第2話 いたずらフェアリー・フィリオーネ
尿意を感じて目が覚めると、小さい明りのついた部屋の中のさく付きのベビーベッドの中に寝かされていた。
まずは魔力の層を3層まとって、身体強化する。
そしてベビーベッドのさくを、登っていく。
ベビーベッドのさくと言うのは、赤ちゃんが逃げ出さないようにあるわけだから身体強化が必要になってくる。
ベビーベッドのさくを登りきった後も障害はある。
生まれたばかりの赤ちゃんの平均身長が50センチ、床からさくの上までの高さが120センチ。
身体の2.4倍の高さから慎重に、ずり降りる。
障害はまだある、ドアノブだ。
身体強化した身体でドアノブめがけて飛び着く、「は!」ビタン!
ドアにはりつくようにぶつかったが、なんとかノブに手が届く。
ノブを回して、ノブにぶらさがったまま横の壁をけってドアを開く。
ノブにぶらさがった状態から静かに飛び降り、ドアを固定して廊下に出る。
トイレの前まで来ると、またさっきの要領でドアを開けたままにして中に入る。
オムツを脱いでおしっこをする。
オムツをはいて部屋に戻ってくると、部屋が明るくなっていてお母様が起きていた。
「どうしたんですか、お母様」
お母様が部屋の中心辺りを指差すと、机の上に置いてあったティッシュ箱からティッシュが全部出て周りに散らばっていた。
「紙●いが戦った後かな?」
「●使いって?」お母様がいぶかしげに聞いてくる。
「紙を操る能力を持った人たちの事です、戦った後はこんな感じになります」
「うぅん? どうしたこんな時間に?」起き上がってきたお父様に対して、お母様が無言で部屋の中を指差す。
「どうしたんだこれ?」
「赤ちゃんがイタズラしたみたい」
「いえ! ちがいますよ?」
「でも、こんなイタズラする人いないし……」お母様が怒らないから正直に白状しなさい!って感じの視線を向けてくる。
「なら侵入者です! 何か無くなっている物がないか、調べてください!」
おじい様・おばあ様・使用人さんたちを、全員起こして調べる事30分。
「何か無くなっている物はありましたか?」とお母様がみんなの報告を聞く。
「イチゴが1パック無くなっていました若奥様」15才ぐらいに見える身長が低くて胸の大きいメイドさんが、猫耳付きのパジャマ姿で報告した。
お母様が無言でベビーベッドのそばに行き掛け布団を持ち上げるとそこには、みずみずしいイチゴが1パック眠っていた。
「えん罪です! 第一ぼくにはまだ歯が生えておりません!」
「もぉ~~言ってくれればイチゴつぶしてあげたのに~~」
「あはははは!」誰もいない頭上から笑い声が聞こえる。
全員の視線が集まると何もない空間から、身長31.58センチほど(人間に換算すると157.9センチぐらい)体重424グラム(人間換算53キログラム)のアゲハ蝶見たいながらの羽を持ったすっぴんでこの世の美を極めたような美貌とスタイルの17才ぐらいに見える妖精が浮かび上がってきた。
「きみって、ぼくがお母様のお腹の中にいる時に話しかけてきた子?」
「そうそう! あたしフィリオーネ!」輝く笑顔を向けてくる。
「フィリオーネきみ、ティッシュの箱からティッシュをばらまいたりイチゴのパックぼくの掛け布団の中に隠したりした?」
「したわよ?」とフィリオーネ、ニコニコしながら。
「なんで?」
「赤ちゃんに名前つけたくって」
「ぼくの名前つけたかったらイタズラするの?」
「家族全員と知り合いにならないと、名前つけられないでしょ?」とフィリオーネ、当然じゃないって感じのドヤ顔で。
「知り合いぐらいじゃあ名前つけられないんじゃないかなぁ」
「何したら名前つけていい?」とフィリオーネ、え?って感じのまったく思いつかなかったって感じの顔で。
「前世の記憶でうろ覚えなんだけど、心の肉球にキュンと来た人間をパートナーにするのですってヒー●ングアニマルの女王様に言われてて」
「前世は人間だって言ってなかった?」とフィリオーネ、不思議そうに。
「いや、人間だよ?」
「あたしフェアリーなんだけど……」とフィリオーネ、肩を落として。
「ささいな問題だよ」
「じゃあなる! パートナー!」とフィリオーネ、輝く笑顔が戻る。
「かっこいい名前つけてね! フィリオーネ!」
「うん!」
「話がまとまった所悪いんだけど、そんないたずら妖精パートナーにされちゃあ手に負えないんですけど」とお母様、いやそうにフィリオーネを見る。
「ええ? ちゃんとお世話するから~」赤ちゃんの外見を利用して、子供っぽくお願いしてみる。
「あなた、お世話される方でしょ!」お母様に、即座に怒鳴られる。
「普通の赤ちゃんよりはお世話の必要少ないでしょ?」心を折られる事なく、もう一度子供っぽくお願いしてみる。
「あたし、お世話必要ないよ?」とフィリオーネ、自慢気に。
「え? でも、ごはん食べたりウンコしたりオシッコしたりするでしょ?」
「あたし、ごはん食べないしウンコもオシッコもしないもん」とフィリオーネ、当然の事のような顔をする。
「またまた~。そんなアイドルみたいなこと言って~~」
「だいたいのフェアリーは、ごはん食べないしウンコもオシッコもしないよ? むかし花の蜜を吸う事を覚えたフェアリーによって森や草原の花が絶滅した事があってから、物を食べるフェアリーは少なくなったの」とフィリオーネ、痛ましい過去を思い出すように。
「え! ごはん食べずにどうやって生きてるの?」
「もしかして、マナの事知らないの?」とフィリオーネ、不思議そうにぼくの瞳をのぞき込んでくる。
「マナって、魔力の事じゃないの?」
「マナは魔力ある生き物の中に降り積もるエネルギーのもと、ごはんにもなるしたくさんためれば不老長寿にもなるし強力な能力を身につける可能性にもなるのよ」とフィリオーネ、ぼくの周りを飛びながら自分のお腹にふんわりと両手を持ってきたり自分の顔を指さしたり両手をぼくの方に突き出して力んでみたりする。
「マナってどうやってためるの?」
「魔力があれば魔力が目覚めてなくても勝手にたまっていくの、魔力の全体量が多かったりコアが多かったり魔力の層を多く出来たりした方がたくさんたまるけどね!」とフィリオーネ、ぼくの肩をタシタシとたたきながら。
「じゃあ僕もごはん食べなくていいの? ウンコもオシッコもしなくって好いって言うのは、食べてないから出ないって事なんだ?」
「マナをためたかったら、ごはん食べた方がいいのよ? めんえき的にも」とお母様がぼくをヒョイと持ち上げだっこする。
「マナをごはんのかわりにする事をマ●ドライブと言って、マ●ドライブするとウンコもオシッコもしなくていいし呼吸もしなくてよくなるうえに空気がなくてもしゃべれるようになるんだ」と言いながらお父様がぼくの右手のひらを、にぎにぎする。
「魔法の無い世界のアイドルがごはん食べないしウンコもオシッコもしないって言うのは、マ●ドライブしてたんだと思うよ?」とフィリオーネがぼくの目の前を羽ばたくのを止めた状態でも、フヨフヨ飛びながら言った。
「え? いや、まさか……でも、そうなのかな? それはそうとフィリオーネにつけてもらう名前だけど、響きが良くてほかの余分な意味がない名前が好いな」
「
「あぶな! 確認しといてよかった~~」
「いやまだその妖精、飼っていいとも名前つけていいとも言ってないんだけど」お母様が不機嫌そうに言う。
「どうすれば飼って……パートナーにしていい?」
「赤ちゃんを守りながら私達と戦って、私達を無力化出来たらいいわよ」お母様がニヤリとしながら言った。
「私達って誰?」お母様が手をあげ、お父様が手をあげ、おじい様達が手をあげ、おばあ様達が手をあげ、パジャマ姿のメイドさんも3人手をあげた。
「なんでメイドさんが手あげてるの?」
「私達も名前つけたいんです」身長が低くて胸の大きいメイドさんが、猫耳付きのパジャマ姿で言った。
「それにしたって9対2で戦うとか、無理じゃない?僕は足手まといだし」
「そうとも限らないだろう、そのフェアリーはここにいる全員の目をくらませていた」お父様が、家族たちと20人ほどの使用人を見渡しながら言う。
「それがなに?」
「つまりここにいる誰よりもたくさん、魔力の層をまとっていると言う事なんだ」ハリーおじい様が断定するように言った。
「もしかして、フィリオーネってすごく強いの?」
「そんな事ないよ~~ドラゴンは1人じゃ厳しいし」フィリオーネが何でもない事のように言う。
「え? そんなに?」
「分かっててパートナーにするって、言ってたんじゃないの?」お母様が抱っこの位置を変えながら言った。
「生まれたばかりなんだから、そんなの分からないよ」
「じゃあ朝食の後、午前8時30分から中庭でよろしいですか?」お母様が確認するように言った。
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