第28話 英雄狩り、脅威《きょうい》の英雄基本能力


 7時間後。

「世界樹の樹液も集まったし帰るよ~~!みんな~~!」半径1キロメートルに自分の声を届けて相手の声も聞こえるようにする魔法で、妖精たちに呼びかける。

〈帰るんなら、アルヴィンの家の庭のフェアリーの木の前まで送ってあげるよ!〉とキルヒアイス。

〈迷宮の中なのに転移魔法使えるの? それにぼくの家わかるの?〉

〈転移魔法を使えなくしている本人だからね! それにぼく、かなり遠くまで分かるようになったんだよ?〉とキルヒアイス。


 世界樹キルヒアイスの転移魔法の光の球からでると、メイドさんたち15人とお母様が迎えに出てきていた。

 魔力精密感知とマナ精密感知と幸運さ精密感知の魔法を使ったままにしていたのだが、こちらに漂っているマナは虹色から少し色落ちして白っぽくなっていたがそれでも濃いマナが漂っていた。

「ずっと待ってたんですか?」

「魔力の層をまとう訓練をしていたのよ! それで、報告は?」とソフィアお母様。

「6か所のダンジョンに囲まれた魔の森の中心に、世界樹をやしてきました! 世界樹の樹液も、集めなおしてきました!」

「そう、報告しておくわ! すぐに王宮に呼ばれると思うから、待機しておいて!」とソフィアお母様。


 10分後“ケサランパサラン魔法王国軍近衛騎士団所属ソフィア中佐とその息子妖精使いアルヴィン軍曹とお供の妖精代表10匹の王宮への出頭を命じる”出頭命令が届いた。


 ソフィアお母様に抱っこされて歩くこと5分、交差点の赤信号で捕まった所で後ろから男の声が話しかけてきた。

「お前たち! 英雄だな?」その声を聴いた瞬間、ソフィアお母様は僕を地面にトンとおいて「英雄狩りよ!英雄以外には攻撃しないはずだから、王宮まで逃げて!」と言ってソフィアお母様は振り向き、後ろにいた英雄の存在感を持った筋肉質な細マッチョ男(身長170センチほど)を、半径3メートルの炎の円柱で包み込んだ。

「ほら!早く逃げて!」と言って周りに飛んでいる妖精たちや後ろにいるぼくに声をかけるソフィアお母様は、炎をにらんでいる。

●速カン●ル」電気の負荷を肉体にかけて潜在能力を超えるスピードを引き出すハ●ターハ●ターのキ●アの技を使い、王宮の方向の赤信号ではなく回り道になる左の青信号が点滅している方を走り抜けようとするぼくとそれについてくるフィリオーネ。

 他の妖精たち(お供として付いてくるように言われた妖精の他にも、50匹以上の妖精が付いて来ている)は、それぞれ炎の円柱に巻き込まれた妖精もふくめて別々の方向に逃げて行く。

 横断歩道の半分に差し掛かったところで、走ったり空を飛んだりしているぼくたちをそのまま空間が逃げてきた英雄狩りの方に引き戻していく。

「英雄狩りが…ぼくたちの体を引き寄せてる!」走りながらしゃべってる途中で周りが真空になったので、あわてて空気が無くてもしゃべれるマ●ドライブに切り替える。

「落ち着いて!体を引き寄せているんじゃなくて、あたしたちの体が中にある空間を引き寄せてるのよ!あたしたちの体の中にある最大の魔力の層の抵抗をねじ伏せて直接あたしたちの体を引き寄せるほど、絶望的な力の差があるわけじゃない! 周りを見て!」と言ってぼくたちの前方の足元を飛んだあとぼくたちが渡らなかった赤信号の上の方が見えるように視線を誘導してぼくの前近くを飛ぶ、フィリオーネ。

 フィリオーネの視線誘導のままに見ると、ぼくの前世の世界でもおなじみの横断歩道のペイントがぼくのいた場所の半径3メートルから線をそのままウニョ~ンと英雄狩りの方にのばしたようになっている。

 ぼくたちが渡らなかった赤信号の方は信号機の上の方がこれまたウニョ~ンと道をふさいでのびて、その先にはリリオーネとフロレーテが逃げようと必死に飛んでいる。

 その他の妖精たちと通行人は無視されているのか偶然ぼくたちの近くにいて捕まっていた数匹の妖精たちや通行人も、ぼくたちと違う方向に飛んだり走ったりする事で逃げて行く。

〈逃げられないから一斉攻撃しよう!〉声に出さずに魔法でしゃべれる能力でフィリオーネとリリオーネとフロレーテに提案すると〈〈〈そうしよう!〉〉〉とすぐ3匹から返事が来る。

 ぼくはその場で走っていた足を止めながら振り向き手から電撃を飛ばすと、ルークお父様によけられた時とは違う電気の速度で飛ぶよけようがないブットイ電撃がぼくとフェアリーたち合わせて4本、周りの炎を消したばかりの英雄狩りに飛んで行く。

 そのよけようのない速度で飛んで行くよけようのないタイミングの4本のブットイ電撃を、英雄狩りは時間のすきまに割り込んで一歩足を運ぶごとに一本のブットイ電撃をかがみながら交わす事を繰り返し、割り込まれた時間から見ればタイミングがバラバラの電撃を四歩でよけ、さらに時間のすき間に割り込んで時間の止まっている影響で身体も眼の角度も動かせないぼくたちに「お前たち、英雄の力を使うな! 英雄の力は危険なのだ! 今私がやった空間の操作と時間への割り込みが私の英雄としての能力だと思っているなら違うぞ? 今やった事はすべての英雄の基本能力なのだ! どうだ? 英雄一人ひとりが英雄の力を使う事に対する、世界がバランスをくずす可能性が解ったか?世界崩壊の危機が解ったか?」と真空の中でしゃべれるマ●ドライブで、ぼくとフィリオーネとリリオーネとフロレーテに一方的に声を聴かせて英雄狩りはだまり。

 英雄狩りの上の青信号の点滅が戻る事で、時間が戻った事に気づくぼくたち。

「……勝てない!」僕が言葉をしぼり出すと。

「「「うん……」」」とフィリオーネとリリオーネとフロレーテがしょんぼりしながら同意した。

「横断歩道を渡った所で転移魔法使おうとしたけど発動自体しなかったから空間操作と言うのは、空間を支配する能力の可能性があるわよ?」とフロレーテが補足する。

「うん……。『英雄の力を使うな!』って英雄狩りさんが言ってるから、力を封じられるぐらいで済む事を祈ろう……」フィリオーネとリリオーネとフロレーテの顔とソフィアお母様の背中を見渡して、希望を口にするぼく。


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