第26話 フェアリーの秘術とピクシーやインプの誕生秘話


「アルヴィン!朝日登ったわよ!」とフィリオーネに起こされて目を覚ますと、隣によく知らないフェアリーが寝ていた。

「もしかしてこのベッドって、このフェアリーのなの?」

「そのようね」とフィリオーネ。

「てっきり、ぼくのなのかと……」

「赤ちゃん用のベッドは、フェアリーにはちょうどゆったりできる大きさなのよ?」

「そうだったんだ……今度から気を付けるよ……」

「大丈夫よ!喜んでたから!」


 テントの外に出て“半径1キロメートルに自分の声を届けて相手の声も聞こえるようにする魔法”を発動する。

「みんな~~! 起きて~~! 世界樹の種を植えるよ~~!」

 待っているとテントがたたまれていくが、遠くで警戒している妖精たちの集まりが悪い。

「ドラゴンさん!みんなが警戒して集まれないから、遠くに行っててください。ロロは近くにいてね!」

「そうか、分かった!」と言ってレッドドラゴンのエマさんが飛び立っていく。

 それを見送った後収納魔法の中から、世界樹の種キルヒアイスを出す。

〈おはよう!キルヒアイス、ドラゴンさんにはどいてもらったよ!〉

〈じゃあドラゴンさんがいた場所に、ぼくをおいて!〉

 魔力精密感知とマナ精密感知と幸運さ精密感知の魔法でドラゴンさんがいた場所を観察し、一番魔力の湧き出している場所に世界樹の種キルヒアイスをおく。

〈キルヒアイス!ここでいい?〉

〈いいよ!じゃあフェアリーたちに世界樹の樹液を飲ませて!〉

「みんな~~! 世界樹の樹液をくばるよ~~! フロレーテは世界樹の樹液を出して!」

 世界樹の樹液をくばると言った瞬間、ノロノロと集まってきていたフェアリーたちがキビキビと集まり出した。

「あなたは魔力量が多いから、大きいビンを飲み干してね!あなたは魔力量が少ないから、小さいビンよ!」フロレーテが世界樹の樹液をくばっていく。


 しばらく待つと世界樹の樹液をくばり終えて、フロレーテとフィリオーネとリリオーネが世界樹の樹液を飲み始めた。

「「「うぐ、うぐ、うぐ」」」フロレーテとフィリオーネとリリオーネが世界樹の樹液の大ビンを飲み干す。

〈キルヒアイス!世界樹の樹液をみんなが飲み終わったら、どうやって魔力を吸収するの〉

〈ぼくの体にさわってもらえば、加減して魔力を吸収するから〉

「世界樹の樹液を飲み終わったら、順番に世界樹の種にさわって魔力を世界樹の種に渡していってください。あきビンはぼくの方で回収します!」

 フェアリーたちがぼくの前にあきビンを置き、世界樹の種にさわっていく。

 ぼくの見た限り、魔力を半分以上吸われたフェアリーはいなさそうだ。

〈アルヴィン!あとは君だけ!〉とキルヒアイス。

〈え? ぼく世界樹の樹液飲んでないよ?〉

〈大丈夫!特別枠だから〉

〈それじゃあ〉世界樹の種にさわって魔力を流す。

 無事、半分以上吸われる事もなく終わる。

〈発芽の魔法を使うよ〉とキルヒアイス。

 次の瞬間世界樹の種が輝き魔力が周囲に広がっていき1分ぐらいたつと逆に周囲から魔力が集まってきて、30センチの大きさのドングリからが出てきてあっと言う間に大木になり幹が太くなり続けて巨木になりそれでもグングン大きくなり続ける。

 幹の太くなっていくのが気になってよく観察してみると、幹が太くなっていくのより先に周囲の木々が外側にはなれていき広場を作っていく。

「あの離れていく木はどこまで行くんだろう? 奥の方の木も離れて行ってるのかな?」

「おそらく初めからそこに生えていたように、運命をねじ曲げてるんだと思うよ?」とフィリオーネ。

「え?そんな事までできるの?」

「すくなくとも、英雄ぐらいの力はあるみたいね」とリリオーネ。

「え?英雄って、そんな事できるの?」

「英雄は神になる前の段階だからね! でもここまで大規模なのは出来ないと思うわよ?」とフロレーテ。

「つまりキルヒアイスは神様ぐらいの力がある?」

「「「そうね」」」とフロレーテとフィリオーネとリリオーネ。

〈問題発生! 上空に近くまで近づかないと見えない結界のはってある、神の力を持った施設しせつを発見。下にはしごがあるから乗り込んでどかせないか調べてきて! 上は空気がないから、マ●ドライブしてきてね〉とキルヒアイスが言うと、直径50センチの転移魔法の光の球が目の前地上10センチの位置に浮かんだ。

「みんな~~! 上空にある神の力を持った建物をどかせるために調べに行くから、一緒に行きたい子はここに集まって! 上空には空気がないそうだから、マ●ドライブは先にしていくようにね!」半径1キロメートルに自分の声を届けて相手の声も聞こえるようにする魔法で、妖精たちに呼びかける。

 世界樹の種に魔力を込めるために集まっていたフェアリーたちと少し離れて見ていたインプとピクシーたちが、ものすごい密度で集まってきた。

「じゃあ、先に行くね!」と言って転移魔法の光の球に飛び込む。


 転移魔法の光の球から出ると先に来ていたフェアリーたちが幅5メートルの枝の上で羽をしまい空を飛ばず自分の足で立ち防寒着を着て、ふるえながらたむろしていた。

「なんで空飛ばないの? もしかしてここでは飛べないの?」

「(中略30匹ぐらい)「そうみたい」(中略30匹ぐらい)」とフェアリーたち。

 それよりも足元に青空が丸く広がっているのに、上を見上げると星空が広がっている。

 木の枝はまだ上の方に広がっていて幹のてっぺんまで10メートル、その幹のてっぺんすぐ先2メートルに、半径10メートルの円形の足場がある、その真ん中に穴がありはしごがつながっていて幹のてっぺんまで迫っている。

 その木の枝からはしごまでの間を先行したフェアリーたちが、枝やはしごにひもを引っ掛けてのぼっていく。

「じゃあぼくも!」服を出す魔法でひもを出し上の枝やはしごに引っ掛け、ひも自体を長くしたり短くしたりしてのぼっていく。

 はしごが大人用だったので、魔法のひもで上まで登る。


 上に登って見渡すと半径10メートルの円形の足場の中心に半径1メートルの穴があり、穴の向こう側に牢屋とレバーのようなものがある以外は吹き抜けの宇宙が見える何もない所のようだった。

 みんなが追い付いてくるのを待つ間に穴をぐるっと回って、牢屋の前のレバーの前に陣取る。

 牢屋の中には2人の身なりのいい男が鎖と金属のわっかで両手足と首を固定されて、両手足を広げて立った状態でいないといけないようにされていた。

 魔力精密感知とマナ精密感知と幸運さ精密感知の魔法で見てみると男たちは魔力を半分以上吸われて魔力の層をまとえない状態にされているようで、ぼくからは魔力が感じられなかった。

 少ない魔力の層の部分の魔力から吸収されやすく今の僕のまとえる魔力の層(8層)が、男たちの半分の魔力に満たない?と言う事だろうか。

「牢屋には入ったばかりですか?」牢屋の中の2人に話しかける。

「いいや、体感時間で数千年入っている」と背の高い方の男(身長183センチ)が答えた。

「勘違いでは? ひげもそられていますし、かみがたもセットしてあるじゃないですか!」

「これは私たちから吸い取った魔力で、服も含めて自動的にクリーニングされるんだ! おそらく交渉するときに不利にならないようにと言う、フェアリーの神の配慮だと思う」と背の小さい方の男(身長160センチ)が答えた。

「フェアリーの神? フェアリーに悪さしたんですか?」

「ああ! 花畑を荒らすフェアリーたちを何とかしようと、フェアリーを捕まえて私の思想に染まるように強制転生させてピクシーを作ったんだ」と身長の高い方の男。

「私も同じようにインプを作った」と身長の低い方の男。

「ああ~~。それは勘違いではなく、数千年入っているかもしれませんね。それで何でこんな所に、牢屋があるのか知ってますか?」

「フェアリーたちが世界樹を増やす仕事を問題なくできるようなら、簡単に出られる場所と言う事らしいが。数千年と言うのが、フェアリーの神の思惑道理の罰なのかどうか……」と身長の高い方の男。

「つまりこの牢屋をどかす方法があるんですね」

「ああ!私たちをここから連れ出してくれれば、私たちから吸収した魔力と一緒にフェアリーの神が回収するだろう」と身長の低い方の男。

「牢屋から解放するには、このレバーを反対側に倒せばいいんですね?」

「「ああ、そのはずだ」」と2人の男。

 身体をピカッと光らせてレバーの先端にひもを引っ掛けてレバーを反対側に倒そうとした所で「魔力を登録したよ! 罪人を牢屋から出してもいいと思ったら、レバーを反対側に倒してね!」と声がした。

 気にせずジャンプしてジャンプの頂点でレバーを一番上に持ってきて着地とともに、レバーを反対側に倒す。

 すると牢屋と鎖と金属のわっかが消える。

「たすかった! 所であの無駄にかっこいいジャンプは必要だったのかな?」と身長の高い方の男。

「ぼく普通の赤ちゃんなんで、仕方ないんです。じゃあ用事も済んだし。みんな~~!木の下に戻るよ~~!」辺りを見回しながら妖精たちに呼びかけると、インプとピクシーがしょんぼりしていた。

「ほら!元気出して!帰るよ!」

「(中略約200匹)「でも……」(中略約200匹)」とインプとピクシー。

「フェアリーの神も、駆除まではしようとして無いでしょ! 許されてるんだよ!」

「(中略約200匹)「そうかなぁ?」(中略約200匹)」とインプとピクシー。

「えっと!きみ!」と身長の高い方の男。

「ぼくですか?」

「そうそう!」と身長の高い方の男。

「ぼくはアルヴィンと言います」

「私はジョンだ!私とこっちのジェイムズがピクシーとインプを作った事は、内緒にしてもらえないだろうか?」と身長の高い方の男、ジョン。

「気にしなくてもいいと思いますけど、分かりました。みんな~~!ジョンさんとジェイムズさんがピクシーとインプを作った事は、内緒にしてね~~!」

「(中略たくさん)「は~~い」(中略たくさん)」フェアリーもインプもピクシーも返事をする。

「じゃあ下に戻りましょうか?」

「ああ、それにしてもすごいな。フェアリーもピクシーもインプも、こんなにたくさん言う事を聞いて」とジョンさん。

「ぼくが生まれてくるのを見守っていてくれたフェアリーがいまして、知らないうちにたくさん友達になったんです。最近は妖精使いアルヴィンって呼ばれています。それより魔力の層をまとえない状態で、下に降りられますか?」

「自信はないが大丈夫だと思う」とジョンさん。

 はしごから下を見ると木のてっぺんの横に直径2メートルの転移魔法の光の球が浮いていた。

「これなら大丈夫そうですね! さきに行きます」と言って転移魔法の光の球に入る。


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