフェアリーの羽をはやしたりでじょじょにフェアリーの魔力に似てきただけで、本来は性格が似てるからフェアリーの魔力のように見えただけなんじゃないかって。創造神はフェアリーを優遇しているように見えるから、創造神の性格や魔力はフェアリーに近いんじゃないかって。それに『1000年ぐらい転生を繰り返すうちに成長してふんべつがついた』なんてたとえ話が出るぐらい、かけ離れた魔力だったと言う言い方もできるんじゃない?〉ぼくは、フィリオーネとリリオーネとフロレーテを見回しながら反応を見る。

〈……〉とフィリオーネ、ぼくから眼をそむけてしまう。

〈確かにアルヴィンの魔力はじょじょにフェアリーに近くなってきたけど、じゃあ前前世フェアリーの神じゃない?〉とリリオーネ、とまどったようにしている。

〈だからって、死んでためすなんてダメよ! 英雄狩りが言うように転生できる保証はないんだから!〉とフロレーテ、ぼくに怒りながらも話をまとめる。

〈じゃあ結界破りしている妖精たちの援軍が来るまで、どうやって時間稼ぎする? ほら!フィリオーネもこっちむいて! 意見を言って!〉ぼくは、フィリオーネとリリオーネとフロレーテを見回して意見を募る。

〈このまましゃべっていればいいんじゃない? たった1人の英雄が張った結界なんてすぐに魔力切れになるでしょ?〉とフィリオーネ、ぼくの前前世がフェアリーじゃない可能性について思う所がありそうだが明るく答えてくれる。

〈〈〈なるほど〉〉〉ぼくとリリオーネとフロレーテの言葉が重なる。

 そのぼくたちが話し合っている反応を観察していた英雄狩りが、「外から結界を解除して助けが来る事を期待しているなら、無駄だぞ? こちらと外の空間は切り離してあるからな、空間切り離しに使っている魔力も内側にある、いくら外から攻撃しようと無駄だ! それにただ空間を操作しているだけとは違うぞ?ついでにお前たちと外にいる英雄のえんも切ってある、縁を切ってあるからお前たちを外の英雄が助けに来る事もできない!」とまったく勝ち誇る事なく事実と思われる事を述べる。

「「「「え?」」」」とぼくとフィリオーネとリリオーネとフロレーテ、間の抜けた声が出てしまう。

「英雄狩りって、そこまでできるの?」と言うぼくの驚愕きょうがくの言葉に、「そうよ……」とソフィアお母様が暗い声で言う。

 そのソフィアお母様のセリフを聞いた後英雄狩りに視線を戻すと、英雄狩りのぼくから見て右ななめ後ろ3メートルの位置にメンテナンスホール(旧マンホール)ぐらいの穴が開き中からオオムラサキの羽を持ったフェアリーが羽を広げた状態で羽ばたかずにスーと地上から30センチの位置まで上がりゆっくり全方位見回しあわてながらも声を出す事もしないでまたスーと穴の中に戻っていった。

〈あれ!あれ! 外から下水道を通って助けに来たんじゃない?〉とリリオーネ、うれしさがほとばしっている。

〈地面の下は、空間の切り離しをしてないみたいね?〉とフロレーテ、笑いそうなのをおさえている。

〈それよりも隠密行動は格上にはきかないんじゃ?〉とぼく、英雄狩りの方を見るふりをしてフェアリーが出てきた穴を見る。

〈感知しようと思えばね! それより時間を稼がなくちゃ!〉とフィリオーネ、楽しそうにしながら話をまとめる。


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