第27話 世界樹キルヒアイスと英雄化


 転移魔法の光の球から出ると、世界樹になる途中のキルヒアイスの根元から10メートルの位置に出た。

「ほら!ふみつぶされるよ! 早く離れて!」さきにこちらに来ていた妖精たちと共に、素早く転移魔法の光の球から離れて後続を観察する。

「転移魔法の光の球から出たら、あとからくる子のためにすぐに離れてね~~!」転移魔法の光の球から妖精たちや男たちが出てきている間中、同じ言葉を繰り返す。

「転移魔法の光の球から出たら、あとからくる子のためにすぐに離れてね~~!」

 しばらくまって新たに出てくる妖精がいなくなったころ、とつぜんジョンとジェイムズの気配が変わった。

「な!」ぼくが驚愕してジョンとジェイムズを見ると。

「フェアリーの神が少し魔力を返してくれたようだね、総魔力量の四分の三ぐらいかな?」とジョンさん。

「ぼくの8層しかまとえない魔力では相変わらずジョンさんとジェイムズさんの魔力は感じられないんですけど、気配と言うか、戦ってはダメな感じと言うか」

「ああ、私とジェイムズの魔力は英雄に分類される魔力なんだ」とジョンさん。

「つまり英雄でも魔力が半分以下になれば、英雄とは言えない状態になると?」

「そうだね」とジョンさん。

 そんな話をしている間に今度は、ぼくとフィリオーネとリリオーネとフロレーテの魔力の質が変わった。

「え?ぼくも? 魔力が使いやすくなってる? 魔力の層を14層まとえるようになってる!」

「え? 英雄になるだけで、まとえる魔力の層の数が変わったの? 普通は変わらないんだけど?」とジェイムズさん。

 周りの状態もいつの間にか変わっている、キルヒアイスはさらに大きく、辺りからはダンジョンの中のような魔力が感じられる。

〈キルヒアイス!世界樹になれたの?〉

〈なれたよ!アルヴィンも英雄化おめでとう!〉

〈ありがとう! でも、ジョンさんとジェイムズさんもだけどキルヒアイスの魔力もよく分からないや!〉

世界樹になったキルヒアイスの身体全体はぼんやり光っていて他の世界樹とは違う神秘的な雰囲気をまとっている。

 魔力精密感知とマナ精密感知と幸運さ精密感知の魔法で世界樹になったキルヒアイスと周囲を見ると、フロレーテ迷宮の世界樹のように虹色に輝く雪のような濃いマナが世界樹全体からあふれ出しぼくたちや周囲の木々に吸い込まれていく所が観察できる。

 若干じゃっかん?いや明らかに、ぼくとフィリオーネとリリオーネとフロレーテに吸収されていくマナが多くなっているような気がする。

 英雄化の影響もあるだろうが、格上の英雄であるジョンさんとジェイムズさんでもここまでではない。

「ぼくはこれから世界樹の樹液を集めて一度家に帰るんですけど、ぼくの家軍の施設で一緒に帰るとジョンさんとジェイムズさんの事聞かれちゃうんで一緒に帰れないんですけど、これからの予定とかありますか?」

「「いや、ないが」」とジョンさんとジェイムズさん。

「幸運さが低い事に悩んでるようでしたら、ケサランパサラン魔法王国の軍隊に入ると。“ケサランパサラン魔法王国バンザイ!ケサランパサランバンザイ!”と言って200マナ(約40万円)ささげると幸運さがわずかに上がる“ケサランパサランの間接的な加護”と言うのがもらえますんで、考えておいてください。まあ今も少し、幸運さが上がったんですけどね」

「じゃあ、いろいろありがとう!」と言って、ジョンさんが王都の方に走っていく。

「私も追いかけなくては! じゃあ、ありがとう!」と言って、ジェイムズさんもジョンさんを追いかけて走っていく。

「ぼくはフェアリーの木のある場所がなんとなくわかるから、王都の場所わかるけど。ジョンさんとジェイムズさんも、何かを感知してるんだね!」

「人口じゃないかな?」とフィリオーネ。

「じゃあまずは世界樹の樹液のからビンから、世界樹の樹液の残りを集めて、ビンを魔法で洗浄して、また世界樹の樹液を集めようか!」


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