第10話 あの3人は俺の女だ!

 起床後、一悶着あったが、俺たち4人はみんなで朝ご飯を食べる。


「さて、今日の予定は………」


(あれ?何もやることなくね?)


 やることがないことを発見する。


「レオくんは、ゆっくり休むといいわ」


「あれ?ルビアは今から何かするのか?」


「えぇ、体を動かそうと思って。以前の動きを取り戻さないと、いざって時、満足に戦えないもの」


「そ、そうか。ほどほどにな」


 俺の言葉を聞いて、ルビアは外に出る。


 ルビアを見送っていると…


「ご主人様。お紅茶が入りました」


「おぉ、ありがとうリリィ」


「いえ、この家に居候させていただいてる身ですので」


 俺に紅茶をくれる。


「お姉ちゃん!はやく始めよー!」


 すると、その後ろからミュアが現れる。


「リリィとミュアは今から何をするんだ?」


「はい!私たちはこの家のお掃除をしようと思っております!」


「この屋敷は広くて隅々まで掃除できていないようなので、ウチとお姉ちゃんが協力して掃除をします!」


(そういえば、所々に埃が溜まっていたな)


「そうか、なら俺も手伝いを……」


「ダメです!」


「そうです!これはウチらの仕事です!ご主人はゆっくり休んでください!」


「あ、はい」


(えぇ、俺なんもすることないんだけど……。仕方ない、本でも読むか)


 俺は本がたくさん置かれている書斎へと向かう。


(この世界のことは神様から簡単に聞いているが、まだまだ知らないことが多いからな)


 俺は書斎へ辿り着く。


「しかし、たくさん本が置かれているが……見事に読んだ形跡がないな。なんなら、部屋に入った形跡もほとんどない」


(あの男、買うだけ買って満足したな?まぁ、今の俺にとってはありがたいが)


 俺は書斎で1日を過ごすことを決め、本を読んでいると…


 “コンコン”とノック音が聞こえ…


「ご主人様。お客様が来られました」


「ん?誰だ?」


「どうやらお得意様のようです」


(うわぁ……奴隷なんかいないんだけどなぁ)


 俺はそんなことを思いながら、お得意様の待つリビングへと向かう。


 リビングには全身金色の服を着た男がいた。


 側には護衛らしき男も控えている。


 隅の方にはルビアとミュアが待機している。


「お待たせ致しました」


「おい、随分と待たせてくれた……。誰だ?」


「レオナルドです。ダイエットしたことで、体型がだいぶ変わってしまいましたが」


「変わりすぎだが……まぁいい。それより、奴隷が欲しい。今回も性奴隷だな。前回買った奴は数日で壊れてしまったから、今回は長持ちしそうな奴をくれ」


 俺はコイツの言葉に絶句する。


(え、コイツなに言ってるんだ?殴っていいのか?)


 そう思うが、殴るのはアウトなので、我慢しつつ対応する。


「すみません。今のところ、アナタに譲れる方がいらっしゃらなくて」


「あ?いねぇだと?なら、そこにいる3人でいい。ソイツらを買わせろ」


 男は隅で待機しているルビアたちを見ながら言う。


 そして品定めを始め出す。


「あの、赤髪の女は俺に抵抗してきそうだな。だからこそ、調教するのが面白そうだ。それに、猫耳族か。小せぇ女が壊れる様を見るのは何回やっても飽きないからな」


(は?コイツ、ルビアたちを寄越せって言ってんのか?こんなこと言ってる奴のところに?)


「今、商品になる女がいねぇなら、あの3人を寄越せ。そうだな。これくらいでどうだ」


 男は俺があの3人を売ることが決定事項かのように話を進め出す。


 テーブルの上に置かれた金は、豪邸が1つ買えるくらいの金額。


「どうだ?これならお前も満足するだろ?」


 俺の答えは決まっているが、一応、3人を見てみる。


 3人とも目に涙を溜め、不安そうな顔で俺を見ている。


 俺はその姿を見て、自分の答えは間違いでないことを確信する。


「悪いな。あの3人をお前に譲ることはできない」


「あ?なに反抗してんだ?金が足りねぇなら、これの倍出しても……」


「うるせぇ!!どれだけ金を積まれようが、お前にあの3人は譲らねぇって言ってんだ!あの3人は俺の女だ!」


 俺は男に向かって堂々と言う。


「レオくん……」


「ご主人様……」


「ご主人……」


 3人が俺のことを呼んだ気がする。


(呼ばれた気がするが、今はこの男を諦めさせるのが先だ)


「おい、俺にそんなこと言っていいと思ってんのか?」


「譲る気がない事実を伝えただけだ。他の女が準備できたら声をかけてやるよ。だが、まだ俺の女に手を出そうとするなら……俺も容赦しねぇぞ?」


 しばらく男と睨み合う。


「ちっ!帰るぞ」


 男は控えている護衛に声をかけて、屋敷から出て行く。


(ふぅ……良かったぁ、退いてくれて。退いてくれなかったら、絶対俺が負けてた。正直、あの男に何を言ったか覚えてないが)


 俺は心の底から安堵していると……


「ご主人様!」


「ご主人!」


 リリィとミュアが俺に抱きついてくる。


「おいおい、どうした?」


 2人は涙でぐしゃぐしゃになった顔で俺を見る。


「ご主人様に私…ぐずっ…売られてしまうかと……」


「うぅ……ウチも……です」


 2人の体は未だに震えているのがわかる。


 俺はそんな2人を安心させるため…


「ふぁっ」


「うにゃっ」


 2人の頭を撫でる。


「俺がリリィとミュアを売るわけないだろ?2人は俺の大事な家族だからな」


「ホ、ホントですか?」


 俺の言葉が信じられないのか、リリィが聞いてくる。


「あぁ、本当だ。って、あくまで一時的だぞ!?2人がこの家から出るって言った時は背中を押すからな!」


 俺は一時的に居候を許可していることを、慌てて補足する。


「だから、ここにいる限り、2人は俺の家族だ。誰にも渡したりしないよ」


 俺の言葉を聞いて、2人はさらに強く俺を抱きしめる。


(俺に売られるかもと不安だったんだろう)


 俺は2人の頭を撫で続ける。


 すると、後ろから…


「レオくん。私も売られると思ってしまったわ。レオくんならそんなことしないと思ってたのに」


 ルビアもいつもの元気がない。


「大丈夫だよ。絶対、ルビアも売ったりしないから」


 俺の言葉に安心したのか……


「ふふっ、そうね。私たちのことを『俺の女』って言ってたからね」


「えっ!俺そんなこと言ってたの!?」


「えぇ」


「ま、マジか……」


「でも…」


 そこでルビアは間を取り…


「そう言われて、とても嬉しかったわ」


 笑顔でそう言われる。


「お、おう……そ、そうか」


 俺はルビアの言葉に照れてしまう。


 すると、抱きついている2人が顔を上げて上目遣いで…


「あ、あの……ご、ご主人様。これからもご主人様にお仕えしてもよろしいでしょうか?」


「ウ、ウチも誠心誠意頑張ります」


「あぁ、もちろんだ。あ、あくまで一時的だけどな!」


「いつまでそれを言ってるのよ」


 後ろからルビアにボソっと言われる。


 すると…


「ご主人様!」


「ご主人!」


「ん?なんだ?」


 俺が聞き返すと、2人は眩しい笑顔で…


「「大好きです!!」」


 元気にそう言った。


 その笑顔に見惚れる俺であった。

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