第17話 想いは一つに
手を摩りながら、はぁーっと息を吹きかける。慌てて部屋を出た薫は手袋を忘れ、寒さを耐える様に何度も手を摩る。
あれからだいぶ時間が過ぎた。夏が始まる前に出会い、少しずつ距離を縮め、今ではちゃんとした恋人になれてる気がする薫は駅前で恋人の健悟を待っていた。
もうすっかり冬になり、今日はクリスマスイブだ。
付き合い始めて知ったのだが、今日は健悟の誕生日でもある。あの大きな体と無表情の顔をした健悟が、クリスマスイブが誕生日とは似つかない組み合わせに思わず笑みが出る。
付き合うようになってからは、健悟の笑顔しか思い出せなくなってしまった事を思うと、健悟が本当に薫の事を想ってくれている事を実感する。
そして、その姿が可愛らしい、愛おしいと思う薫も健悟を心から想っている事に気付かされる。
「薫さん!」
恋人の姿を見つけ、健悟が笑顔で駆け寄ってくる。
(あぁ・・俺、幸せだ。この笑顔を見る度に好きが溢れてくる。どうしてこんなにも会うたびに好きが増えていくのだろうか)
薫はそう思いながら、笑顔で健悟に手を振った。
「薫さん、こんなに寒いのに手袋持ってこなかったんですか?」
何もつけていない手を見て、健悟はすぐに薫の手をとり自分の手袋をはめる。
「少し大きいけど無いよりはいいです。使ってください」
手袋をつけた自分の手を見ると、いつもの2倍はあるだろう姿に笑いが込み上げる。
健悟は薫の笑顔に微笑み返しながら、自分の手をコートのポケットに入れ、薫へクイっと肘を突き出さす。
薫は健悟の袖口を掴み、2人は歩き出す。今日は薫がデートコースを決めていたので、予約していたレストランへと向かう。楽しく食事を済ませ、近くにイルミネーションのスポットがあるからとまた歩き出すと、広めの公園へ着いた。
「わぁ!綺麗だ・・・」
目を輝かせ薫は木々に飾られたイルミネーションを見上げる。人混みの中を時々立ち止まりながら、楽しそうに歩く。
薫はふっと足を止め、昨日考えていた事を実行するチャンスだと意を固め、手袋を片方だけ外し、健悟のポケットに手を入れる。そして、健悟の手を握った。
「薫さん・・・」
いきなり手を握られ、健悟は驚いた表情で薫を見つめる。薫はさらにギュッと手を握り、顔を赤らめながら健悟を見つめる。
「き、今日はみんな上を見て歩くし、これならバレないかなと思って・・・」
健悟は少し照れた様にハニカミ、薫を見つめる。
「やばいです・・・嬉しくてにやけちゃう・・・」
耳を赤くしてそう呟く健悟が愛おしくて、薫は目を細めた。そして、健悟に屈むように伝え、耳元で囁く。
「今日は泊まっていってください」
その言葉に2人は黙ったまま顔を赤らめていた。
薫の自宅に着くなり、健悟は薫にキスをする。前みたいな触れるだけのキスではなく、最近は欲情に満ちた大人のキスをするようになっていた。
「ふっ・・・け、健悟くん・・あっ・・ダメ・・」
「・・・いや、ですか?」
唇を離し、両手で薫の頬を包み、まっすぐに薫の目を見つめる。薫も目を逸らさずに答える。
「こ、ここは寒いから、部屋に行こう・・・」
そう伝えると、健悟は薫を担ぎ上げ、乱暴に靴を脱がすと横抱きにし、自分も靴を脱ぎ部屋へと上がる。そのまま寝室に向かい、薫をベットに座らせ、コートを脱がせる。そして、薫にキスをしながら自分のコートを脱ぎ、そのまま押し倒した。
「薫さん、本当にいいんですか?」
重なる様に寝そべりながら、薫を見つめる。薫は小さく頷くと、健悟の首に手を回す。
「待たせてごめんね。恥ずかしかったのもあるけど、今まで女性としか付き合った事ない健悟くんが、俺でその気になってくれるのか不安だったんだ」
「そんな事、心配してんですか?」
少し怒った様な声で健悟は薫を睨む。
「俺にとっては大事な事だよ。やっぱり男の体はダメだって言われたらショックだもの」
薫は目を逸らし、ポツリと呟く。健悟はこっち向いてと薫の顎を掴み、健悟へと顔を向けさせる。
「俺は本当に薫さんが好きです。心の底から薫さんが愛しくてたまらないです」
「・・・うん。健悟くん、俺を抱いてください。健悟くんと一つになりたい・・・」
健悟は薫に軽くキスをして、優しく微笑む。
「今まで我慢してた分、沢山抱きます。それで、どれだけ俺が薫さんを想っているのか、教えてあげます」
健悟の言葉に真っ赤になる薫を他所に、健悟は薫に愛撫し始める。優しく、時々激しく、キスも手つきも全てが薫を好きだと訴える。
薫は健悟の体ごと気持ちを受け止めるながら、涙ながらに答える。
「好きだよ、健悟くん。俺を見つけてくれてありがとう」
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